第1083号 ジョブ型雇用を巡る一連の事実で、確信的に見えてきたこと
2025.5.12
ジョブ型雇用の導入に伴う大量降格で自殺未遂者も発生したオリンパスの子会社の続報で、今度は、希望退職に応じたら「あなたは降格者でない」と退職金の割増が拒否され、単なる自己都合退職扱いで処理される社員が複数発生していると報じられています。これでは希望退職ではなく、指名解雇であり解雇権の濫用とみなされる可能性が濃厚です。多くの社員を不幸のどん底に落としているこんな会社に「ジョブ型を率先して導入し政策への協力に貢献した」と笑顔で感謝状を渡す岸田総理の写真も紹介されています。記事
当時の会長のようですが、いくらなんでも表彰式にノーネクタイで出席とは、やはりこの会社の異常さが伝わってきます。そういう会社なのでしょう。
ジョブ型雇用政府推奨企業の日立の今
政府推奨のジョブ型人事指針で2番目に見本として紹介されている日立の社員からの要請書が切実、鎮痛です。2024年 6月24日付で社員有志から労組委員長に発布されたものです。以下、要約です。
- 日立では、この10 年間で、連結子会社数(国内)は 275 社から 100 社に激減し、従業員数(国内)も 19 万 3,638 人から 11 万 3,737 人に急減している。
- 一方で海外の従業員は増えていて、会社は、事業再編は強化であると言っているが、リストラによる「企業栄えて国内事業滅ぶ」利益第一経営から、職場と生活を守り社会的責任を果たす経営に転換するよう労組に役割を発揮していただきたい。
- 「ジョブ型人財マネジメント」は、究極の成果主義による自己責任の働き方。優秀な人財だけを求める人事制度であり、評価基準にそぐわない人は、排除され社外転職に追い込まれる危険性がある。労使協議での賃金体系や報酬等については、労働者の生活を守る基準として決めるべき。
- 日立製作所は、毎年自民党に多額の政治献金をおこなっている。「2022 年は 3500 万円献金した。目的は業界団体と健全な関係で企業経営に係わる政策実現のための活動、企業の社会的貢献の一端」と社は回答するが、政治腐敗の根本に企業団体献金があることは明白、直ちに政治献金を止めるべき。
経団連会長の企業で今行われていること
住友化学は4月30日、人員体制の最適化を図るため2025年3月末までに連結従業員数の約1割に当たる約4000人の人員削減を行うと発表しています。2024年11月30日時点で40歳以上かつ勤続5年以上の社員を対象に希望退職を実施するということです。この会社の会長は十倉雅和氏で経団連会長です。経団連は毎年約24億円の政治献金を自民党側に続けています。企業による政治献金の目的を問われ、「政策を金で買う」との批判が付きまとうなか、十倉氏は「政策提言とか言っちゃいけないんですか?」と批判を一蹴したといいます。記事
確信的に見えてきたこと ~ 今何が起きているのか
ここまで考察してきたように、新しい資本主義実現会議で、ジョブ型雇用導入推奨の政策が打ち出され、その導入後、希望退職というリストラが大手を振る大企業が続出しています。この事態は次のように考えることが自然だとしか思えなくなってきました。
業績低迷 → 存続のためリストラしたい大企業 → 企業献金を積んで自民党に政策誘導要請 → 御用学者によるジョブ型推奨(業績向上でなく雇用流動化が目的) → 政権による政策支援(新しい資本主義実現会議=グレートリセット) → 大企業がジョブ型という新成果主義導入 → ついてこられない下位労働者に退職勧奨(希望退職制の実施) → 中高齢者の大量リストラに成功
国ぐるみとは俄かには信じたくありませんが、こう考えることで起きている事実の辻褄が合います。しかし、これで事態は挽回するでしょうか。断じて否です。この時代に人を大切にしないあり方が持続するはずがないからです。経営者の皆さん、改めて問います。幸せ軸に生きる覚悟は出来ていますか?
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