第1071号 感謝の反対

第1071号 感謝の反対

関係の質がよければよいほど、相手や物事に対する思考性はよくなり、それが良い行動につながり、結果として幸福感や達成感、あるいは信頼性の向上といった結果が伴ってくるというダニエル・キムの成功循環モデルは秀逸です。数多くみてきた人本経営に成功した現場で、このことが社員の数だけ起きていて、結果としての好業績を永年続けている事例を山ほど見てきました。

関係の質をいかによくしていくか

人本経営の実践現場では、社員一人ひとりの心のあり様を健全に整えていく人間教育が熱心に行われています。人間力の涵養です。その方法論は、様々ですが、弊社では「社風をよくする研修」を実施して、そのお手伝いをしています。研修でのメニューはこれまた様々ですが、体験していただくことで参加者の人間力向上に寄与させていただけていることは間違いありません。この研修で必ず、そして繰り返して伝えていることが、感謝するということの大切さです。感謝の心が社員一人ひとりに満たされていけば、間違いなく確実に関係の質は上質によい変化をしていきます。

感謝とは

感謝の感は、'深く心が動くこと。感動。物事に接して生ずる心の動き。感じ'という意です。すなわち、感という言葉は、「物事に接して深く心が動く」といことです。一方、謝は「言」と「射」でできています。「射」は矢を放つことであり、その結果、弓の緊張が解けることを意味しています。つまり、「ありがとうございます」「おかげさまです」といった言葉に出すことにより、心の緊張が解けることを表しています。「感謝」とは、物事に接して、深く心が動いたことに対して、言葉を射る=発するということです。

感謝の反対

されたことに対して、当たり前ではなく有難かったと言葉を添えて謝意を伝えていく感謝があふれていれば、その組織風土は明るく、健全な企業文化が醸成されていくに違いありません。サンクスカードを職場に導入するのはこのためです。

しかしながら、世にはギスギスした職場や人間関係も溢れています。そこでは、感謝とは反対の真逆の関係の質がはびこっているのです。感謝の反対とは、何なのでしょうか。「ありがとう」という行動の反対は「当たり前」です。では思考として感謝という感情の反対として出てくるのは何でしょうか。感謝して行動していけば、相手との関係性はよくなっていきますが、その感情をもち行動をしていくと関係性を破壊するもの…それは「嫉妬」なのです。

嫉妬心で行動すればすべてを破壊し尽くす

嫉妬心は、相手の長所や幸福などを素直によしとせず、相手を悪く思ったり憎んだりする感情です。嫉の字は、矢が病に侵されている状態です。感謝の謝が矢を放ち弓の緊張を解かすことと解説しました。それが病気になっているのです。心が妬み嫉みで緊張しまくって穏やかでない状態です。しかも感情の起伏が激しいとされている’女’偏です。その状態が妬、つまり石のように固まっている訳です。

仏教でも、この嫉妬心は「貪瞋癡」の瞋として、とくに煩悩の中でも戒めなければならない三毒と教示されています。実は、意外にも共感性が高い人は嫉妬深いことが報告(Gómez-Carvajalら, 2020年)されています。確かに、ネット上で罵詈雑言、誹謗中傷を繰り返している事例には、もともと仲間同士だったのに、ある時点をきっかけに嫉妬心が燃え上がり、炎上しているケースによく遭遇します。

バランス感覚が重要

嫉妬心は、感情なので、これが心に沸き起こってくることを防ぐことは誰にもできません。嫉妬していると感じたなら、すぐに、そのことを受け止め認識して、その心で行動しないようにコントロールしていく習慣を身につけていくしかありません。嫉妬は感情なのでその先の行動は制御できます。そのバランス感覚を維持していくためにも平素から感謝で心を溢れさせておくことが重要なのだと改めて感じます。実践していきましょう。

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