第999号 全ての中小企業経営者が問われるビッグモーター事件の教訓

第999号 全ての中小企業経営者が問われるビッグモーター事件の教訓

全ての中小企業経営者が問われるビッグモーター事件の教訓

典型的な業績軸経営破綻の構図としか思えない事件が発生しました。

理不尽なノルマの設定、達成するために仕事の4割で不正、
上司に部下の「殺生与奪権」を与えるという強烈なボスマネジメント、
店舗前の公道の街路樹を枯葉剤を散布して撤去、、、

どんどんこの会社の横暴な経営実態が明るみになっています。
まさしく二宮尊徳がいうところの「道徳なき経済」そのもので、
その結果はズバリ「罪悪」となってしまいました。

45年の社歴があり社員数は6000人にもなるということです。
よくもまあそれだけ続き規模を拡大できたものだと驚きますが、
息子の後継者が会社をダメにしてしまい、
それを父親の創業者が制御できなかったことが原因のようです。

今後は倒産か経営陣総入れ替えで民事再生していくことになるしかないでしょう。
業績軸に拘泥し失敗した会社の末路はみな惨めです。

「失われた30年」というのは虚妄

戦後50年続いた右肩上がりがバブルではじけ、
少なくとも50年は続く右肩下がりの「新しい現実」が出現していると認識することが正解です。
生産年齢人口(15~64歳)の激減がすべての企業に襲いかかっています。
ピークだった1995年以降、25年間で実に東京都民人口をはるかに超える
1500万人の労働者と消費者が日本から消失しています。

記事のように「拡大路線」という過去のビジネスモデルから脱却できない企業が
いよいよ限界を迎えているのではないかと悟らされるニュースです。

この15年間、人本経営の現場を見続けてきたので、
未だにこのような奇妙奇天烈な経営が存在しているとは本当に衝撃でした。
しかしながら実感としては、依然世の中の8割の企業は業績軸の経営であり、
記事のとおり氷山の一角なのかもしれないとも改めて思い知らされました。

同様の事件が増えてくるとの筆者の予測は
現実化する可能性が高いのではないでしょうか。

業績軸を誘導したコンサルタントにも大きな問題がある

元凶は、組織的な暴走を許した
「幹部には目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」とした
人を大切にしない経営人事マネジメントにあるといって差し支えないでしょう。

これを指導したのは武蔵野の小山昇氏です。
昨年、あの“沈没事故”知床遊覧船の会社も指導していました。
これは偶然ではないでしょう。

同社の触れ込みは、「指導する会員企業750社のうち400社以上が過去最高益を達成」とありますが、
業績軸で一瞬業績がよくなっても罪悪をもたらしては元も子もありません。

「生殺与奪権」なんて身の毛もよだつ言葉を使って絶対服従の組織をつくれれば、
どう考えても性悪説が蔓延していくだけです。

ただでさえ人事権という強権を発揮する評価制度に
一部の権限行使者に絶対服従させるとは唖然とします。
どれだけ現場の上下の大事な人間関係の質を毀損したことでしょう。

人が人を正しく評価などできる訳ないので、
より納得ができる組織風土をつくっていくことが重要です。

人を大切にする組織づくりを実践できている企業は、
制度より風土を何より大事にしています。

評価や規則はあるにはあるが目安にすぎないとたおやかです。
けれども働く社員一人ひとりは
会社からいわれなくとも自ら過去最高の自分を実現するための目標を定めて
人格識見、技量を磨き続けていきます。

いわばアスリートばかりの社員になって、
その仕事の総和が会社業績になっていき年輪を重ねます。

今こそ声を大にして言う「人本経営はしなければ始まらない」

少なくなる一方の社員(労働者)、お客様(消費者)に選ばれる企業でなければ
この先存続できなくなってきていることは明らかです。

選ばれるのは、人を大切にする経営の実現によって、
人々に幸せをもたらすことができる企業です。

ゆえに、幸せ軸の人本経営は「したほうがいい」ではなく
「しなければ始まらない」時代になったと痛切に感じるのです。

業績軸=「人口が増えていく」という右肩上がりの環境があってこそ成長できる幸せな成功体験
幸せ軸=「人口が減っていく」という右肩下がりの環境にあっても成長していく幸せな成功体験

本通信が1000号発行を目前にこの事件が起きたことに
運命と強い使命感を感ぜずにはいられません。
人本経営の伝道をさらに愚直に推し進めていきたいと改めて心しております。

今こそ、経営者は不退転の覚悟で業績軸から幸せ軸へ経営革新を行う時です。
特に中小企業ならなおさらではないでしょうか。

【お知らせ】――――――――――――――――――――
次号で新SVC通信は、発刊1000号となります。

これを契機に、さらに人を大切にする人本経営について
伝道していく使命を色濃くしていきたいと考えています。

つきましては、しばらくの猶予期間を経て
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配信させていただくことを予定しております。

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