第1094号 業界の常識にとらわれず幸せをメイキングしよう

第1094号 業界の常識にとらわれず幸せをメイキングしよう

社会のあり方が大きく変わっています。よって企業社会では、業績軸から幸せ軸への転換が重要になってきているとこれまでお伝えしてきました。マネジメントの根幹を変えることは本当に重要です。そして、また、事業のあり方も大きく転換をしていく企業が躍進をしてきています。

削らない歯医者

大阪にあるヨリタ歯科では、ホスピタリティの高い人気歯科医院を開設後にすぐにつくり事業は軌道に乗りましたが、寄田幸司院長はハタと考えました。世界長寿国のわが国の国民はなぜ高齢者に自分の歯が失われている人が多いのか。いかに高度な治療や情熱を注いでも、虫歯や歯槽膿漏がなくなりませんでした。ここでやっとわかったのです。歯を削れば削るほど、治療すればするほど、新たな虫歯や治療が増えることを。わが国は国民皆保険となり安価な料金で病院にかかることができます。歯科医院もまたそうです。コンビニの数以上にあるといわれる街の歯医者さんは患者さんが来ると疑問なく歯を削ります。その業界の常識がまちがえているのではないかと寄田先生は立ち止まったのです。世界、とくに欧米では社会保険が整備されていないので歯医者にかかるとコストがかかるため家庭では虫歯にならないように予防歯科の概念が発達していました。日本にも予防歯科の概念が必要であるとヨリタ歯科は削らない歯医者となることを決意し邁進していきました。30年も前のことです。なかなか社会には受け入れられなかったことでしょうが、生涯、自分の歯で美味しく食事ができる人生をメイキングできる我々のクリニックは「ワクワク楽しい歯科医院」と理念を掲げ邁進しました。徐々に支持が広がり、一日50人患者がきたら成功といわれる歯科クリニックで一日150人を超える患者に大成功を収めています。そして業界にも予防歯科を広げることに熱心に注力し、今や、街で予防歯科、審美歯科やホワイトニングを掲げる同業者を見つけるのは容易になるくらい普及させたのです。業界の常識に染まって非常識な行動をしなければ今のヨリタ歯科はなかったでしょう。

盆、暮れ、正月を休みにした旅館

働くスタッフが幸せな旅館業を営もうと「我々は幸せをアートする」を経営理念に掲げた長野県にある岩の湯。秘湯ブームにも乗り、順調に岩の湯は発展し始めます。しかし、経営者の金井辰巳社長は、「盆やクリスマス、正月は誰だって家族と過ごすことが幸せに決まっている。そこを働くことが当たり前の職場でまともな人は働くことは出来ないだろう。自分が幸せにならなければ人を幸せにすることは出来ない。」と考え、なんと年末年始・クリスマス・盆という、旅館業では書き入れ時期を休日にする旅館にしました。こんな決断をしたら、社員のモチベーションが高くならない訳がありません。「休む分、平日は満室にしよう」と、やりがい・働きがいを高めてお客さんに向かっていきました。高い顧客満足を生み出す社員たちの働きで、岩の湯はホームページを持たないばかりか、広告宣伝費をほとんどかけていないにもかかわらず、全国各地からわざわざ訪れる「こだわり客」で、ほぼ1年先まで全18室の宿は予約で一杯となっているのです。それはあのコロナ禍でも変わらずの結果となりました。

事業も社会の幸せを増進させることにフォーカスする

同様の事例は非常に多いです。規模の拡大、急成長を良しとした高度成長の社会では幸せは置き去りにされていましたが、社員の成り手、お客様が先が見通せないレベルで減り続けていく現代では、幸せをメイキングする事業であることで希少価値となるそれらの人々に選択されていきます。業績軸にそまった業界の常識にとらわれていると幸せを創造する仕事が生まれてきません。自分たちの仕事で今以上に社会に幸せを増やすにはどうしたらいいのか、今、真剣に考えたい経営課題です。

このコンテンツの著作権は、株式会社シェアードバリュー・コーポレーション(以下SVC)に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、SVCの許諾が必要です。SVCの許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。


サービス一覧

講座日程一覧

お問い合わせ