川越胃腸病院|企業名|人本経営企業のベンチマーク|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション
川越胃腸病院
川越胃腸病院編
伊那食品工業さんに勝るとも劣らない、究極の理念経営をしている組織をまた知ることができました。埼玉県川越市にある川越胃腸病院さんです。うわさは以前から聞いていましたが、先ごろ院長の望月智行先生が書き下ろされた『いのち輝くホスピタリティ』を読了し、これは完璧に近いという感想を持つにいたりました。
書籍で紹介されている客観的なデータは驚異的な値となっており、いかに素晴らしい経営人事を実践されているかが推測できます。
職員満足度
全国17の施設とともに、職員満足度調査に参加したところ、17施設の平均値が5点満点中3.0弱~4.0だったのに対し、川越胃腸病院では「福利厚生」が3.5強だったほかは残りの11項目ではすべて4.5前後という満足度だったといいます。通常、社員満足度調査では、おおむね満足していると判断できるポイントは100点満点で50点に到達しているかどうかといわれています。実際、私たちが実施している調査でも50点前後の結果になるケースが多いことを確認していますが、この川越胃腸病院は、なんと90点という信じられない高得点を記録しています。職員のほとんどが大満足をしていないととてもはじき出せない数値なのです。これはすごいことです。
顧客満足度
川越胃腸病院では、毎年、一般企業で言うところのCS調査にあたる患者様満足調査を実施されており、その結果がホームページでも公開されています。その最新の調査では「大変満足」「やや満足」が96.8%を記録したというのです。これまた驚くべき結果といわざるを得ません。ほとんどすべての患者に満足感を与えているということになります。それが決してまやかしでないことが、過去40年に及ぶ歴史の中で一件の医療訴訟もないという結果に出ています。
社員満足が高く、顧客満足も高まれば、必然的に結果もついてくることになりますが、やはり、新規の患者様の来院数も年々増加し、1991年と2006年では新規患者数は二倍強になっているといいます。理念経営に成功している経営者の書籍を読むととても学びを得られますが、この望月先生の『いのち輝くホスピタリティ』も本全般に大変多くの気づきや示唆が散りばめられています。書籍では、想いはあったもののなかなか浸透せず、最初から今のような状態になれたわけではなく、相当に苦労を重ねてこられたと語られています。あきらめずに理念経営を実践し成功した体験であるだけに、これから志していこうとする企業や経営者の方には、より大切にしていかなければならないポイントや留意点、考え方が鮮明に際立って単刀直入に伝わってくるはずです。それでは、川越胃腸病院の経営人事の研究を進めていきましょう。
書籍で紹介されている客観的なデータは驚異的な値となっており、いかに素晴らしい経営人事を実践されているかが推測できます。
職員満足度
全国17の施設とともに、職員満足度調査に参加したところ、17施設の平均値が5点満点中3.0弱~4.0だったのに対し、川越胃腸病院では「福利厚生」が3.5強だったほかは残りの11項目ではすべて4.5前後という満足度だったといいます。通常、社員満足度調査では、おおむね満足していると判断できるポイントは100点満点で50点に到達しているかどうかといわれています。実際、私たちが実施している調査でも50点前後の結果になるケースが多いことを確認していますが、この川越胃腸病院は、なんと90点という信じられない高得点を記録しています。職員のほとんどが大満足をしていないととてもはじき出せない数値なのです。これはすごいことです。
顧客満足度
川越胃腸病院では、毎年、一般企業で言うところのCS調査にあたる患者様満足調査を実施されており、その結果がホームページでも公開されています。その最新の調査では「大変満足」「やや満足」が96.8%を記録したというのです。これまた驚くべき結果といわざるを得ません。ほとんどすべての患者に満足感を与えているということになります。それが決してまやかしでないことが、過去40年に及ぶ歴史の中で一件の医療訴訟もないという結果に出ています。
社員満足が高く、顧客満足も高まれば、必然的に結果もついてくることになりますが、やはり、新規の患者様の来院数も年々増加し、1991年と2006年では新規患者数は二倍強になっているといいます。理念経営に成功している経営者の書籍を読むととても学びを得られますが、この望月先生の『いのち輝くホスピタリティ』も本全般に大変多くの気づきや示唆が散りばめられています。書籍では、想いはあったもののなかなか浸透せず、最初から今のような状態になれたわけではなく、相当に苦労を重ねてこられたと語られています。あきらめずに理念経営を実践し成功した体験であるだけに、これから志していこうとする企業や経営者の方には、より大切にしていかなければならないポイントや留意点、考え方が鮮明に際立って単刀直入に伝わってくるはずです。それでは、川越胃腸病院の経営人事の研究を進めていきましょう。
