第1104号 壺中100年の会in豊岡・城崎 体験記Ⅰ

第1104号 壺中100年の会in豊岡・城崎 体験記Ⅰ

いい会社の現場で幸せ軸経営の素晴らしさを全身で浴びて堪能するベンチマークツアー「壺中100年の会」を10月8日から9日の二日間、兵庫県、豊岡、城崎で行いました。

今回は、東海バネ工業、湯楽、そしてコウノトリ文化会館を訪ねました。

東海バネ顧問、渡辺良機さんの語り

東海バネの視察は2回目となります。その経営の素晴らしさは1070号でご紹介していますので参考にしていただければと存じますが、今回は現在顧問に就任されている前社長の渡辺良機さんにご講話を賜り、なぜ今の東海バネが形成されていったかという件についてのお話があり、また大変勉強になりました。渡辺さんは、先代の3人娘の次女の婿の弟という間柄で同社とご縁ができました。娘婿の男性陣は後継者になることを拒みますが、創業来、赤字になったことがない、ウチにはいい職人がいる、お客様に恵まれているといったことを先代に告げられ、請われて断り切れずに社長に就任します。

社長に就任し、現況の同社を改めてみるに、暗い更衣室や本当にただの作業するためだけの作業服など、とてもやる気になるはずがない酷い職場環境に接し、これを変えていこうと決意します。

しかし、最初の半年間は素人同然の渡辺さんに、職人たちは冷たく、こっぴどくやられ人心把握に悩んだそうです。辛さにたえられず社長を辞めようと考えますが、先代からヨーロッパの視察旅行に行きなさいと言われ、気分転換程度の軽い気持ちで参加しました。ここでその後の同社を大きく変える2つの気づきが与えられます。

東海バネを方向づけた2つの気づき

まずドイツのバネ屋に行きました。手づくりしていて同社とよく似ていて親近感をもちます。ひとつだけ違っていたのはオーナーがいかにもお金持ちという風体だったことです。これにはみすぼらしい東海バネの社長の姿と大きく違い、強烈な印象を受けたそうです。話を聴くと、そのオーナーは、きちんと自社の儲けを見込んで受注していると説明していました。日本では自社の利益はカスカスで値引きが当たり前の取引をしていたので、思わず渡辺さんは質問をしました。「見積もりが高いと言われたらどうするのですか?」その質問に対して不思議そうな顔をして、そのオーナーは「だったら、その仕事は受けないだけです」と返答しました。ここで、注文取りたいばかりに値引きするなどお客の言いなりになっていては駄目だと気づくのです。

次にフランスのバネ屋に行きました。そこでは50人のワーカーのうち1/3が女性でした。これもその理由を尋ねると「給料が高いから職に就いている。人が嫌がる、やりたがらない仕事だから給料高くしている」と回答がありました。それはモノの道理だと二つ目の気づきを得ます。返ったらわが社も給料を上げる。帰国し、「やはり値引き商売はあかん。どうしたら値引きしないで買ってもらえるか、これを考えよう」と社員に働きかけを試みますが、ベテランは端から無理という反応でした。そそこで2人の若手とプロジェクト立ち上げ一生懸命考えていきました。

安売りからの脱却という思いを実現しようと多くのコンサルタントに相談しましたが、そんなことできるはずないと全く力になってくれません。途方に暮れていると、ある方がいちはやくIT化により顧客情報を集約、提案型の営業を実践し大繁盛している酒屋を紹介してくれました。視察すると店主は「うちは商品を売っていないシステムを買ってもらっている」とその秘訣を知りました。渡辺さんは、これだと閃き、過去の営業情報、受注情報をPCでもれなくデータ化し、バネ1本のお客様でもリピートの際には完全に再現可能な体制を整えていったのです。今でいうビッグデータです。これにより「「単品のばねのお困りの方々のお役に立つ」ことを使命に徹底的な多品種微量生産で生計を成り立たせていくという経営理念が整い成功していったのです。~以下次号

このコンテンツの著作権は、株式会社シェアードバリュー・コーポレーション(以下SVC)に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、SVCの許諾が必要です。SVCの許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。


サービス一覧

講座日程一覧

お問い合わせ