第948号 人本経営は性善説である|2022|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2022/07/11

第948号 人本経営は性善説である

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌【新SVC通信】



人本経営は性善説である



人本経営は、社長と社員、社員同士(同僚、上下)、社員と外部の関係先、
そして顧客との関係の質を究極に良好にしていく取り組みです。

関係性がこよなくよくなっていくと、相手を慮る思考力が増していきます。
そして、思いやりのある行動や、よりもっと役に立つ自分になっていくための努力といった
自発的行動をしていくようになります。

そのことが周りに伝わるので、当人は承認される場面が増えていきます。
それは「ありがとう」という声がけだったり、
「感動した」というサンキューレターだったり、
「やっぱり〇〇さんから買うよ」というお客様からのご指名だったりします。

個人はますますやる気が出てきます。
そして、組織全体では、それは業績という最上の結果の質をもたらしていきます。
まさしく利益はウンチです。

人本経営に成功している組織では、例外なく、この黄金律がみられます。
そして、この黄金律が発動するために、ある条件が例外なく伴っています。
それは、経営者が社員を信頼しきる性善説で経営を進めているということです。

逆に言うならば、トップが性悪説でマネジメントをしている会社には、
人を大切にする人本経営は芽吹かず、茎も伸びず、葉もつけず、
そして、言うまでもなく花は咲きません。

業績軸から幸せ軸への要諦

性善説でモノゴトを進めていく、これが幸せ軸で経営をしていくということの意味です。
この感覚がなく、形だけ人本経営を進めようとしても、必ず綻びます。

伊那食品工業の塚越寛さんは、おっしゃいます。
「性善説の方が性悪説よりコストはかからなくなる」

アルプスの麓にある同社は、自然に調和するように広大な敷地が整備されています。
しかし、公道との境に塀がありません。そして、守衛さんもいません。
そのため、だれでも敷地の中に簡単に入ることができます。

セキュリティ、防犯という観点からは不用心極まりないですが、
その快適な空間は、地域住民や遠くからわざわざ同社を訪ねてくる来客のための憩いの場所として
解放されているのです。

年間35万人もの来客があり、ちょっとしたテーマパークのようになっている本社の敷地は
「かんてんぱぱガーデン」と呼ばれて、
芝生の広場、四季を感じられる野草園、健康パビリオン、
美味しい水が採取できる水汲み場、地元の芸術家のための展示芸術館、
寒天料理を食べさせてくれるレストランなど4つの飲食店などが点在しています。

たくさんの来客の目があること、さらには、抜群の空気感に満ちているため、
不届き者が何か悪さを企んで窃盗するといった出来事が起きる余地がない
完璧な空間になっています。

この結果、防犯へかけるコストは圧縮され、
代わりに来客がお金をたくさん落としていくという結果になっているのです。

あるいは、高知県でビルメンテナンスを展開する四国管財。
「クレームは天の声」というキャッチのもと、
現場起きるちょっとしたクライアントからのクレームに敏感に対応しています。

同社では、クレームをもたらしたことに対して、決して社員は咎められません。
迅速にクレーム対応したのち、理由を検証していくと、
そうしたミスが生じる問題が本人ではなく、会社側にあると気づけたからだといいます。
そして、それを改善し続けていくことで、会社組織としての質を向上し続けています。

性善説をベースに現場で働く社員は、
例えばホテルのトイレに設置されていた高級そうな液体手洗い石鹼の容器を
掃除途中で破損してしまったことも隠さずに正直に申告します。

もしも性悪説で接していたなら、黙ってなかったことにする、
あるいは、それをどかさずに適当に清掃して仕上げてしまう、
といった行動にでることが考えられます。

正直に申告してくれることで、ホテル側も安心して、
この会社にメンテナンスを任せられると信頼感を高めています。
壊れた容器や汚い容器をお客様に使用させることなく、
不快な思いをさせるといったことが避けられるので、ありがたいとなる訳です。

こうして、同社は次から次へと口コミで紹介が広がり、
今では、合い見積もりで交渉してくる客先は、こちらから断るという状態になっています。

結果的に収益性がよくなるのですから万々歳です。
正直者が馬鹿をみない、それが人本経営です。

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