第894号 「待つ」ということ、それが支援型リーダーの急所

第894号 「待つ」ということ、それが支援型リーダーの急所

「待つ」ということ、それが支援型リーダーの急所

人本経営の指導先企業の現場のリーダーから、
「待つ」ということについて考えさせられている
という声が複数届きました。

支援型リーダーとしての行動を明確に意識しているからこその実感でしょう。
対話を重ね、傾聴し相手の状態が理解できるようになり、
さらにここから相手に成長してほしいとこちらは考えています。

けれども思うに任せず、相手は望ましい行動をしてくれません。
この時、職位をつかって指示命令を下し、
相手に行動をさせることは、もちろん可能です。
しかし、それでは、こちらも相手も成果は最高でも1止まりです。
1.2やそれ以上には及びません。

こちらは現状維持でクリエイティブなことをする時間を奪われ、
相手は言われたことだけをこなすという結果になるからです。
相手に考えて行動してもらうようにはかるのが「待つ」ということです。

日本理化学工業・故大山泰弘会長の名言

人を大切にする経営を貫いて大業をなした先達も、
「いい会社」づくりのプロセスで、同様の悩みをもっていたのでしょう。

日本理化学工業の故大山泰弘会長は、ご高書のなかでこう回想されています。

「人を育てる—実に骨の折れることです。時間はかかるし、辛抱もしなければなりません。
それでも、私は「待つ」ことを大切したい。
小さな成長に眼を向け、励まし、支えることで、その人は必ず育っていく。
そして、「待つ」ことによって、私たちは「絆」という大きな果実を得ることができる」

重度の障害のある方たちを何十人も、
健常者顔負けの職人に育て上げた実績のある大山さんの言葉には
説得力と重みがあります。

種を蒔いたからといって、土の中から、すぐに芽が出てくるわけでないことと似ています。
ちゃんと土壌を整え、肥料と水も十分に与えたと自信があるのなら、
あとはまいた種が発芽してくることを待つしかありません。

「待つ」ことで相手も自分も成長する

この待っている時は、間違いなく相手が思考と行動の質を高める時間です。
そして、その時間は同時に支援型リーダーとしての自分の人間力が成長する時間でもあるのです。

心の器を広げることをしないと「待つ」ことはできません。
待てたということは、自分の心が成長し人間力が増進したという証でもあるのです。
小さいころ、明日、芽吹くかなと鉢植えに植えた花の種の変化を楽しんだように、
メンバーの成長を楽しむという感覚で「待つ」ことをしていきましょう。

小さな成長に眼を向け、励まし、支えることだと大山さんは教えてくれています。

「小さな成長」
それはまるでまいた種が、鉢の中の土を少し盛り上げている状態ということでしょう。
メンバーが昨日とは違う行動にトライしようとしている姿を見過ごさないようにと心していきましょう。

「励まし」
芽吹いてきたら「お、出てきた。いいぞ」といったように、声がけが大事だということです。
たかが声がけ、されど声がけです。
いい対話、コミュニケーションの始まりは、日々のこの声がけからです。

「支える」
まさに支援ということです。
相手がしてきた行動が正しければ、「すごい、出来たね」という声がけは自信を生み、
さらに行動を前進させるでしょう。
行動が今一つ、あるいは違ったとしても、チャレンジについては認め
「その調子だ」と再び思考と行動の質を高めていくように促していきましょう。

大山さんは、「人は必ず育つ」と明言されています。
リーダーとして「待つ」行動を信じて実践してきましょう。
そして、その成長により、「絆」という大きな果実が得られるといいます。

「待つ」ことで、「関係の質」が良質化し「思考の質」と「行動の質」が磨かれ、
最良の「結果の質」がもたらされるということに他なりません。
素晴らしいですね、最高です。

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