第683号 売り手市場という低次元発想ではこの先を見誤る|2017|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2017/05/08

第683号 売り手市場という低次元発想ではこの先を見誤る

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌
新SVC通信 第683号



売り手市場という低次元発想ではこの先を見誤る



働き方改革政策を最優先課題と位置づけた安倍晋三首相が、そのベンチマークに訪れた大阪の天彦産業。樋口友夫社長は首相に対し開口一番「わが社は社員第一主義です」と切り出したのが印象的でした。

その樋口社長が先日、facebookで以下のフィードを投稿されていました。

▶売り手市場?
NHKのニュースを観ていたら「学生に有利な時代ですねー」のコメント。情けない限りです。
世界の動きを観ていると戦争が身近に起きそうな時代です。
自分の人生を如何に作り上げていくかが問われています。
就職に売り手市場という表現をNHKが言うのですよ!
企業は内需縮小へどう対策を打つか!
グローバル戦略にどう対処するか!
この流れに対応出来る社員・仲間が必要なのです。
売り手市場でなく、自らの目標に向かって行きやすい時代ですと言って欲しい!
売り手市場という表現をしている低次元さを知って欲しい!◀

同じニュースをみていて、当通信でも同様の疑問を感じました。

そんな単純思考では、この先の未曽有の人口減少時代を見誤ると思いました。

この先20年近くは、生産年齢人口も新卒学生も減少の一途を辿っていくことは確実になっています。ですから、新卒に対する有効求人倍率が上昇し続けることは必至です。

そして、思うように採用が進まず、社員が高齢化していく会社は、いずれ寿命を迎えてしまいます。この大きなトレンドはバブル崩壊から続いているとみることが正しいのではないでしょうか。途中、極端なデフレ経済のあおりで就職氷河期と言われた時期もありましたが、生産年齢人口の減少が始まり、右肩上がりの経済環境が毀損されて以降の津波のような大潮流が社会を襲ってきているのです。

人口減少はじわじわとした変化ですが、確実に企業経営に影響を与える抗いがたい変化です。バブル崩壊後、わが国の事業者数はピーク時の535万者から2014年には380万者へと減少の一途となっています。

この間、生産年齢人口は1000万人も減少しているのです。それが企業経営に影響を与え、変化に対応できなかった企業が世の中から姿を消しているのです。

この先、現状のままでいくとさらに800万人近くの生産年齢人口が、20年近くかけて減り続けていきます。ですから、事業者の減少もまだ下げ止まりはしないでしょう。これまでの傾向から予測するに、さらに60万者ほど減り続け、わが国の企業社会は320万者程度の規模に縮小していくことが見込まれています。まさしく「6割経済」の到来です。

こうした大きな時代の変化を考えずに、青田刈りをして現状の企業体力以上に新卒採用を拡大してしまう人事をしていては、経営が行き詰るのは火を見るより明らかです。

学生は学生で、安易に就職先を選んで「就活は楽だった」で社員人人生を始めたら禍根を残す可能性がとても高いことを知る必要があります。何故なら、きちんとした経営をしていない会社は淘汰されていく運命にあるからです。

中小企業は中小企業で、「大企業にもっていかれて、人が採用できない」と嘆いていては、これまた座して死を待つばかりとなります。

株式会社シェアードバリュー・コーポレーション主催の人本経営実践講座に参加した、千葉県で居酒屋を経営する会社は、地元の高校生や大学生をアルバイトとして採用し、その後ほとんどの若者が卒業まで辞めず、毎年その中から新卒を受け入れる、ということを実現しています。なかには日本有数の航空会社の内定を蹴って、この居酒屋に就職先を決めた学生もいます。この会社には人生をかけるに値する価値があると感じるからこその出来事です。

真剣に向き合えば、今の学生たちは「この会社には本当に人を大切にする企業文化があって、自分の人生を託すにふさわしい」と受け止めて決断する感性があります。この居酒屋の事例は、そのことをぐうの音も出ないくらいに事実として示しているでしょう。愚痴らず、やるべきことを実践するのみです。


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