20年以上も前に「選ばれる」経営の時代の到来を予見し、それに対応するための理念経営を実践
経営哲学・信念
川越胃腸病院は望月先生の義兄が設立しています。その義兄の影響を受けて外科医を目指し、義兄が倒れた後を継いで院長になったということです。望月先生が院長になって25年の歴史です。院長になった時に次のようなことを志したといいます。 『成長よりも成熟。小規模であっても社会的価値を創造し続けることができる病院として充実していくこと。この時代に生き残っていくためには、人が集う病院、人をひきつける病院、いわゆるマグネットホスピタルになっていくことが重要。まずは職場としての魅力を備え、ここで働く人たちに納得・満足してもらえる環境をつくること、そして、「ここで働きたい」と思われる病院になること。病院の質は、規模の大きさでは決まらない。人間性を尊重した心温かな医療サービスの実践によって、小さくても信頼度ナンバーワンの病院を目指そう。』
副理事長である姉の思想に大きく影響されたということを回想されていますが、そのなかでも「やがて病院はその経営姿勢とサービスの質によって選ばれる時代が必ず来る」という想いを20年以上も前にもち、医療は究極のサービス業と位置づけて病院経営を実践されてきたことに卓越した先見性を感じます。そして、「患者様の満足と幸せの追求」「集う人(職員)の幸せの追求」「病院の発展性と安定性の追求」の3つの経営理念を根幹に据えて医療活動を続けてこられたということです。
今、現在の状況ですが、病床数は40床に対して職員数は100人という病院になっています。通常の病院に比べ倍以上の職員を配置していることになるようですが、これについては『私たちは、病院規模を拡大せず、小規模経営に徹してきました。それは、最終的には医療の質を維持するためですが、もうひとつは、職員と患者様全員の顔が見え、コミュニケーションを保てる人数の限界という意味で現状の規模にこだわりたいというのが経営者としての私の哲学であり信念でもあるのです。』と明確に理念を追求し実践してきた結果であると揺るぎない姿勢を示しておられます。これがなんともずっしりと信頼感を感じさせます。1997年に日本医療界でははじめての第三者評価機関である財団法人日本医療機能評価機構により、病院の組織基盤や診療の質、患者様の満足度、適切な看護など約200項目について評価を行う第一回認定審査が行われました。ほとんど準備らしい準備もできないまま挑戦したそうですが、応募した25病院のうち、わずかに8病院しか認定されなかったなかで、川越胃腸病院は、見事にその一つになったということです。やってこられたことを考えますと納得できるところです。書籍では、具体的にどのような経営人事を実践してきているかについてもまとめられています。
・すばらしい環境の中で毎日明るい気持ちで働くことができる幸せ
・努力が評価され、きちんとした形で自分に帰ってくるという、やりがいを持って働くことができる幸せ
・将来への明るい希望をもって働くことができる幸せ
・病院と夢を共有できる幸せ
・たくさんの幸せを感じられる環境にいられることに心から感謝し、これからも精一杯努力していきたい。
川越胃腸病院で働く職員さんたちの言葉です。万感の幸せ感があふれています。どうすればそういう職場がつくれ るのか、まさにそれを同院の経営人事から学ばせていただきたいと考えます。
望月先生は『ES なくしてCS なしを信条とし、どんなに経営が厳しい状況にあっても、常にES を原点として理念 を実践するという基本姿勢が、職員意欲を生み出し、職員と病院との強い絆に育ってきた。』と語っています、しかし、そうした想いをもっていても、当初は採用した人が定着せず非常に苦労したといいます。そこで、まず感じたこ とは採用の際の考え方を次のようにとらえたということです。
理念経営実践のための採用の考え方
『待遇などの条件だけで仕事をする人は結局、経営者がどんなに心血を注いでも、思いを語りかけても、組織に定着させることはできない。雇用条件によって職場を選ぶような価値基準の異なる人を採用していては、職員が定着しない悪循環から脱することは難しい。』他の理念経営に成功した経営者からもよく指摘される点ですが、誰とやるかということが重要な要素になります。人を変えることは容易ではなく、経営のあり方を変えようとする際には、価値観を共有出来る人を残し価値観の合わない人に去ってもらうようにすること、また、共有化できる人を採用していくことが成功への鍵となるようです。
人材育成のポイント
価値観に合う人が採用できるような状態になってきたら、次は、いかに育成していくかということになります。この点について、望月先生は『人を育てること。これこそ経営の本質であり、経営そのものとさえ言える。』と並々ならぬ想いをもたれ、以下が人材育成のポイントであると述べられています。
・みなで学び、みなで育てる環境をつくる(愛情)
