第967号 人的資本経営は「社員を大切にする経営」ではないらしい

第967号 人的資本経営は「社員を大切にする経営」ではないらしい

人的資本経営は「社員を大切にする経営」ではないらしい

センセーショナルな見出しの記事が目に飛び込んできました。

コラムの筆者は、
人的資本の国際基準ISO30414を日本ではじめて認証され
人的資本経営コンサルのリーディングカンパニーとなったとみられる会社の経営者です。

ほう、どんな内容かと興味津々で
結構な分量のレポートを拝読させていただきました。

記事では「「人的資本経営」はそもそも何を目的とした考え方なのか、
なぜ今、世界的に注目されているのか。
人的資本経営はその辺が曖昧なままに、
一時的なバズワードとして捉える類いのものではない。
最も大きな勘違い。

それは人的資本経営を「社員を大切にする」というテーマとして捉えてしまうことだ。
人的資本経営は戦略上の取捨選択を行う基準として
「人への投資」を用いて、事業成果を高めるための経営戦略である。

義務化への対応や情報の開示だけを優先するのではなく、
いかに自社の成長につなげていくのか」
と冒頭で問題提起しています。

しかし、そのあと肝心のどこが
「社員を大切にする経営」と違うのか全く考察がなく
拍子抜けに終わりました。

結局、内容はよく指摘されている人的資本経営の基本概念を
改めてサマリーしたものに終始されていました。

この会社は確かに離職率は10%もあり
障がい者雇用も法定雇用率より大きく下回っていて、
当通信が提唱している人を大切にする人本経営の姿からはかけ離れていると
同社の開示された人的資本情報から感じていましたが、
トップが言い切ってしまいました。

人本経営と人的資本経営は違う

人本経営と人的資本経営は違うとは、
これまでも当通信でも指摘してきましだが、
そういうことなのであると
人的資本経営推進派からはっきり打ち出された格好です。

それはそれで全く違和感はありません。

しかし、厳然たる事実があります。
それは、人本経営を極めていれば、
とてつもなく素晴らしい人的資本情報が開示できるのは
確かであるということです。

もっとも人的資本経営では、
その開示結果の良し悪しでなく
自社の経営戦略に沿った人事の結果であると
ストーリー展開できることを重視します。

例えば離職率10%は
「辞めやすい風土を作っている結果」ということで
okとされてしまいます。

今後、人本経営を実践している会社の人的資本経営の情報開示をサポートして、
人本経営の標準的人的資本の形を
世に知らしめていきたいと考えています。

人的資本経営は短期的に企業業績を追い求める結果、
不安定な経営となってしまうことを改めて、
中長期的に人に投資することで
安定的な経営を実現できる企業であることを
投資家に判断してもらうために
普及が推し進められてきました。

人本経営は年輪経営で長期安定経営を推し進める経営です。
投資を誘発しようなどという目的は人本経営に全くありませんが、
その開示される人的資本情報は投資家に注目され、
今後確実に一つのスタンダードになってくると確信しています。

人的資本経営は長期の業績軸

わかってきたことは人的資本経営は短期でなく長期の業績軸の経営であり
人件費はコストでなく投資としてとらえようというものであるということです。

これに対して人本経営は幸せ軸であり
ヒトの幸福感を最大限にすることをセンター=人本位の経営であり、
ヒトモノカネを同列として扱う人的資本経営とは明確に立ち位置が違います。

しかし、長期の業績軸であるものの
人的資本経営にまともに取り組んでいけば、
この筆者は否定していますが、
経営のあり方は「人を大切にする経営」に近づいてくる訳で、
その良さを実感することになります。

その結果、どこかの時点でもっと踏み込んだほうがいいと
幸せ軸に覚醒してくる企業も確実に増えてくるだろうと
当通信では予測しています。

だとしたらこんな風に違うと肩ひじ張らず、
はなから「人を大切にする経営」を実践していくことのほうが何倍も価値があり、
それが王道にほかなりません。

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