第945号 迷ったときは伊那食品工業に帰る|2022|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2022/06/20

第945号 迷ったときは伊那食品工業に帰る

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌【新SVC通信】



迷ったときは伊那食品工業に帰る



企業経営のあり方は、業績軸から幸せ軸へあきらかに移ろい始めています。
気づいたシンクタンクやコンサルティングファームなどが、
それを意識したと感じられる経営手法をたくさん提示してくるようになりました。

その実践が真に幸せ軸に則った原理原則に基づいて、
関わるステークホルダーの幸せを増進させ、
福徳円満をもたらすならば歓迎すべきことです。

しかしながら、結局それは業績軸で語られた経営手法の焼き直しではないかと感じられるものが、
巷に氾濫しつつあると日々感じるようになっています。

例えば人的資本経営。
ついに核心に触れたかと思いきや、この経営人事マネジメントそのものは、
決して幸せ軸を意識したものではなく、あくまでファイナンスの議論として、
すなわち業績軸の延長線上でたどり着いています。

機関投資家が、リーマンショックのような経済環境に甚大な影響を及ぼす荒波が生じても、
平素から人的資本に手厚く投資をしている会社は持続可能性が高いということに気づき、
その重要性を提起し、企業にその情報開示を求められるように
ここ数年で一気に環境整備がされているというのが現状です。

外圧で企業がその経営のあり方を変えようとしているのであれば、
結局、人的資本経営を実現すると宣言して外見上の情報開示をしたとしても、
その内実は業績軸のままで、
本質的に何も変化していないという事態が発生してくるのではないかという将来像が
目に浮かびます。

人を大切にする人本経営を志している企業にとって、
人的資本の情報開示を求められることは、むしろウェルカムで、
その優秀さを際立出せる好機になることは間違いないところでしょう。

それはそれでよいのですが、
ビジネスチャンスの絶好機到来との認識を強めている
人事コンサル系のマーケティングやパフォーマンスは強く、
その影響力は半端ではありません。
これからあらゆる職場に、これが流行りの今風な経営人事スタイルという触れ込みで、
幸せ軸を偽装した業績軸の経営手法導入の提案が舞い込んできます。

そのときに、あまり思慮せずにおかしな制度を導入してしまうと、
築いてきた人を大切にする風土や企業文化に亀裂が生じてしまいかねないということを
肝に銘じていただきたいのです。

例えば「ジョブ型雇用」。何のために仕事があるのでしょうか。
人を幸せにするために仕事がなくては始まりません。
ジョブ型では、多数のポストが用意されます。

そして、挙手をさせてそのジョブに社員が就くことをマネジメントしていきます。
この結果、組織内では当然に競争が発生します。
コンサル会社はこれにより
企業は自律自発的な社員がイキイキと働くことができる職場が実現できると宣伝しています。

本当でしょうか。
どう考えても競争の激化は、成果主義を誘引することは目に見えています。
そして、一度就いたポストにしがみつく社員も多く発生させることになるでしょう。

大切な社内での社員同士の協力関係の質が棄損されていくだろうことは
火をみるより明らかです。

ジョブ型雇用の前身である職務給や職務型人事制度は、
これまでも年功序列、終身雇用を悪玉にして、何度もコンサル会社から提案され、
都度、日本企業になじめず尻すぼみになっていった歴史があります。

歴史は繰り返すといいますが、またかという感が否めません。
その制度がより人を大切にする経営を進化させるものとして
導入検討に値するものなのかどうなのか、
正確かつ簡単に判断できる方法があります。

答えは伊那食品工業にある

それは、伊那食品工業や未来工業のような人本経営のレジェンド企業が、
それを実施しているのかどうかです。

実施していることならば、検討の価値は大いにあることでしょう。
しかし、実施してなければ、どんな流行でもスルーです。

「ジョブ型」はどうでしょうか。答え=していません。

年功序列で終身雇用を具現化していくことは、
関わる人の幸せに貢献できるベストではないがベターな仕組みだから、
両社はジョブ型など見向きもしませんし、入り込む余地もないことでしょう。

本当に両社が存在していることに感謝です。
これからも雑音に気を取られずに、しっかりとホンモノをベンチマークして、
永続する企業になっていくことを目指していきましょう。

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