教育より共育。経営者一人が指導してもその内容にも効果にも限界があります。それよりも入職したら職場のみんなで育てていくのが理想の姿。
・仕事で心が奮い立つような現場体験を積ませる(感動)
・目に見えない報酬(評価)
上司からのちょっとした気遣いや言葉かけ、評価やねぎらいの言葉が職員の心に火をつけます。トップが自分をみてくれている。気にかけてくれていると実感出来ることがやりがいや幸せ感にもつながるのです。
・個人と組織の相互発展(共創)
職員と病院が同じ方向を向いて、同一線上で発展していけるような関係作りが欠かせません。組織の発展と個人の発展が矛盾しないことが大切です。
こうしたポイントを意識しながら、年に二度、院長や役員による理念面接を行っているといいます。面接では、病院業績の伝達と理念や動機付けの確認を行っているのだそうです。
あらゆる組織に共有できる働きやすく、心地よい職場づくりの指針
著書の中では、読者が実践できるように非常にうまくまとめられているところが随所にありますが、中でも働きやすく、心地よい職場づくりのための指針として掲げられた以下の点は、21世紀型企業の経営人事目標として極めて参考になると感じました。
働きやすい環境、心地よい環境とは
<共感> 組織の理念・方針を全員が共有している
<責任> 権限と役割が明確になっている
<評価> 仕事を評価するシステムがある
<参画> 全員で協議し決定する機会がある
<協調> チームワークとコミュニケーションがよい
<自由> オープンで明るい雰囲気がある
<成長> 学びと成長の風土がある
<信頼> 上司や経営者を信頼できる
こうした点を目標にして組織づくりを続けていけば、モチベーションが高まる理想の職場に一歩ずつ近づけると指摘されていますが、そのとおりであると感じます。医師としても一流ですが、望月先生は経営者として超一流な方であると感心することしきりでした。まだまだご紹介したい貴重な視座がたくさんあります。ぜひ、理念経営を実践しようという経営者、人事担当者、社会保険労務士の方は、『いのち輝くホスピタリティ』をご一読いただくことを推奨いたします。得るところ極めて大です。
働きやすい環境、心地よい環境とは
<共感> 組織の理念・方針を全員が共有している
<責任> 権限と役割が明確になっている
<評価> 仕事を評価するシステムがある
<参画> 全員で協議し決定する機会がある
<協調> チームワークとコミュニケーションがよい
<自由> オープンで明るい雰囲気がある
<成長> 学びと成長の風土がある
<信頼> 上司や経営者を信頼できる
こうした点を目標にして組織づくりを続けていけば、モチベーションが高まる理想の職場に一歩ずつ近づけると指摘されていますが、そのとおりであると感じます。医師としても一流ですが、望月先生は経営者として超一流な方であると感心することしきりでした。まだまだご紹介したい貴重な視座がたくさんあります。ぜひ、理念経営を実践しようという経営者、人事担当者、社会保険労務士の方は、『いのち輝くホスピタリティ』をご一読いただくことを推奨いたします。得るところ極めて大です。
新SVC通信 第258号(2008.10.06)より
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『新SVC通信』は毎週月曜発行です
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■川越胃腸病院(望月智行理事長・院長)
1969年の創立以来、地域における消化器科専門病院として、地域医療の向上に貢献。「高水準の専門医療技術」と「患者様の立場に立った心温かい医療サービス」を提供できる病院として、規模の拡大を求めず、ひたすら「医療の質」へのこだわりを重視した経営を続けてきた。「医療は質の高いサービス業でなくてはならない」という信念のもと、全職員が病院理念を共有しつつ、「患者様との信頼関係を基盤にしたExcellentな病院」づくりに努力している病院。
※オフィシャルサイト
http://www.kib.or.jp/
※人事理念
http://kib.or.jp/idea/personnel.html
※参考文献
『いのち輝くホスピタリティ 』 望月智行 著
1969年の創立以来、地域における消化器科専門病院として、地域医療の向上に貢献。「高水準の専門医療技術」と「患者様の立場に立った心温かい医療サービス」を提供できる病院として、規模の拡大を求めず、ひたすら「医療の質」へのこだわりを重視した経営を続けてきた。「医療は質の高いサービス業でなくてはならない」という信念のもと、全職員が病院理念を共有しつつ、「患者様との信頼関係を基盤にしたExcellentな病院」づくりに努力している病院。
※オフィシャルサイト
http://www.kib.or.jp/
※人事理念
http://kib.or.jp/idea/personnel.html
※参考文献
『いのち輝くホスピタリティ 』 望月智行 著