第1107号 幸せ軸経営の拡散が急務

第1107号 幸せ軸経営の拡散が急務

パーソル総合研究所が「はたらく人のウェルビーイング実態調査 2025」を公表しました。これによると、「はたらく幸せ実感」「はたらく不幸せ実感」を経年で見ると、2025年(6月時点)は、2020年(2月)と比較して「(はたらく事を通じて)幸せを感じている人」の割合が3.1pt低下し40.8%、かつ、「幸せを感じていない人」の割合が7.9pt増加し31.7%だったということです。

残念ながらこの5年でわが国の就労者の幸福度は高まっておらず、むしろ不幸度が増しているという結果です。5年前の調査時点は、コロナ禍直前期であり、コロナ禍の影響によるところではありません。コロナ禍による影響は2023年6月の同調査で幸福度36.4%(20年比マイナス7.5pt)、不幸度(20年比プラス3.9pts)と確認できます。そこから回復したものの、コロナ禍前より幸福度が低くなっているのが現状ということです。

新しい資本主義政策の結果、幸福度は高まっていない

ここ数年で就労者に少なからず影響を及ぼしているのは、岸田、石破政権による新しい資本主義実現政策であることは確実でしょう。政府が実施したら助成金までつけるという大手を振ったため日本的経営を捨ててジョブ型雇用という成果主義を導入していった企業がこの調査によると2年間で「実施している・した」企業が41.5%から54.9%と実に3割増加していることがわかります。そして、ジョブ型雇用導入後、50歳代を中心に希望退職というリストラをしかける大企業のニュースが盛んに報じられています。エン・ジャパンの転職者分析レポートによると、2024年の50歳代の転職者数は18年の5倍以上となっており、今後、さらに数が増えることが見込まれています。この方々が、ハッピーリタイアメントして悠々自適に第二の人生を歩んでいるのなら、結果オーライといえるかもしれませんが、現実は甘くはありません。

容易な筈がない50歳代の転職

希望退職応じた社員がその後どうなったのか、2025.9.29 AERA DIGITALがレポートしています。「500社応募したのに全滅…… 50代後半の大手医療機器メーカーのエリート社員に立ちはだかった過酷なシニア転職市場の現実」とタイトルされたその記事によると、前職で1000万円だった給与を300万円にまで下げて再就職先を探したが、500社に断われ続け9か月が経過しようとしており、シニア世代の転職活動は苛烈を極めているという。転職に成功できるのはほんの一握りで、これが実態で現実なのでしょう。ジョブ型雇用についていけず失職し思うに再就職できない中高齢者が多ければ、不幸度が高まる結果になることも頷けようというものです。

子に影響する親の幸せ感

そうした世相を反映してか、不登校の状態にある小学生・中学生が過去最多の35万人になったというニュースも報じられています。そして、それを理由に親の4人に1人が“不登校離職・休職”に追い込まれているという。冒頭のウェルビーイング調査では、幸せに働く親の姿は確実に子に好影響を与えているとも報告されています。人本経営に成功した企業では、ご子息が幸せそうな親をみてその会社に就職してくる事例がよくありますが、そういうことなのでしょう。

少子高齢化社会で企業が果たすべき社会的責任として、高齢者の雇用の安定は非常に大きい課題となっていることは疑いようがありません。従いまして中高齢者のリストラでなく雇用の拡大を実現しようとする企業に価値があります。それが幸せ軸経営です。また不登校の子供を減らすためにも、やはり幸せに働く労働者を増やしていくことが重要だと感じざるをえません。今、幸せ軸経営の拡散が急務であると改めて感じ入ります。天命として授かった人を大切にし人々の幸せを量産していく人本経営の伝道にさらに磨きをかけて邁進していく所存です。(了)

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