第926号 人本経営の「人本」の意は人的資本ではない|2022|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2022/01/31

第926号 人本経営の「人本」の意は人的資本ではない

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌【新SVC通信】



人本経営の「人本」の意は人的資本ではない



前号で指摘した「人的資本経営」についての当方の見解について、少なからぬ反響をいただきました。

人を大切にする人本経営に共感して行動してこられた経営者やリーダーの皆さんが、
「人的資本」というワードにふれて、
それはいったい何なんだという素朴な疑問をお持ちなのだということがよくわかりました。
今週号では、人本経営と人的資本経営の違いについて、
さらに解析してみることにいたします。

「人的資本」は機関投資家が、
その必要性を認め株式市場に情報開示を求めるようになって注目され出した
ファイナンスの議論、問題と前号でレポートしました。

人を大切にする経営の威力を無視できなくなった投資家

日本では伊那食品工業をデファクトスタンダードとして、
その経営目的を関わる人の幸せの追求におき、
結果として永く好業績を実現している「いい会社」が存在しています。

全体の企業数からみれば依然少数派ですが、年々増え続け、
各業界で快進撃を続けている企業はこの「いい会社」のタイプが多いことが確認できます。

この研究は、人を大切にする経営学会会長の坂本光司教授の多大な功績で世に知られ
「人本経営」という確かな経営のあり方として確立されてきました。

その影響は日本一の企業であるトヨタ自動車の豊田章男社長を
伊那食品工業が教科書と言わしめるまでに及んでいます。

米国でも、ジョンソンアンドジョンソン、リッツカールトン、ザッポスなど
人本経営の特長と符合する経営を体現して存在感を示している企業群があります。

こうした現象が、もはや投資家が無視できぬ現実となり、
「人的資本」の情報開示を株式市場に要求する原動力になっていたのだと推察いたします。

人を資本と捉えない人本経営

人本経営の「本」ですが、これは資本の本ではありません。
人材を利益を生む資本とは考えていません。

そもそも人本経営は上場を目標にしてませんのでキャピタルとして人を捉えていません。
それが本=センター、中心なのだという考えです。

企業経営に近い人(利害関係者)との関係の質をこよなくよくしていくことを目指します。
人との関係の質のよさは、なんといっても「幸せ」の増進に尽きます。

そして、そのことを実現していけば利益は結果としてついてきます。
そのことに疑いがなくなったので、投資家が人的資本経営だと騒ぎ始めたのです。 

迷いなく社員を第一にしてすべての利害関係者の福徳円満を実現し続けてこられた
偉大な人本経営者の力が世の中を変えたのだと思います。

問題は、現段階ではファイナンスとしての「人的資本経営」ですから、
業績軸での議論であるということです。今後、幸せ軸へ発展していくかどうかは不明です。

少なくとも上場企業は今後、
「人的資本」に対して向き合っていくことが必須になってきたことは確実です。

経営陣が、どう向き合っていくかが分かれ目です。
あくまで投資家の目をうかがうのか、
抜本的な経営のあり方として人を大切にする経営の実現へ舵を切れるのか、
正念場といえるのではないでしょうか。

惑わされず人本経営の道を進む

政財界が「人的資本」に刮目し始めたので、
目ざといシンクタンクやコンサルティング会社は、
次々に人的資本に関する経営革新の手法やメソッドを
いかにも真新くみせた商品開発し提供し始めています。

当方では、これを焼き直し商法と呼ぶことにしました。
理念経営のことをパーパス経営と置き換えてみたり、
職務給賃金のことをジョブ型と表現したりしています。

しかし〇〇戦略とか〇〇ストラテジーとか言っている段階で業績軸です。
人本経営は敵をつくらないので戦いません。 

巧みなコンサルタントの口車に乗せられて変な仕組みを導入し、
ステークホルダーと戦いが起きるようになっては、
結局、みんながハッピーになり、企業が永続していくような
「いい会社」へとよく変わることが出来ない陥穽が潜んでいるのです。

すでに人本経営を形にしてきた企業では、
そうした雑音に惑わされることはよもやないとは思いますが、
今また、目先の利益に目を取られるのでなく、
遠くをはかる経営の決断ができるかどうか問われています。

年功序列、家族手当、住宅手当、どこが問題なのでしょう。
それを維持できない経営状況にこそ問題があるのです。
着実に幸せ軸で年輪経営を重ねていきましょう。

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