第928号 人を大切にする会社の「ISO30414」情報開示基準Ⅰ

第928号 人を大切にする会社の「ISO30414」情報開示基準Ⅰ

人を大切にする会社の「ISO30414」情報開示基準Ⅰ

「人的資本経営」の国際基準として提示されたISO30414。
企業における人事・組織・労務に関する情報を開示するためのガイドラインとして
11項目58指標が最低限の開示情報とされています。

上場している大企業では、この対策に大わらわのようですが、
ここまで人を大切にする経営をしっかりやってきたのなら、
まったく問題なく対応できるように感じています。

人を大切にする実践度の開示という観点から、
どうISO30414の各項目を開示していけばよいのか、
今週号でチャレンジしてみます。

◎=大企業・中小企業ともに対外開示を推奨される指標
〇=大企業が対外開示を推奨される指標

1.倫理とコンプライアンス

(〇提起された苦情の種類と件数 〇懲戒処分の種類と件数
◎倫理・コンプライアンス研修を受けた従業員の割合)

この項目は、まず労基法を遵守出来ているかということでしょう。
労基署からの是正勧告数など公開してほしいです。

そして、社員からのパワハラ苦情相談件数も大注目です。
パワハラで訴訟された、懲戒処分したなどは大減点対象です。
関連研修受講割合は特段むずかしくないと思われます。

2.コスト(◎総労働力コスト)

総労働力コスト=支払給与総額+諸手当総額+従業員に支払われたその他支出+外部労働力コスト
という算式が推奨されているようですが、
人件費はコストでなく投資ということなら、
労働分配率の経年推移数値のほうが遥かに
その企業の人に対する思いは推し量れると感じます。

3.ダイバーシティ(〇年齢 〇性別 〇障害 〇その他 〇経営陣のダイバーシティ)

これはわかりやすい指標です。
年齢階層別雇用割合、男女別管理職割合、障がい者雇用率など、
人本経営をしている会社なら、若者から高齢世代までバランスのいい採用、
女性に偏見のない状態、障がい者雇用に熱心などの
平素の人事マネジメントでいかに人を大切にしているか
実態を大いに示すことができそうです。

その他とあるので、
「定年年齢」「正社員比率」「育児介護休業取得及び復職率」「性別実態賃金カーブ」なども
どんどん開示していきましょう。

4.リーダーシップ(〇リーダーシップに対する信頼)

この項目は定性的なので数値化が難しい項目ですが、
開示方法としては、適切なツールを用いた従業員意識サーベイに基づく平均スコアとされています。
前号でお知らせしたSVCの「社員意識調査」における
上司に関する調査結果を開示情報とされてはいかがでしょうか。
上司との「関係はよいか」「手本となっているか」「計画性があるか」
「チームワークに気を使っているか」「支援されているか」をズバズバ確認していますので
この項目の指標として申し分ないかと存じます。

5.組織風土(エンゲージメント/満足度/コミットメント)

これも前号でお知らせしたとおり、弊社の社員意識調査結果が有効です。
設問にある「経営理念への共感度」「会社に愛着を感じている度」
「会社に将来性を感じている度」、そして「今後も今の会社で働き続けたい度」について、
社員の平均充足度が60%以上出ていれば、
十分にエンゲージメントしていると判定できます。

6.健康・安全・幸福(〇労災により失われた時間 ◎労災の件数(発生率)◎労災による死亡者数(死亡率)

死亡事故はもちろん、1ヵ月以上の離職を余儀なくされた労災は重度労災です。
過去5年間に重度労災が発生しているかどうかも開示すべきでしょう。
項目に幸福とあるのに、労災押しでは残念です。
これも弊社の社員意識調査による社員の平均幸福充足度をぜひ開示していただきたいです。

また、健康経営の認証など公的懸賞の受賞歴なども有効な開示情報になるのではないでしょうか。
日本でいちばん大切にしたい会社大賞受賞は最高に目を引くことでしょう。
健康という視点からは、人間ドックの会社補助率やがん保険加入率、禁煙手当の有無なども
面白いかもしれません。

ISO30414は11項目あります。この続きは来週としますが、
やはり人を大切にする人本経営を実践してきた企業なら、
いくらでも情報開示できると、こうして検証してみて改めて実感します。

上場企業は人的資本経営なんて固い言葉でなく、
社員の幸せ増進のため幸せ軸の人本経営に舵を切りますと言い切って実践していった方が、
よりよい情報開示ができるようになっていくと考えますが、いかがでしょう?

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