第920号 パワハラ労災と認定される基準

第920号 パワハラ労災と認定される基準

パワハラ労災と認定される基準

2022年4月より改正労働施策総合推進法(以下、パワハラ防止法)が、
中小企業にも適用されてきます。

法改正に伴い厚生労働省はパワハラによる労災と認定される新基準を定めました。
すでに大企業には新基準が適用され、
トヨタ自動車で過去に労災ではないとされた事案が
高等裁判所で労災認定されるという逆転判決が示され、
10月1日にこの判決が確定されたため
大きく流れが変わってきています。

日本を代表するこの会社に続き、
みずほ銀行、佐川急便、中電工、三菱商事など堰を切ったように
企業内パワハラ労災訴訟が続発しています。
もうこの流れは止められそうにもなく、
2022年4月からは法の適用が拡大してくる中小企業にも大きく広がること必至の情勢です。

■パワハラ労災認定新基準

負荷表では、その事案が発生した状況、内容、程度などから、
負荷の度合いを「弱」・「中」・「強」と区分けされていて、
「強」にあたると労災と認定されます。

評価表によると上司から、次のような精神的攻撃があると労災とみなすとしています。
 
 ・人格や人間性の否定(必須要件ではない。あると労災認定されやすくなる)
 ・業務上明らかに必要がない、または業務の目的を大きく逸脱している精神的攻撃
 ・必要以上の長時間の叱責
 ・他の労働者の面前で大声での威圧的叱責

ほぼ「中」と「強」では同様の表現が用いられています。
何が違うかというと、行為が反復、継続していない場合には「中」、
執拗に繰り返されていると「強」と区分けされています。

また上記のアンダーライン箇所は「中」に記載がありません。
そして行為が反復、継続していなくとも、
会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった場合には
「中」から「強」へ引き上げるとしています。

判断は非常にファジーです。新基準をどう考えていけばいいかは、
現実に発生する事件で判断していくしかありません。
そこで今、継続的に新基準施行以降の事件で労災かどうかの判定を分析しています。

まだ事例が少なく、断定はできかねるところですが、
2、3のケースから「執拗」とされる期間は、6か月ではセーフで、8ヵ月ではアウトとみて取れます。
ただし、人格攻撃が認められると7のケースから5カ月でも労災と認定されています。

労災と認められなかった3のケースも、ご遺族は直ちに控訴していますので、
今後の動向を見守る必要があります。
確定しているのは1で、人格攻撃はなかったとしても、
他の労働者の面前で大声で週に1回程度叱責される状態が10カ月続き、
精神障害をきたし自死したことはパワハラによる労災であるとされています。

いずれにせよ、新基準が適用されてくる今後については、
パワハラが疑われる事案があり、社員が自死する、精神障害を発症するという事態になった段階で、
会社は負けととらえておいていただきたいと存じます。

決して、このような事件が発生する余地を残さないように
人を大切にする人本経営の実践に余念なきようよろしくお願いいたします。

このコンテンツの著作権は、株式会社シェアードバリュー・コーポレーション(以下SVC)に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、SVCの許諾が必要です。SVCの許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。


サービス一覧

講座日程一覧

お問い合わせ