いい会社視察記録

株式会社オオゼキ


総合スーパーが不振の度を増しています。セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂は、2009年3~8月期決算で上場来初の上期営業赤字に転落したという報告がありました。厳しい消費環境が続く中、20年連続増収増益を続け本年も堅調な実績を出し続けているスーパーがあります。その名が株式会社オオゼキさんです。日経流通新聞の「日本の小売業調査」によると、同社は、ここのところ2年連続ROA(総資産利益率)が第一位に輝いています。同社のROAは9.9%と2位の大黒大物産の7.6%に2ポイント以上も差をつけています。強い経営体質を備えたオオゼキさんは、東京都世田谷区を拠点に食品スーパーを展開しています。以下、会社の概要です。

 創業:    1957年 
 資本金:   15億15百万円 
 年商:    667億79百万円 
 経常利益:  53億20百万円 
 自己資本比率:77.3% 
 店舗数:   30店舗(東京25 神奈川4 千葉1) 
 正社員数:  1,100名

お客様第一主義とは聞き慣れたフレーズですが、オオゼキさんで展開されているそれは半端ではありません。

この会社の職場では、「品切れ」「レジでの待ち」「お客様にノーということ」は、犯罪行為とされています。野菜などの生鮮品でも量が多すぎると言われれば半分や1/4にして販売し、あの商品がほしいとリクエストがあれば明日には品揃えをしているのです。

そんな対応だから店には品があふれています。ある店舗では22種類のトマトが並んでいたりします。たくさんの品が陳列されていてもお客さんは商品選択に迷うことはありません。商品を探している人がいると社員は積極的に声がけをして自分の売り場でなくともその商品があるところまで案内をしてくれます。このためにオオゼキさんでは売り場面積当たりの従業員数は同業他社の倍も配置しているのです。

その従業員は、業界の常識では考えられませんが7割が正社員なのです。レジが混み始めると、レジの担当者でなくともすぐに予備のレジを開けて並んでいるお客様を誘導しています。お客様が喜ぶと書いて「喜客」であり、この心がオオゼキの原動力という理念を徹底して現場で実践しているのです。


わずか30店舗ですが、オオゼキさんには、連日東京都の1%に相当する12万人強のお客様が来店されるほどの人気を誇ります。オオゼキさんの理念は創業者佐藤達男氏と妻正恵さんの手で生まれ育まれてきました。1957年に東急世田谷線の松原駅のそばで乾物店を開店しましたが、客足が伸びずに苦しみます。当時こんな会話があったそうです。「ママ、うちにはいくらお金があったら暮らせるんだい?」「一日250円か、300円ですよ。」「じゃあ、あとは全部、お客さんにあげよう。余計な儲けは少なくして、お客様に喜んでもらおう。」

今日来店してくれたお客様が、また明日もワクワク期待しながら来ていただけることを一心に思い経営をしてきた結果が20年連続増収増益という結果をもたらします。成長率は数パーセントですが確実に前年対比を更新し続けています。無理な経営をしないこのスタイルは、伊那食品工業の年輪経営に完璧に符合する考え方です。前年が経常利益52億円で今年の目標を例えば53億円にした場合、目標を上回ったときにはすべて社員へ還元しているのだそうです。こういう経営ですから経営情報はガラス張りで社員の誰もが共有できる状態になっています。

お客様のわがままを聞き、望みを叶えるためには現場の社員がすぐ対応できるための権限が与えられていることが不可欠です。これについてオオゼキさんは徹底しています。「個店主義」という考え方を貫いているのです。

精肉、青果、鮮魚、酒などの部門ごとにチーフがいて、そのチーフ自身が「この商品をぜひ食べてほしい」といった品を毎朝市場で仕入れをしてくるのです。

この会社にはいわゆるバイヤーが存在しません。この点はなんでも品揃えするという鹿児島のスーパー「A-Z」と酷似しています。30店舗のチーフがそれぞれ買い付けに行きます。そして値付けの権限が与えられています。ですから、同じオオゼキでも店舗によって値段が違うこともたびたび生じるのだそうです。

また店長はお客様から要望を叶えるための決済権が与えられています。全体として店の採算が割れなければ何をやってもいいのです。これについては美容室バグジーを彷彿とさせるものがあります。

他の理念経営成功企業でも多くみられる特長ですが、ここオオゼキさんでも採用には力を入れています。1次面接から社長や現場の社員が同席して、一緒に働きたくなる人を徹底的に絞り込んでいくのだそうです。来年度は大卒50名、高卒100名の新人を受け入れることが内定しているとのことです。50人の採用枠に対して2500人ものエントリーがあったということです。さすがにライブレボリューションさんには及びませんが、学生たちは私たちが考えるよりも人本主義の理念経営を実践している企業に対する関心を高めているということがうかがえます。

採用後の人事管理が圧巻です。配置を希望した部門へもれなく配属を実現させていくのだそうです。自分がやりたいと思った仕事につけるのですから、とてもヤル気になってくれるそうです。そして、徹底的に仕事を教えていくそうです。そして、いずれその社員を目当てにお客様が来店するようになるのだといいます。

ここまでみてきたビジネスモデルは一朝一夕にできるものではありません。よって同業に模倣されることもなくオオゼキさんは唯我独尊で成長し続けているのです。

新SVC通信 第311号(2009.11.02)より



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