いい会社視察記録

株式会社植松電機


「次にどんな企業が紹介されるのか、とても楽しみにしています。」という声までいただくようになった当シリーズですが、今回もとてつもないことをしている会社を紹介します。

北海道赤平という財政難で苦しむ僻地で、なんと宇宙開発に取り組んでいる町工場があるのです。その会社の名は株式会社植松電機といいます。2000年に父親が細々と経営していた自動車修理の会社に専務(2016年に代表取締役社長に就任)として経営参画した植松努さんが今回の主人公です。2006年12月には株式会社カムイスペースワークスを設立し宇宙開発事業に取り組んでいます。

この植松さんの理念は、『「どーせ無理」という言葉を世の中からなくすこと』なのです。それを実現するために、宇宙開発を目標ではなく手段として行っているといいます。そのココロは『宇宙には簡単にいくことが出来ないから、誰もがあきらめてしまいます。みんながあきらめてしまう夢を「そんなことないよ」と言って実現できれば、あきらめない人が増える』という信念で経営をしているのです。

凄い経営者がまた日本にいました。すでにポリエチレンを燃料にした爆発しても安全なCAMUI方式ロケットエンジンを開発し、人工衛星の打ち上げや全長5メートルのロケットで音速を超えることにも成功し、工場内には世界で3ヵ所しかない無重力実験施設を備えるところまで事業を進めています。

植松さんは、小さい頃から飛行機やロケットが好きで、紙飛行機の作成にのめり込んで、自分で設計して作っていたそうです。そんなことばかりしていたので学校の成績は最低だったそうで、中学校の進路相談で「飛行機やロケットの仕事がしたい」と言ったところ、「ばかじゃないの?お前の頭で出来るわけないだろう?この町に生まれた段階で無理だわ」と進路の先生に言われたのだそうです。「飛行機やロケットの設計は、東大出じゃないと出来るわけがない」というのです。

普通であれば、ここでめげてしまうに違いありませんが、植松さんの考え方が凄いのです。無理だと言われたときに、ライト兄弟が「僕たちは東大に行っていないよ」と心の中でささやいたというのです。そして先生の言葉を無視して、飛行機やロケットの勉強を独学でし続けたといいます。周りからは「そんな趣味は無駄だ!受験に関係のないことをするな!」と言われ続けたそうです。

その後、願い叶って希望の北見工業大学に進学し、流体力学を専攻したのだそうですが、そこで待っていた学問は、なんと馬鹿呼ばわりされながらもずっと続けてきた勉強そのものだったということで、大学では流体力学で苦労することはなく、多くのことを学ぶことができたといいます。そして教授に可愛がられ、結果として希望していた航空機の設計の仕事に就くことも実現させています。


植松さんは、話をするとよく「理想論だよ」と言われるそうです。しかし、「理想論」で植松電機を成り立たせていると言い切ります。「理想」とは、届かないからといってあきらめるために存在するものではないという信念をもち、何かやろうとして、誰かに「どうせ無理じゃないの」と言われたら、「どうやってやるか考えてみて」と言えばいい、そうすると必ず問題は解決すると考えているのです。理念経営を貫く経営者の共通項に「信じる力」の強さということがありますが、植松さんは、まさに、飛びきり強烈な「信じる力」をもって生き抜いていると感じます。ぜひとも学びたい姿勢です。

植松電機は以下の経営方針を掲げているのだそうです。


この意図するところを書籍から抜粋します。

経営的には常識といわれていることをことごとく逆に行っているように感じますが、考え方は真理をついています。真理をついているから、ぶれずに行動が実践でき、そして結果がついてきているのだと考えられます。これこそが「理念のもつ無限の力」であるといえるでしょう。この植松さんが考えている今後のビジョンがまた素晴らしいのです。そして、これだけの信じる力があふれている方ですので、本当にそれが実現され、世の中が変わるかもしれないと期待とともに応援をしたくなってしまいます。

これが、植松努さんの10年後のビジョンだといいます。建設コスト1/10の建築システム、食費1/2、大学の授業料がゼロの社会を本気で作っていきたいと思っているということです。

なんという志の高さなのでしょうか。この夢の実現に向けて、植松電機の隣の土地を購入し、子供たちに学びを体験させる施設をつくるための設備投資を今しているということです。植松さんなら本当に実現させてしまうのではないかという可能性を感じてしまいます。これから、何か一つでも、この壮大稀有な夢の実現に向けて協力が出来ることを発見し、実践していこうと私たちも決意しました。植松電機、カムイスペースワークスを応援していきます。

この植松電機の採用条件がユニークです。

ここまではっきりと来てほしい人材像を打ち出すと、そりが合わない価値観の違う人材を雇うリスクはほとんどなくなるのではないでしょうか。理念経営は採用にこだわるという特色をここでもみることができました。最後に恒例となっている心に残る言の葉を綴ります。


新SVC通信 第264号(2008.11.17)より



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