第899号 人事コンサルタントを信じるな

第899号 人事コンサルタントを信じるな

人事コンサルタントを信じるな

のっけから挑戦的な表現をさせていただきました。
人事労務の専門家として活動している自己否定をしてしまっているように感じられるかもしれませんが、
わたし(小林秀司)は、今まで自分をコンサルタントだと思って仕事をしてきたことがありません。
いい会社づくりの支援をするプロフェッショナルと胸を張って言います。
役割をわかりやすく表現するために、いい会社づくりの「水先案内人」と好んで自己紹介しています。

経営や人事をよくしていくための変化は、
内部からでないと実効性は期待できず、根付きもよくないことは明白です。
十人十色、会社も十社あればそれぞれです。
にもかかわらず、コンサルタントと称する輩は、
こうすればうまくいくと「やり方」をことさらに強調して、当てはめようとします。

コンサルタントの欺瞞 欧米がスタンダード、日本は遅れている

コンサル系のシンクタンクがジョブ型人事制度に関する企業実態調査の結果を公表しました。

それによると、ジョブ型人事制度を、「導入済み」または「導入検討中」と答えた割合は合わせて57.6%。
今後も「導入しない」とする割合は28.5%ということです。
そして、いかにも変化しないと遅れを取ってしまうと危機意識を煽っています。

紋切型ですが、「○○制度は欧米では主流、グローバル基準に御社の経営人事システムも合わせましょう」
と切り出すのが常套手段です。
そして、年功序列、終身雇用に対する限界や否定がセットになります。
今回のジョブ型人事制度についても、まったくお決まりのこのパターンです。

本質的な問いかけをいたします。年功序列や終身雇用は悪なのでしょうか。
答えは明確に否です。伊那食品工業はじめ人本経営に成功している企業は、
程度の差こそあれ、この二つの特長は歴然と認識でき、
それゆえに持続可能性の高い会社づくりが実現し、永続の道を歩み続けているのです。
世界において日本が圧倒的に100年企業を輩出しているという事実を見失ってはいけません。

バブル経済崩壊後、30年間で、多くの企業が赤字になりました。
その理由が年功序列や終身雇用にある、という認識をしていると本質を見失い、
事態はますますよくない方向へ進んでいってしまいます。

正しい問いかけは、
「なぜ、わが社は、年功序列や終身雇用が継続できなくなってきているのか」ということです。
そうすると、今の時代に必要とされる魅力的な商品開発が出来ていないことや、
そういう商品をつくり出そうと社員の目が輝いていないことなど
根本的な「あり方」に問題があると気づけることが多いはずです。
その根本の問題解決は、短期的な成果を出すための人事制度の見直しで実現できる訳がありません。

人事制度は何のために存在するのか

残念ながら、前述の調査では、ジョブ型を導入済み、または導入検討中の企業に導入目的を聞くと、
「従業員の成果に合わせて処遇の差をつけたい」が最も多く65.7%と回答したと報告されています。
間違っていると断言します。

何のために人事制度があるのでしょうか。
わが社が大切にしたい経営理念、そこから派生してくる企業文化や社風をよりよくしていくために
評価といった人事考課制度が機能していなければ、本末転倒で百害あって一利なしです。

このシンクタンクのジョブ型人事制度について書かれた
「日本的ジョブ型雇用で労使関係はどう変わるか?」と題した別のレポートでは、
「人事制度の変更は組織文化を変更すること」と言い切っています。認識が根本的に間違っています。
組織文化を変更するのでなく、よりよく浸透定着させるために人事制度がなければ、
その改革がうまくいくはずがありません。
もっともらしい、コンサルタントの甘言に乗せられないよう、十分に注意してください。

ふたたび前述の調査結果に戻ります。
ジョブ型人事制度を「導入しない」とする割合は28.5%で、
その理由は今の人事制度が自社にあっていると最多です。
今、わが国の黒字企業の割合は概ね3割といわれていますが、
導入しないとした企業割合とほぼ一致しているのは偶然の一致ではないでしょう。

最後に、ジョブ型雇用について言及します。
概念は、「仕事に対して人を割り当てる」ものです。
この時点で人を中心にすべてを考えている人本経営とは、水と油です。
早晩、導入した多くの企業で行き詰まり、
数年先には、そんな言葉もあったねという現実がまっていることでしょう。

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