いい会社視察記録

株式会社ランクアップ


「人を大切にする経営」実践企業の研究第37弾です。

今回は、東京は銀座にある化粧品「マナラ」を開発販売している株式会社ランクアップを紹介します。

創業は2005年。業種柄ということもあるでしょうが、同社で働く40数名の社員はほとんどが女性です。そして半数の社員は子育てをしながら仕事をしているワークキングマザーです。

経営者の岩崎裕美子さんは、社員たちが3人以上の子持ちとなることを推奨しています。ですから離婚している社員もほとんどいません。仕事と家庭を両立させるために残業がほとんどない状態をつくりあげました。

創業以来増収増益で、現在の売上高はおよそ60億円、経常利益率は10%超、自己資本比率も安定経営を実現できる高い水準を実現しています。

人を大切にする人本経営を実践し、かつ業績が伴っているという理想的な経営をしているランクアップですが、ここまで順調にきた訳ではありません。バリバリのキャリアウーマンだった岩崎さん、それまでの仕事ではハードワークを厭わず、長時間労働を前提に成り立っている環境となっていました。そのため社員の定着率が悪く、2年くらいで離職してしまう状況が繰り返されていました。その理由が長時間労働にある、と当時のボスに進言しますが、一向に耳を傾けようとしません。業を煮やした岩崎さんは、ためらいなく結婚して子育てが出来る会社をつくろうとランクアップを創業しました。

化粧品の開発、販売という事業を始めたのは、それまでのハードワークで自身の健康も害されていたと気づき、本当に肌によいものを世に生み出し、同様に困っている女性たちを助けたい、という思いからでした。「自分がいいと確信を持てるものでなければ作らない」と石油系合成界面活性剤無添加など、それまでの業界の常識や採算を度外視した発想で商品開発にチャレンジし、大変な試行錯誤の結果「マナラ」というオリジナルブランドのクレンジング商品を生み出し、それを主製品としてここまで伸びてきました。

社員がまず同社の製品の消費者であり、改善提案が日常茶飯事で行われ、クオリティの高い商品を作り続けることに成功してきました。

長時間労働のない職場をつくるということが創業段階からの思いでしたから、労働時間的には働きやすい状態を実現していました。ところが、事業が成長し、採用を拡大していくと社員たちからは会社に対する不平不満、愚痴が止まず、暗い職場になっていったそうです。岩崎社長は「こんなはずではなかったのに」と悩みます。そして、とうとう職場でのストレスが原因と考えられる体調不良者が発生しました。

それまでは自身の職業経験をベースに、かなり強烈なトップダウンのリーダーシップを展開していました。しかし、それでは社員たちが共感共鳴せず、病に倒れる社員まで出てしまうという現実に直面し、社員たちがやらされ感のない状態をつくることが必要だと感じるようになりました。

社員たちが目的をもってやりがいを感じるためには、経営理念が重要だと気づいたそうです。

まずは役職者と合宿形式で対話する機会をつくっていきました。ご自身の経営に対する思いや、どういう会社にしていきたいか、という価値観の共有を半年くらい続けていったそうです。それまできちんと自分の考えを伝えていなかったせいで社員たちがバラバラだったと反省し、まず自分自身の行動を改めていったのです。

対話型の社風づくりは役職者から一般社員へと広げていきました。挑戦を何より大事にする企業文化をベースに人事考課制度を導入しました。挑戦目標を掲げ、それを達成するために常に考え、変わるという意識を社員の心に落としていきました。リーダーとメンバーの間で文字通り「課題を考える」考課の時間を2か月に1回、1人当たり30分取っていきました。やがて社員のモチベーションも向上していき、いまでは社員満足度80という水準にまで達するようになりました。

子育てと仕事の両立ができるように、特に配慮していることはベビーシッターの活用促進とその経費負担です。これによりこれまで育児休業した社員の全員復帰が実現しているとのことでした。

新SVC通信 第576号(2015.03.09)より



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