第896号 トヨタ労災事件続報と人本経営指導現場で起きていることの類似性|2021|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2021/06/14

第896号 トヨタ労災事件続報と人本経営指導現場で起きていることの類似性

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌
新SVC通信 第896号



トヨタ労災事件続報と人本経営指導現場で起きていることの類似性



お伝えしていたトヨタの社員が上司のパワハラで適応障害を患い
自殺してしまった痛ましい事件の続報が報じられました。

本件について、当通信では2019年11月25日にレポートしました。
「第810号 トヨタ、人本大失墜」

塚越寛氏の人を大切にする経営哲学に薫陶を受けていた豊田章男社長のもとで
この事件が起きたことに失望したとこの時は綴りました。
そして、今回の事件についてご自身の口から思いを語ってほしいと念じました。

中日新聞によれば、「新聞報道の直後、豊田氏はすぐに副社長と二人だけで謝罪に赴いた。
今年四月にも豊田氏は再度遺族と面会し、謝罪をするとともに徹底的な職場改善を誓った」
とのことですから、そのことは果たしてくれたようです。

俄かに信じがたいことですが、本件が新聞で明るみに出るまで、
豊田社長のもとに詳細が伝わっていなかったとも記事では書かれています。
これだけの巨大組織になると、風土改革が組織全体に行き渡ることは
そう簡単ではないのだということを思い知られます。

しかし、それが事実だとしても、トヨタで上司によるパワハラがあり
社員が自ら命を落とした労災が発生したという悲劇がなかったことになる訳ではもちろんありません。

前述の中日新聞によれば、トヨタは、遺族の意向を全面的にくみ取り、
パワハラを無くす断固とした組織改革の実行を約束し、
今後5年間、進捗状況を遺族に報告することも明記したといいます。
その対応に遺族は理解を示し、訴訟に至らず和解に応じたようです。

別の記事では、豊田社長は「仕組みは作ったが完成ではない。今後二度と起こさせない、起こる前に止める」
と強調しているということです。
その言葉を信じて見守っていきたいと思います。

その遺族との和解で示した再発防止に向けた取り組みをトヨタはホームページで公開しています。
「労務問題の再発防止に向けた取り組みについて」

相談窓口の充実や精神医との連携強化、就業規則の見直し、管理職への再教育、人事情報の共有など、
パワハラ対策として考えられる施策がずらりと並んでいていますが、
その中で、「あっ」と声を上げてしまった項目がありました。
それは「評価」に関する事項でした。サイトではこう記されています。

「評価基準を見直し、今まで以上に「人間力」のある人材、
周囲へ好影響を与え信頼される力を持つ人を評価します。
加えて、役員、幹部職・基幹職を対象に、360度アンケートを導入いたしました。
対象者の強み・弱みに関する周囲の声を集め、本人にフィードバックすることで、
自らの行動を振り返り、改善につなげてまいります。」

人本経営指導最先端の現場での課題と符合

実は、今、弊社では10年以上、人本経営の指導をしてきた会社で、
まさしく「評価制度」の整備に着手をしているところなのですが、
制度導入にあたって、非常にこだわっている点と酷似しているのです。

周りから一定以上の「人間力」を評価されている者でなければ人事考課者になれない仕組み、
そして、その「人間力」評価は、ランダムに選出される上司、同僚、部下の
複数の社員による他者評価の平均点を採用していく方針を固めたところだったのです。

せっかく人本経営で社風、企業文化が優れてきていても、
人事権という強権を発揮する人事制度が導入され、
一部の権限行使者にその執行が委ねられ曲折して運用されていっては、
いっぺんに人を大切にする経営は吹き飛びかねません。

人本経営には制度より風土が大事です。
そして、制度でも、とくに評価制度はモチベーションにとって諸刃の剣となるものですから、
慎重には慎重を期して導入準備をしなければなりません。

仕事は出来ても自己中心的で他者への思いやりが示せない人材は、
考課者につくことが出来ない仕組みを担保できることが、
人本経営における人事評価制度としてふさわしいと試行錯誤した結果が、
今回のトヨタの打ち出した方針と一致したということは驚きであると同時に納得です。
そして、今後、多くの会社で同様のコンセプトをもった人事評価制度のあり方が
注目されてくることになるだろうとも感じました。

また、やるべき仕事が見つかった思いです。
人本経営を定着推進させる人事評価制度、これを完成させていけば、
一気に企業社会に人本経営を普及できる可能性が広がります。心して前進させていきます。

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