第1093号 業績軸のコンサルタントにご用心
2025.7.22
以前に経営のプロ「コンサル会社」の倒産が過去最多になっていることをお伝えしました。
→1067号 高度成長の頃、7割の企業が黒字だった企業社会は、失われた30年を経てほぼ逆に6.5割が赤字に喘いでいます。そして、いつまでも赤字を連れ流しておれず、最盛期の企業数と比較して4割の会社が消失(倒産・廃業等)しています。
この理由ははっきりしていて、わが国を襲う少子高齢化の波が年々深刻化しているからにほかなりません。少子高齢化ですから、総人口は減少に転じたばかりですが、産業社会に影響を及ぼす15歳から64歳の生産年齢人口がこの四半世紀でほぼ東京都民数に匹敵する1200万人が減じていることが企業経営を苦しめている要因です。この層は働き手であり、重要な顧客層であり、そしてまた次代を託す後継者層な訳です。この人手不足、顧客離れ、後継者難という人を取り巻く三重苦をしのげない企業が社会からの淘汰を余儀なくされているのです。昨年も出生率は過去最低となりましたので、あと20年は生産年齢人口は減り続けていきます。しかもその速度はこれまでの四半世紀よりも3分の2のピッチの速さで進行していくことが確定的です。
処方箋は明確
深刻な状況下にあって、いかに経営を持続させていくかということについて、当通信では、その処方箋は人を大切にする人本経営のあくなき実践であるということを説いてきました。そして、気づき行動に移され、企業経営のあり方を業績軸から幸せ軸へ舵を切り、10年近く実践をし続けていただいたクライアントでは、良い人材の採用の実現、低離職率、そしてファンの増大による結果としての好業績という永続のための三種の神器を手に入れられた事例が目に見えて増えてくるようになりました。また、世の中の企業でも同様に好調な会社の事例では、ある時から「人本経営」や「幸せ軸」に経営のあり方を変えたと報告される報道も近年、目にするようになってきました。
しかし、まだ2割程度の企業しか、変革はしていないと考えています。依然、8割の企業は売上、利益を追い求めることを目的とした業績軸の経営に埋没しています。それらの企業は苦しんでいるからコンサルに救いを求める訳ですが、それらのコンサルが目先を変えた業績軸の手法のコンサルしかできないので、救えず共倒れしているというのが冒頭の現象になっているということです。ここに事実をお伝えします。
某コンサル会社で起きたこと
100人のコンサルタントを抱えているコンサルファームで起きていることです。2020年に人的資本経営という言葉が登場し、一気に注目を集めました。これに目をつけた岸田前政権は「新しい資本主義実現会議」という政策を打ち上げました。しかし、ここで人的資本経営の実現にジョブ型雇用の導入が有効という全く合理性なく誤った御用学者の説を採用し普及をさせてしまいました。この顛末については当通信でも1079号などで詳説いたしました。間違いを犯したのです。幸せ軸経営の重要性に気づいていれば、政府が肝入りになろうが、それはおかしいと論じられますし、絶対にそれに乗ってはダメだとクライアントに指導が出来ます。しかし、そのコンサルファームでは上層部が人的資本経営というワードがバズっている今こそビジネスチャンスと現場のコンサルタントたちにイベントや集客セミナーをしろとけしかけました。「当社の何を売るのか」と現場の人間がたずねるとその上司は「そんなものはうちの評価制度だよ。適当にアレンジしてそれっぽく見せるのが君の仕事だ」と言われたというのです。同社の評価制度はどう考えても成果主義で業績軸を助長させてしまう仕組みです。これが実態なのです。こんなコンサル受けても決してよくならないし、企業を救えるはずもありません。どうか皆さま業績軸のコンサルタントにはくれぐれもご用心ください。
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