第785号 人本の道を逸脱し始めた?!豊田章男社長|2019|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2019/05/27

第785号 人本の道を逸脱し始めた?!豊田章男社長

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌
新SVC通信 第785号



人本の道を逸脱し始めた?!豊田章男社長


経団連会長に続いて、トヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用を守っていくのが難しい局面に入ってきた」と語ったと報じられています。

正直、失望しました。

3月に当通信776号で「トヨタの正念場」と題して、伊那食品工業の塚越寛さんの年輪経営哲学に学んだはずの豊田章男氏の最近の言動がぶれ始めているのではないかと懸念を持ち始めているとレポートしましたが、早くもこの懸念が現実化し始めたと言わざるを得ないニュースとなりました。

確かに自動車業界を取り巻く社会情勢は激動していて、「100年に一度」と危機意識を抱くことについてはわかります。

だからこそ、雇用の安定を実現していくことで、社員の幸せを増大させていくことに使命を果たすと宣言することが、人を大切にする会社づくりをしていく人本経営者の人本経営者たる姿勢であると断じて疑いません。

残念ながら、豊田社長は人本経営のカテゴリーから逸脱していってしまったと感じざるを得ません。少なくとも、ぶれてしまったことは確かでしょう。

わずか3年半前、塚越寛さんとの対談で「本家本元の塚越会長の前で言うのも恐縮ですが(笑)、会社に関わった人々が「いい人生だった」と思えることも大事だと思っています。たとえば、自分が成長できたとか、生涯変わらぬ友ができたといったことを求めていくのが人生だと思いますし、そういうことを与えられる企業になることこそが、一番大事ではないでしょうか。」(PHP松下幸之助塾2015年1-2月号)と語っていたのですから。

■それでも人本経営者は生涯現役にこだわるだろう

豊田社長が変節しようとも、人本経営に成功し続けていく経営者は、「本当にこの会社で働いていて心からよかった」と胸をなでおろして職業人生に終止符を打つ社員を沢山輩出していくことに情熱を傾け続けていくに違いありません。

それこそが会社を永続していく目的に他ならない、ということを根本原理と考えているからに他なりません。

先頃亡くなられた日本理化学工業の故大山泰弘会長は、皆働社会の実現を最期まで念じておられました。人の幸福は、人の役に立つ「働く幸せ」によって導かれるものであると、ご自身の経験をふまえての確信のお言葉でした。

会社経営をしていくためには、インフラや多くの社会資源を使用し、消費して成り立っているということを忘れてはいけません。その会社が、社員が仕事をして、家族を支えていくことができる安定した生活を実現しそれを持続していくことは務めですから、責任放棄以外の何物でもないでしょう。

最近のイベントで登壇した塚越寛さんの言葉です。

「現状維持ではなく、『末広がり』がいいと思うんですよ。先細りしていく企業に希望はないでしょう。だんだんとよくなっていくことにこそ、夢はあるんです。
わたしの会社はこの50年間ずっと右肩上がりですが、そういうことをずっと考えて経営してきましたね。私は社員をファミリーだと思って経営しているので。たとえば家族にできの悪い息子がいるとしても、簡単に家族から追い出しはしないでしょう。会社も同じです。
そもそも「会社」は、優秀な人材だけが集まる場ではないんです。それよりも社員のたった一度の人生を、できる限り幸せにする責任が会社にはありますから。」


豊田社長は今、この言葉をなんと聞くのでしょうか。


[今週号のニュースソース]
塚越寛さんの最近の語りです
★「ティール組織=全員が幸せになれる組織」とは限らない──主体性や自由がプレッシャーになる人もいる
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005317.html


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