第888号 これから30年、「自走する組織」の生成が命運を握る

第888号 これから30年、「自走する組織」の生成が命運を握る

これから30年、「自走する組織」の生成が命運を握る


わが国が高度成長を謳歌し、「ジャパンアズナンバーワン」と称賛されていた1970年代、赤字の企業は30%でした。オイルショック、バブル崩壊、リーマンショックといった大きな経済環境の変化に遭遇し、その割合は70%に悪化しました。リーマンショック後、さすがにそれまでの経営のあり方では持続しないと認識した経営者が増えたことが理由と考えられますが、トヨタが伊那食品工業に影響を受けたと考えられる2010年頃から赤字割合は改善に向かい、66%程度にまで減じてきました。一方、企業数はバブル崩壊以降漸減し続け、1986年の535万者から2016年の359万者へと減少の一途を辿ってきています。

そして、今、長引くコロナ禍が、企業社会の行く末に暗雲を垂れ込め始めています。統計は遅れて出てきますので、現時点では赤字割合そして企業数共に、一段と悪化していることは想像に難くありません。再び赤字企業割合は70%台に悪化し、継続を断念し廃業していく企業はさらに増えていくことでしょう。実はコロナ以前にも、内閣府は企業数の減少を織り込んでいました。2040年に企業数が200万台へ減少する見通しという見解を示しています(「フィナンシャル・レビュー」平成29年第3号)。

政府が企業数が激減していくと想定している根拠は、いうまでもなくわが国の少子高齢化状況にあります。とりわけ生産年齢人口(労働者層15~64歳)の減少は深刻です。総務省統計局『国勢調査報告』等によれば、戦後、増加を続け1995年にピークの8726万人に到達した生産年齢人口は、それ以降は減少を続け、2018年には7545万人になり、実に1200万人近い労働者と消費者が日本から消失しています。今後、さらに2500万人減り、2050年にはついに5000万人割れと予測されています。

15~64歳ですから、社会の中核をなす労働者、消費者が、そして後継者となる経営者が6割しかいなくなる世界に対峙しているのが今なのです。バブル期をピークに6~70年間、その状態にある訳です。つまり、高度成長経済社会から漸減成長経済社会に、ありていに言えば、右肩上がりから右肩下がりの環境下へとわが国は完全に変貌したというのが前提です。そして、コロナ禍がこの環境変化を促進させているというのが、現在地となります。

当通信では、わが国の70年周期説を何度なくレポートして参りましたが、リアルに実感するようになってきたという感がしてなりません。企業経営者は、この先30年間を見据えて、今、行動をしていくという視点を決して欠いてはならないと肝に銘じていただきたいと心から願うのです。

■さらに人本経営に突き抜けていくこと

「わが社は、すでに業績軸から幸せ軸へ、経営のあり方を変え、手応えを感じている」という経営者やリーダーの方は、本当の勝負はここから始まります。

バブル崩壊後から、今日までの30年間は経営者が主役でいられる時代でした。つまり、自らが率先垂範して、けん引役になることで、組織をまとめあげて結果を出すことができる環境があったということです。しかし、上記で見た予測をふまえるならば、世の中は、まだ右肩に下がり切るプロセス、山で言えば7合目までに下山してきたにすぎないのです。

これからは、これまでしてきたことがさらに社会に通用しなくなることを想定しておかなければなりません。今回のコロナ禍を想起してください。リアルでの集会ができなくなるということを、たった1年半前に誰が想像しえたでしょうか。そして、それならばとオンラインでビジネスの可能性を広げることに誰がチャレンジしていますか?苦労しながら対応していると回答される経営者の方もおられるでしょう。しかし、多くの社員が自律自発的に難題に対峙し、突破口を切り開いてくれなければ、厳しかったのではないでしょうか。

もはやカリスマの時代は終わりました。一人のカリスマがいてやりくり出来る時代ではなくなっています。全社員、一人ひとりが主役となり、経営者のように最大パフォーマンスを上げられ、社長がいなくとも自走していく組織を生み出していくことが、これからさらに厳しくなる右肩下がりの環境下では一大経営課題となってきます。そのためには一人ひとりの社員に人本力を宿し、自ら点火をしていけるよう導いていくしかありません。さらに人本経営を突き抜けていくことが求められてきています。

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