第1113号 「関係の質」の高め方
2025.12.15
調査によると、30~50歳代の社会人のうち9割以上が「疲労感(主観的な疲れ)」を感じていることが明らかになり、最も大きな心理的負荷の要因としては「社内の人間関係」が挙げられています。
当通信でも、たびたび「関係の質」というワードを使ってきたとおり、人本経営の実践は、まさしく仕事で関わる人間同志の「関係の質」を向上させていく取り組みです。健全な人間関係形成に問題を感じている職場には、ぜひとも人本経営の実践を改めて強く推奨したいと感じます。
人間関係の「関係の質」はいかにしていけば、高められるでしょうか?
バーン(Berne,E.)の研究に始まる交流分析では、自分と他者のそれぞれに対して肯定的であるか、それとも否定的であるかによって、人の基本的な構えを次の4つに分類しています。
- 自己肯定し他者肯定
- 自己肯定し他者否定
- 自己否定し他者肯定
- 自己否定し他者否定
4)の状態では、自分も相手も何もかも嫌だということで関係の質が構築されるはずもありません。3)の状態は、「自分なんて」という卑屈な自分が存在してこれも関係の質は高まり様がありません。
2)は「自分は頑張っているのに」と相手を見下し批判的になりこれも関係の質は高まりません。
こう考えると、関係の質を高めていく状態は1)の自分もOK、相手もOKのこの状態でしか叶わないということがハッキリします。
自己開示から自己肯定は始まる
自己肯定感が高まるためには、自己開示ができる職場環境があることがまず必要です。そして、開示されたことに対する共感が他者から得られる状態ができて自己肯定感は向上していきます。このことを体感していただくために、前号でご紹介した「社風をよくする研修」では多種多様のワークを参加者に体験していただき腹落ちしていただく時間を取ります。必ず実施するのが交流型オフサイトミーティングのジブンガタリです。15分から20分、ご自身の生い立ちやこれまでの人生で影響を受けたこと、転機、あるいは成功談、失敗談を語っていただきます。このワークについてはさらに知りたい方はこちらをご覧ください。15分から20分、集中して相手が自分のことを傾聴してくれているという体感は、確実に自己肯定感を高める時間となります。そして、また相手のジブンガタリを聴き合うので他者の人となりの理解促進が図られ相手に対する尊重感が増進するという他者肯定が生まれます。よって参加者の多くは、研修の前と後では「相手との距離感がぐっと近くなった」という感想で溢れます。研修で得られたその感覚を現場の職場に持ち帰って、通常のミーティングでも相互に聴き合うことを意識していってもらえるよう投げかけていきます。
繰り返すことの重要性
もちろん職場に戻れば、いろいろな現実が待っていて、理想通りにいかないことは当然のように発生してきます。そこで、自己肯定、他者肯定の重要性を繰り返し体験する社風をよくする研修の時間が有効になります。たとえ同じ体感であったとしても、経験値によって気づきのレベルは格段に深くなっていきます。そして、いい会社、いい職場づくりは、決して問題が起きないようにすることではなく、起きてくる問題を、より皆にとって肯定感が高められるようにいかに解決を図れるかという意識を植え付けてもらうように示唆を与えていきます。あとは皆さんが知行合一の実践をしていくことで、支援し合える利他の精神が発揮されてくるようになります。そうすると確実に、見えないはずのその職場の空気感は目に見えてよくなってくるのです。こうして働く幸せを実感できる職場がつくられます。こうなると断然、疲労感は感じなくなる日々がやってくるはずです。
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