第849号 敵をつくらない経営

第849号 敵をつくらない経営

敵をつくらない経営


人本経営のレジェンド、伊那食品工業を育て上げた塚越寛さん。数々の名言を残されています。その中で、100年先にも関わる人々が「いい会社」だと言ってくれるために、今日大事にしたい3つの心がけがあるとして示された経営方針はどんな企業にも当てはまる秀逸な教えです。

 経営方針1「無理な成長は追わない」
 経営方針2「敵をつくらない」
 経営方針3「成長の種まきを怠らない」

このうち1番目と3番目は、その後、塚越さんの影響を受けた豊田章男氏も、トヨタの決算発表会でこれまでたびたび口にしていました。それぞれ年輪経営、有効供給創出のための未来投資という人本経営で核心的な経営のあり方として、人を大切にする経営を実現したいと願う経営者に浸透してきている考え方になってきました。

■「敵をつくらない」とはどういうことか

しかし、2番目の「敵をつくらない」ということは、まだあまり語られていませんし、意識している経営の事例は少ないように思います。それほど難しく、しかし、重要な要素が込められているあり方なのだと感じられます。

伊那に行った折、私、小林は塚越さんに「敵をつくらないとはどういうことなのですか」と直接尋ねたことがあります。

すると、「金を払っているのはこっちだからとばかりに横柄な態度をとらないことだよ」と教示してくださいました。なるほど人本経営においては、業績軸では下請けとみなす仕入先や取引先は2番目に大切にすべきステークホルダーとして関係を良好にしていくことをはかります。人から恨みつらみを買っていては、いざというときに立ち行かなくなり持続しないよ、という示唆です。

さらに、この経営方針の2については、伊那食品工業の取り組みから学べることが多々あります。

今や、本社のある「かんてんぱぱガーデン」の年間来場者数は約35万人と公式に発表されています。アルプスのふもとにある東京ドーム2個分の敷地は、できるだけ自然の景観を損なわないように社屋・研究所・工場が奇麗に配置され、和食処や寒天料理レストラン、そば処、水汲み場、美術館が併設され、もはやテーマパークといえるたたずまいとなっています。

伊那食品工業は交代制勤務を強いておらず、いわゆる一直で18時には工場が閉鎖となります。夜は家族団らんのためにあるという思想を貫いているからですが、ガーデンのレストランなども同時刻に閉店となります。たくさんのお客さんがいますから、夜も営業すれば儲かること確実ですが、それをしません。伊那市には美味しい郷土料理を出す飲食店も多数あるのだから、そっちに行ってもらえればいいと考えているのです。これが「敵をつくらない」ということなのだと唸りました。そうすることでお客さんを呼び込んでくれるのですから、近隣の飲食店の店主たちは決まってこういうでしょう。「いい会社だよね、伊那食品は」もう確実に「信頼」という関係の質を地域で高めていくことになるだろうということが理解できました。

■地元の酒蔵を事業承継して起きたミラクル

また、数年前には、傾きかけた老舗の酒蔵の救済に乗り出しました。「今錦」という日本酒を製造する米澤酒造という会社です。かんてんぱぱガーデンに力を入れているのも、単なる会社の所有物ではなく、「美しい」街づくりに貢献したいという思いからです。地元の酒造りが途絶えれば、この地域の棚田も存亡の危機に瀕する危険性があると考え、巨額を投じて再建に乗り出したのです。設備はすべて最先端のものに取り換え、一新しました。

昨年、長野駅のお土産コーナーに立ち寄った時に驚きました。なんとこの今錦の特設コーナーが際立っていたからです。もちろん同社の営業力もすごいのでしょうが、地元の人々の「伊那食品が立て直そうとしている酒蔵なら応援しないと」という団結力のようなものがとても伝わってきました。これが「敵をつくらない」ということのパワーかと舌を巻かされてしまいました。

【SVCからのお知らせ】――――――――――――――――――

★『CHO養成講座 2』7月2日より再開します!
開催日:2020年3月12日(木)~ 全8回
※緊急事態宣言のため延期しておりましたが、7月2日より再開いたします

大好評 継続開催決定!
第1回開催のCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)養成講座は大変ご好評をいただきました。そのため、引き続いて第2回目の講座を開催させていただく運びとなりました。
精鋭講師陣による、目からウロコが落ち続け、幸福度が満たされた組織風土改革への確かな手応えと実践手法の数々の学びを得る体験をぜひ!
これからのお申し込みでも受講いただけますので、ぜひご検討ください。

【配信のお申し込み】――――――――――――――――――

このコンテンツの著作権は、株式会社シェアードバリュー・コーポレーション(以下SVC)に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、SVCの許諾が必要です。SVCの許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。


サービス一覧

講座日程一覧

お問い合わせ