第693号 遂に始まった平成の大政奉還|2017|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2017/07/18

第693号 遂に始まった平成の大政奉還

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌
新SVC通信 第693号



遂に始まった平成の大政奉還



少し前の日経新聞の記事ですが、「NY上場廃止ラッシュ NTTも4月に」(2017.3.9)というタイトルで、日本企業が米ニューヨーク証券取引所(NYSE)をはじめとする海外の証券取引所への上場を取りやめる動きが広がっていると報じています。

脱株式市場の動きは、いよいよポスト資本主義社会の始まりかと感じさせるものがあります。

当通信でもこのことは早くから指摘しました。例えば、2014年には、第562号『平成の大政奉還、その時が迫っている』と題して、大企業の上場廃止とは、脱資本主義として軸が完全に変わったことをこれほどわかりやすく示すことができる行動はない、と指摘しています。

遂に時代は大きく動き出してきたようです。

■公益資本主義という考え方

先日、視察にうかがった伊那食品工業の塚越寛会長は、「公益資本主義」を提唱している原丈人氏(アライアンス・フォーラム財団代表理事)の考えは、私の考えと同様だと指摘しておられました。

原氏は、現代の株主中心の資本主義を批判しています。会社は株主のものであるという英米流のコーポレートガバナンスの考えでは、会社を統治するのは株主である投資家ということになり、それでは従業員を多数リストラして固定費を下げ、株価を上げ、企業価値を高めた経営者が評価されることになると指摘しています。

その結果、株主を最優先する株主資本主義が世界にはびこれば、圧倒的大多数を占める中間層が影響を受けて貧困層に転落し、民主主義が機能する前提条件である厚い中間層が減じ、結果として民主主義が機能しなくなると説いています。

実際に、英国では1980年代の金融ビッグバンで製造業が姿を消し、没落した中産階級が貧困層となって格差が拡大し、その不満がEU離脱の遠因となり、不安定さをもたらしていると指摘されています。

同氏は自身が提唱する「公益資本主義」について以下のように説明しています。

中間所得層を増やすためのものです。会社に利益をもたらすのは誰か。まず従業員、それから、お客様、取引先でしょうか。社会も大事です。だから利益が上がれば、こうした関係者に還元する。そして余ったものを株主に配当として渡す。この考えに基づくと、優先度が高いのは、株主を豊かにするということよりも従業員をお金持ちにするということになります。          『日経ビジネス』2017年7月3日号より抜粋

人本主義との類似性が極めて高く感じられる考え方、あり方です。違いをいうならば、社員の家族というステークホルダーが出てこないことと、目的が社員の「幸せの増大」ではなく社員を「お金持ち」にすると言っていることでしょうか。

人本経営に舵をきったトヨタ自動車の豊田章男社長も「公益資本主義」という言葉を用いて、今、そしてこれからのトヨタの経営のあり方を説明していますが、この原氏の考え方に影響を受けているものと考えられます。

■自主的な上場廃止を選択した人本経営実践企業

人本経営実践企業は、しっかと大切にしていくステークホルダーを明確にしていますので、ほとんど上場していません。それがゴールだと思っていませんし、現在の株式市場に上場することで、絶対的な価値観である永続経営がさらに確固たるものになると考えないからです。

いったん上場したものの、やはり違ったと廃止している事例もあります。東京でスーパーマーケット事業を展開しているオオゼキです。オオゼキは1957年の創業で、1999年に株式を店頭公開、2006年に東証2部に上場しています。店舗の社員に仕入れ権限を持たせるなど「個店経営」が特徴で、食品スーパー各社がコスト削減のためにパート・アルバイトを多用する中、正社員比率7割という姿勢にみられるように、人を大切にする経営で現場主義を徹底し、地域に愛されています。好業績ですから難なく上場しましたが、5年も経たない2010年に創業家の社長がMBOを実施、株式非公開にしました。その理由は、「体力があるうちに非上場化し、業績に縛られずに強い店を作りたい」というものでした。四半期決算の公開など上場企業は極めて短期的な経営結果を求められます。その目的は、株主のためにほかなりません。これでは自分たちが大切にしていたものが損なわれると上場廃止した訳です。

さあ、わかりやすいニュースが報道されてきました。ますます時代が動き出すことでしょう。


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