第996号 西軽精機ベンチマーク~結果がついてきた人を大切にする施策

第996号 西軽精機ベンチマーク~結果がついてきた人を大切にする施策

西軽精機ベンチマーク~結果がついてきた人を大切にする施策

今年も伊那食品工業を訪ねるベンチマークツアーを敢行しました。
恒例の視察レポートをお届けして参ります。
今回は株式会社西軽精機さんにも行ってきましたので
今週はまずこちらの会社さんをご紹介いたします。

「日本でいちばん大切にしたい会社」に出会い開眼

同社はNC複合自動旋盤による、医療機器、産業用機器部品の製造業を営んでいます。
社員数は33人。上原大輔社長は二代目の経営者です。

当初は業績を上げることが企業経営の目指すところという考え方で経営をしていました。
毎年のように10%から20%超える離職者が発生していました。

2009年のリーマンショック時には、売上は前年比64%に落ち込みました。
上原社長は「なんで俺が一人で仕事をこなしているんだ。
社員はどうして協力してくれないのか?会社がつぶれてもいいのか?」
と怒りを社員にぶつけていました。

そんなことをしていても事態は改善するはずもありません。

転機は2012年に書籍「日本でいちばん大切にしたい会社」に出会い読了したことです。
読んでいくうちに、自分の経営がいかに間違っていたのか、
社員を大切にしない会社に未来はない、ということを思い知ったといいます。

開眼した上原社長は「今まで自分の経営方法は間違っていました。
これからは社員を大切にするいい経営をします」
と社員に謝りました。

業績軸から幸せ軸へ転換をしていったのです。

まず社員に向き合おうと社員意識調査の実施や全社員との面談を開始しました。
社員からの辛辣な意見や要望に触れ、
そうしたことを行うたびに
40℃近い熱が出てうなされたということです。

それでも少数の社員は
業績軸から幸せ軸へ変わろうとしている上原社長に共感共鳴してくれました。

そうした同調者に勇気づけられ、
この社員のために「いい会社」をつくっていこうと前へ前へと進んでいきました。

離職者ゼロを実現した社員に届いた言葉

坂本光司先生にも直接会い意を決した上原社長は、
2014年のある日朝礼で「誰も辞めさせない、辞めたい様な会社にしない」と宣言しました。

そして、実際に交通事故で障がい者になってしまった社員の雇用を継続する行動をしていきました。

こうした本気度がようやく社員の心に届き、
この宣言以降今年に至る9年間は
離職者ゼロという劇的な改善に成功していきます。

この間、実施した人を大切にする施策は以下のとおりです

有給消化率95%/年3回全社員面談/35歳以上人間ドック全額補助/
1,000万円かけて空気清浄機導入/定年60~70歳※実質定年無/年収1.5倍計画/
1日7時間労働制/1人1万円図書費用補助/1人1万円寄付金補助/全社員ガン保険加入/
全社員持ち株会制度※条件アリ/全社員養老保険加入/短時間正社員制度/
ありがとうカード/年間休日124日※有給消化日5日含む/ボランティア休暇制度/
年3回賞与※7年連続実績有/みんなで就業規則をつくろうプロジェクト

こうした施策を積極的に展開した年とそうではなかった年とで
明確に業績という結果に差異が出ていると上原社長は結果を振りかえっています。

やった年は110%程度、業績は上向き、
積極的に展開しなかった年前年並みの業績に終わりました。

それでもこれだけの施策を継続した結果、
2012年とくらべ2022年には売上は1.59倍、経常利益は2.57倍と
確実な事業成長を果たしているのです。

効果の高かった施策

施策ごとに効果を検証していて興味深いのですが、
社員がその施策で幸福度が高まったと回答しているベスト3は、
35歳以上人間ドック全額補助(92%)、全社員養老保険加入(90%)、全社員ガン保険加入(90%)と
健康保持増進に寄与し安心安全に貢献できる施策となりました。

また1人1万円寄付金補助(90%)という社会貢献意欲を充たす取組や
1,000万円かけて空気清浄機導入(89%)という環境整備も
高い幸福度をもたらしているということがわかります。

有給休暇消化率95%という取組も目を見張りますが、
有給休暇の積極的消化は社員が主体性を発揮して自分事として仕事に向き合う
良い習慣づけになると指摘されていました。

とても参考になるのではないでしょうか。

人を大切にする経営が行き渡っていったことで
「こんな居心地の良い会社が無くなったら困る!!」
と会社事を自分事として社員が
主体的に行動をしてくれるようになったと上原社長。

ご自身の体験から、
「どんな業種でも、人を大切にする経営を実践していけば必ずよくなる」
ということを経営者やリーダーに伝えたいと熱く語られていました。

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