いい会社視察記録

日本食研ホールディングス


シリーズとして書いてきました「理念経営実践企業の研究」ですが、今号からタイトルを「人を大切にする経営実践企業の研究」と変更してお届けすることにいたします。

人を大切にする経営の重要性に気づいて、人を大切にする会社づくりのトータルプロフェッショナルと自分の仕事の意味づけをとらえ直してから足掛け丸5年が経ちました。

全国でがんばっている人を大切にする会社の調査発掘も、単なる視察から国の調査事業や研修啓発事業として成長してきました。さらにはベンチマーク事業「壺中100年の会」の活動として、いい会社づくりを目指す志の高い方々との互助パートナーシップ形成の場となるべく四国から始動しました。

その栄えある第1回のベンチマークに選んだ企業が愛媛県今治市にあるブレンド調味料メーカー、日本食研ホールディングスです。地元のみなさま総勢25名で同社へ訪ねて参りました。

経営の民主化を目指すという次世代の会社づくりに挑戦している同社の取り組みに触れ、みなさん新鮮な驚きとたくさんの気づきを得ていただけたようです。

同社では「社員が主役になる経営」を進めています。きっかけは、急成長を続ける中で家族的経営を目指していたにもかかわらず離職率が高くなったことだといいます。

社員を管理しすぎてしまった、業績や企業の発展を主役において働く社員をコストや手段にしてしまった、と気づき、「エンジョイビジネス」という想いで人を大切にする経営に経営革新をしていったそうです。創業者から現在の大沢哲也社長に経営者が変わり、人を大切にする経営へのチャレンジが本格的に始まっていきます。3700人という社員規模でも家族的経営を実践し、社員が主役という経営を貫徹して成果を出しているということは注目に値します。

とうに上場できるところですが、「上場するつもりはない」と非上場への強いこだわりをもっています。同社がビジョンとしている経営の民主化実現の妨げになると考えているからです。それでも社員持ち株制度を実施しています。社員イコール株主となることで自分の会社だと実感をもってもらうためにです。どんな大人数になっても全社員で社員旅行をしたいと執行部は考え、実現させています。かかった費用は8億円。公開企業であれば一般株主の反対で実現は出来なかっただろうと回想されています。これからも社員の幸せの実現を考え続けていく会社であり続けたいという想いをしっかりと確認できるエピソードだと感じました。

学校や就職先は自分で選んでいるのに、いったん会社に入ったら自律性を失い会社の決めた部署で仕事をするようになることをおかしいと考え「叶える人事制度」という取り組みにチャレンジしています。

自律的に主役として働いてもらうために、学校や職業と同じように働く部署を社員が自ら選べるという人事制度です。これは出来そうで出来ることではありません。似た事例としては、スーパーオオゼキに新入社員の配属先を自らが選択できるというものがありますが、人事異動でこれを叶えさせようという試みは聞いたことがありません。所属長が部下にこの「叶える人事制度」を行使できないようにすることはご法度だそうです。もちろん所属を希望した部署に配属が叶うかどうかは配属先の上司が受け入れるという意思表示があって実現します。

唐突に異動の希望が出るのではなくて、社員との対話をしっかりとしたうえで異動希望を確認し、異動が可能となるための目標が設定され、それをクリアしたのちに希望が叶う仕組みになっているとのことでした。当該制度は端緒に就いたばかりで、異動が叶えられた人材のその後のパフォーマンス測定はまだこれからということでした。

社風がよくなければとても成功は難しい人事制度であると考えられます。社内結婚550組という結果から証明されているように、まさしく家族的経営が実現できている同社だからこそ、経営の民主化という高次元の経営課題にトライできていることは間違いないところでしょう。

そうした先進的取り組みが評価され、本年、第2回「四国でいちばん大切にしたい会社大賞」に輝きました。

新SVC通信 第481号(2013.04.30)より



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