第966号 伊那食品工業視察記20222 社員とは、管理職の役割とは

第966号 伊那食品工業視察記20222 社員とは、管理職の役割とは

伊那食品工業視察記20222 社員とは、管理職の役割とは

伊那食品工業へ11回目の視察をさせていただきました。

いくたびに新たな気づきを与えられ
人本経営伝道の力が付け加わってくることを実感します。
レポートいたします。

何が目的かで変わってくる

これまでも必ずご指摘されていることですが、
目的が一番大事で「社員が幸せになる」ことが同社では目的で、
これによりどういう会社にするかが決まってくると
塚越英弘社長は明快です。

「お金がすべてではないが、ないよりあるほうがいいので
毎年給料水準を上げていくのは当たり前と考えている。
しかし、ないものは出せないので
皆が給料を増やせるように頑張ろう」
と心ひとつにしていると一切の迷いがありません。

近年、パーパス=存在意義が経営に重要と叫ばれ始めていますが、
「今さらおかしい。それがあるから会社がある。
本来そこを考えないといけない」と
バッサリ痛快に語られていました。
全く同感です。

社員はアスリートである

同社の年輪経営は有名ですが、
毎年さらには中期の利益などの会社として数値目標は一切ありません。

社員たちはそれぞれが自分の目標を決めていて達成しようと
努力行動しているのです。

本来、目標とはそういうものではないですかと
塚越社長は会場の聴衆者に投げかけられていました。

そして「スポーツのアスリートはそうでしょう。
人に云われてやっていませんよね。
人に云われたこことはなかなかやらない。
やるときは自分で考えて、やる気になったとき。
どっちが楽しくやりがいをもてるか明白です」

幸せになるという目的から考えると、
そういう仕事の進め方になり、
そして確実にそのほうが成果が出ると笑顔で語られていました。

世の多くの会社では「目標管理制度」がスタンダードですが、
会社から目標が設定されてしまうのは、
その人のもてるパフォーマンスを
思う存分引き出せないやり方であると
考えさせられる言及をされていました。

目標達成が大事なのではなく、
達成してよくなることでこれを考えること、
目標に向かってではなく、
今年より積み上げて少しずつ良くなっていく、
すなわちアスリートとして自己新記録を塗り変えていくのが
年輪経営という訳です。凄いの一言です。

伊那食品工業の社員は全員がアスリートだったのです。
目標管理制度のような普通の会社の普通のやり方は間違いではないが、
杓子定規にそうしなくたって構わないと達観です。

そして、こうした考えを経営者ではなく
社員が共有するために前号でご紹介した
「みんなでやる」取り組みが
仕掛けとして実践されているのです。

管理職の役割は社員の生活に気を配ること

人本経営では支配ではなく支援型リーダーが上司の仕事と提言していますが、
そのことについて見事に明確にわかりやすく
今回塚越社長よりご指摘いただきました。

その役割はメンバーの生活に気を配ることだとご指摘されていました。
これ以上ない明瞭な表現だと感嘆してしまいました。
お聴きした瞬間にワークライフバランスは、
なんて陳腐で実効性に乏しい言葉だと感じてしまいました。

生活に気を配るためには、
相手の家庭状況や今起きていることに慮ることをしなければなりませんし、
そのための対話や傾聴は
日々行動されることになるでしょう。

そして、自立自発的に利他的なリーダーの行動が伴ってくるのです。

仕事の都合より家庭の事情を優先していいという人本経営では
1丁目1番地の企業文化の開花のために、
これ以上ない上司への行動規範だと感心させられました。

年功序列の人事評価制度を続けている

今回、参加者に社労士が多く、
どのような評価制度をしているのか質問が飛びました。

「評価制度?あるにはある。
しかし、評価結果についてあまり重視されていない。
正しい評価なんてできる訳ない。
査定なんてするのもされるのもつらい、嫌なこと。
誰にだっていいところはある。
だから当社は年功序列で賃金があがる。
「全員家族」をめざしているのだから
差をつけないのは当たり前。
頑張っている人が腐る?そんなことはない。
優秀でない人も優秀な人を際立たせるひとつの能力だと心得ているから。
全員が毎年昇給しているから不満出ない」

幸せ実現のため、目先でなく遠きをはかると
年功主義に勝る人事制度はありえないのだと
改めて確信させられました。

ホンモノに学ぶこと、実に大事なことです。

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