第776号 トヨタの正念場|2019|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2019/03/18

第776号 トヨタの正念場

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌
新SVC通信 第776号



トヨタの正念場


トヨタ自動車の労使交渉が13日の回答日に決着しました。今回、豊田章男社長は協議の終盤、「今回ほどものすごく距離感を感じたことはない。(労使が)本当にかみ合っていない」と述べ、自動車業界の転換期に直面している危機感が共有できていないと指摘していました。

電動化、自動化、シェア化等、いわゆるCASEにより前提条件が激しく変化する自動車業界。経営陣は100年に1度の変化と危機感を露わにしているが、現場では「それはわかるが今日の生活も大事」という要求に拘るのでかみ合わない、と豊田社長が語っているという構図です。

労使ではなく同志という関係性を、「伊那食品工業がお手本である」と語っていた豊田社長が揺れています。悩み揺れることは、どんなに「いい会社」をつくっても起き得ることです。その問題解決をぶれずにできるかどうか、これが肝要です。

それまでは行司役ということで労使の協議を見届けることに徹していた豊田社長は、13日の最終回答日に「今回は、明確に「決める」という立場に(自分の立ち位置を)変えるために、行司役を降りた」と説明しています。これは何度もやってはいけないことだと前置きをして「世間からはどう言われるかわからないが、今回が組合と会社の話し合いの再出発になるのであれば、そこは敢えて自分が出る所だと判断して、行司役を降りた」としています。

■豊田社長は何を語ったのか

行司役を降りた豊田社長が語ったことは、原点回帰でした。トヨタグループで働く全員が立ち返るべき原理原則である『豊田綱領』について、その意味するところをご自身の口で語り始めたのです。

『豊田綱領』はトヨタグループの始祖である豊田佐吉の、いわば創業の精神というべき存在で、5つの題目から構成されています。それを一つ一つなぞらえて、檄を飛ばしていました。

<産業報国>
自分のため、会社のためということを超えて、『お国のため、社会のため』となれているか。

<常に時流に先んずべし>
新たな技術の登場によって、クルマの概念そのものが変わり、競争の相手も、競争のルールも変わろうとしている。この大変革の時代を生き抜くためには、時代の変化を先取りして、トヨタで働く全員が、自らの仕事のやり方を変えていかなければならない。『仕事のやり方を変える』ことができなければ、トヨタは終焉を迎えることになる。

<質実剛健>
あらゆることにおいて、『ごっこ』はもうやめて、みんなで物事の本質を追求していかなければ、この変革の時代を生き抜くことはできない。

<家庭的美風>
悩みや困りごとがあれば、素直に打ち明けることができ、答えは出なくとも、ともに悩み、ともに打開策を模索していくのが家族だと思う。今回の話し合いにおいて、会社側が大いに反省すべき点は、この点にあるのではないか。

「生きるか死ぬか」という会社の置かれた状況を踏まえ、労使ともに、ひとり一人が「何が出来るか」「何をしなければならないか」を自ら考え、行動に移せているかどうか、その行動が周囲の方々に認められ、トヨタを「応援しよう」と思っていただけているかどうか、こうした点を確認するために、あらためて秋に交渉の場を設けると締めくくりました。

■原点回帰はわかるが

カリスマ経営者の迷走で競合企業が大騒動を起こしている自動車業界。トヨタの健全性がさらに浮き彫りになり、状況としては悪くないはずですが、もはや業界内だけに留まっている時代ではないと社員に薫陶を与えているのでしょう。

生産年齢人口が激減して消費者の絶対数も激減し続けていること、所有欲に昔ほどの意義を見出さない若者の価値観の変化でクルマの購入度合いが明らかに減じていること等、確かに未来は混とんとした状況にあり、これから新たな付加価値を創造していかなければならないという危機感から、困難な創業時代を乗り切っていった創業の精神に立ち返ろう、ということは理解できます。

そして、「何のため」にという目的を明確にもつことに意識を集中していこうとするのも正解だと感じます。ただ、一連の労使協議のやりとりを追っていて、どうしても気になることがあります。それは、これから「幸せ創造」をする方向にトヨタは前進していくのだろうという確信が持てなかったことです。

当通信では、かねてから伊那食品工業の塚越寛氏の経営哲学に感化された豊田章男社長率いるトヨタが、世に人本経営を拡散していく導火線になるのではないかという期待を込めてレポートしてきました。しかし、このたびの話し合いでは、幸せ軸に沿った経営が展開されていくというワクワク感がほとんど得られませんでした。トップが抱いている危機感が相当であることは十分伝わってきましたが、社会の幸せ増大の実現にむけて危機を打破していくという思いが不十分で消化不良となりました。

今後も真のリーディングカンパニーで居続けられるかは、トヨタと関われば幸せになれるとステークホルダーが心を寄せたくなる存在になれるかにかかっています。エールを送りつつ見守っていきましょう。


[今週号のニュースソース]
★トヨタイムズ
https://toyotatimes.jp/

★春闘トヨタ異例展開 「脱一律」経営側1勝 「社長怒った」情報広がる
https://www.yomiuri.co.jp/local/chubu/feature/CO037451/20190315-OYTAT50048/


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