第924号 人間力を重視した人事マネジメント 人本主義の人事考課制度構築論3

第924号 人間力を重視した人事マネジメント 人本主義の人事考課制度構築論3

人間力を重視した人事マネジメント 人本主義の人事考課制度構築論3

人間力を重視した人事マネジメントの構築

<採用>

採用においては、能力よりも人柄という採用方針でいると、
人間力が高い人材が増えていく結果をもたらします。

実際、才よりも徳を重視するとして、学歴や資格取得に重きをおかず、
人としての魅力が感じられるか、自社が大切にしている価値観に共感しているか、
一緒に未来を築いていきたいと思えるかといった観点にこだわり採用を進めている企業は
人本経営実践企業にはことのほか多いです。

<教育>

また、すでに考察したように、教育面で人間力の涵養を重視していくと、
職場での関係の質を向上させることに長けた人づくりが実現し、
絆感のある組織やお互いを思いやる風土を醸成していく結果をもたらします。

技術面、知識面の教育プログラムだけでなく、定期的、持続的にマインドセットを繰り返して、
良心を養う学びの場を、あの手この手でつくる努力をしている事例にふれることも
やはり人本経営実践企業ではよくあります。

弊社で開催している「社風をよくする研修」は、
まさしくその目的で実施していて
各社のお役にたてているのではないかと自負しております。

<評価>

さらに、評価において、人間力の高さを基準にしていくことで、
人格識見を磨こうとする社員が増えていくことや、昇格に一定の人間力の基準を設定することで、
良識ある人事考課者の選定ができるといった
バランスのいい社内人事体制を実現する結果ももたらしてくれる効果が期待できます。

人事評価制度として、人間力を評価項目として、
あるいは重要な人事施策の判断軸として用いられているケースは、まだそう多くはありません。

トヨタがこれに取り組むとしたように、今後多くの企業でも、
人間力を評価制度にリンクしていくことは注目されてくることになるだろうと予測されます。

情意評価の工夫がテーマ

業績評価、能力評価、情意評価という3つの指標から、
人事評価制度を構成していくことが一般的です。
このバランスをどこにウェイトづけしていくかで、その人事制度はタイプ分けされていきます。

業績面にウェイトをおくと成果主義となりますし、能力面だと能力主義といわれるようになります。
情意面に重きをおくということは、これまではあまりみられる形態ではありませんでした。
勤怠の優劣、規律性や協調性といった勤務態度などが評価の対象です。

今後は、今回テーマにしている人間力の評価対象として、
一段とフォーカスされてくる可能性が高いと筆者は考えています。

人を中心にとらえ、幸福を増大していくことを目的とした経営理念を展開していくときには、
社員一人ひとりの人間性を成長させていく人材育成の要は
人間力の向上にほかならないからです。

ただし、業績や能力の評価のように上司が部下に対する垂直方向だけでなく、
多面的に個々の社員の人間力が磨かれるような仕組みになってくると考えています。

それは、単なる評価制度という意味合いにとどまらず、
リーダーの人間力を高めることにもなる教育制度的な面も
同時に併せもつようになってくるでしょう。

どのように人間力を評価していくか

それでは、どのように人間力を評価していけばよいでしょうか。

評価というからには、物差しが必要になります。これには、ひとつアイデアがあります。
人本経営を実践していくプロセスは、人を大切にする経営理念を明確に据えて、
理念浸透のための日常での行動指針をつくっていきます。

迷ったときに理念に戻れる価値基準を体系化するのがセオリーです。
それらは、行動規範、信条=クレド、ミッションステートメントなどと呼称され、
10~20前後、文章化されていきます。

この価値基準を守り行動していくと人を大切にする経営が実現できると考える訳ですから、
この行動をよく実践できている人は人間力が高いという結論が得られます。
そこでこれを人間力評価の物差しとして活用していくのです。(つづく)

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