第754号 GPTWの最新提言を検証する①|2018|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2018/10/09

第754号 GPTWの最新提言を検証する①

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌
新SVC通信 第754号



GPTWの最新提言を検証する①




20年ほど前から世界58ヵ国で「従業員の働きがい調査」を実施してきた米国の調査会社GPTW社から、最新の働きがいについてのレポートとして新刊『世界でいちばん働きがいのある会社』が出版されました。同社は過去、年一千万人近い従業員にアンケートを実施することで“働きがい”度を調べ、働きがいと企業業績に正の相関関係があることを示してきています。今回、どのようなことが提言されているのか、そして人本経営との類似性も比較しながら、報告してみることにいたします。

[提言①]
働きがいのある会社とは、従業員が経営者、管理者を信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感を持てる会社である。

[提言②]
働きがいのある会社とは、すべての従業員が働きがいを感じる組織でなければならない。つまり「全員型働きがいのある会社」であるべき。

[提言③]
「全員型働きがいのある会社」であるかどうかを見る際に、現在6つの要素を測定している。
1.価値観 2.イノベーション 3.財務面での成長 4.リーダーシップの有効性 5.人の潜在能力の最大化 6.信頼


価値観の共有は人本経営でも成功の鍵であることが共通です。またその会社ならではの独自性、期待を超える感動を生み出すことを人本経営でも目指していきます。それはイノベーションといってもよいかもしれません。財務面では、高い経常利益率、自己資本比率にこだわるのは人本経営でも特長としてみられます。

[提言④]
最初の4つの要素は、組織を運営しているリーダーならば誰でも理解できるだろう。5番目の「人の潜在能力の最大化」は、調査データで経営幹部と第一線で働く従業員との間で評価に大きなギャップがあったことから加えられた。また、性別や世代、民族や人種のギャップもあった。

[提言⑤]
働きがいのある会社では、「信頼」が業績を伸ばす力になるが「全員型働きがいのある会社」では、その力がさらに増す。


今回の新刊で、GPTWは、これまでに高いランキングをした企業であっても、経営陣や管理職に比べ現場での社員にはそれほどモチベーションがはかられていない事案があったとして、本当に働きがいのある会社は、すべての社員にとって、働きがいを感じることが重要だと強調しています。そして、そのためには個々人が尊重され、潜在能力を開花するように人材育成をし、そのために決定的に重要なことは「信頼」であると指摘しています。

[提言⑥]
従業員が積極的にワークコミットメントするようになるには、「常にリーダーが自分のことを気にかけてくれる」「自分は公正に扱われている」「自分は意味ある仕事に従事している」と従業員が思える環境が必要だ。どんな従業員とでも、組織の中での役割にかかわらず、一人の人間として接し、職場において有意義で、尊敬と思いやりのある関係を公正なやり方で築くこと。


社員の自主性、主体性が発揮される際のリーダーのあり方について言及していますが、この提言では、ホテルグリーンコアの金子祐子社長の語りとほぼ完全に一致しています。金子社長は次のようなことを語られています。

「マネジメントは部下と闘うことではなく、スタッフの行動が次へ繋がるように環境を整えること。結果として、強い信頼感を経営者とスタッフの間に生むこと。業務命令では、自発性は絶対に生まれない。社員たちが自発性を発揮するためには「信頼されている」「受け入れられている」「関心をもたれている」状態をつくることが必須で、それを社員が感じて、自発性のスイッチを本人たちが入れる。」

信頼されている状態をつくることが、これからのリーダーの大きな役割のひとつとなってきていることは確実かと感じられます。それを実現させるためには、一人ひとりのメンバーに「任せる」という権限付与や移譲が不可欠になります。そして、支援する行動がなければ実現は不可能でしょう。ここに支援型リーダーシップの重要性があることをGPTWのレポートからも強く確認できました。 (以下次号)



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