第882号 「働く人の資本主義」 出光佐三に学ぶ

第882号 「働く人の資本主義」 出光佐三に学ぶ

「働く人の資本主義」 出光佐三に学ぶ


「働く人の資本主義」という書籍があります。戦前、戦中、戦後のいずれにあっても、その時代が支配する権力や同調圧力に屈せず、人間尊重という、言うは易く行うは難い崇高な信念をぶれずに貫き通した出光興産創業者、出光佐三の対談録です。

その物語は「海賊と呼ばれた男」というタイトルで近年映画化され、多くの人に知れ渡ることとなりました。実際にその生き様は破天荒で、派手なドラマとして仕立てられるにふさわしい内容ですが、その原動力となった根本の思想哲学は、コロナ禍にあって、今、私たちが確かな経営のあり方として改めて刮目したい、人を大切にする人本経営に通底するところが多々あると認識できます。もちろん、時代背景がありますので、現代という視点から修正が必要な部分はありますが、ここで再考していくことは大いに意味があると考えています。

■出光の根本の力は「お互いに助け合う、仲良くする力」

佐三は、資本主義、社会主義、共産主義といったイデオロギーの争いに人間が振り回されるのは滑稽だと喝破しています。

「いかなる主義にもいいところはあるが、人間が考え出したものだから完全な主義はない。だからいいところはとり、悪いところは捨てて活用しなければならず、とりもなおさず、それをやるのが人間である。ところが今日では人間が主義の奴隷になっているのが実情。世界の人々が求めている福祉はお互い仲良く助け合うことで、人間の働く意味がそこに出てくる。人間は働かなければならない。しかも、お互いのために働かなければならない。自分のためのみならず人のために働く。そこに真の福祉がある。そして人のために働くなら能率をあげなければならない。能率をあげることでは資本主義が最も適している。しかし資本家の搾取という欠点がある。であるから資本主義から資本家の搾取をとってしまえば能率主義となる。一方、社会主義・共産主義は働く人を尊重するところはいいが、社会主義は国営で非能率、共産主義は悪平等で人間性が無視される。社会主義・共産主義の働く人のためをとり、能率主義の資本主義と組み合わせると働く人の資本主義ということになる。」

人本経営では、株式を上場することは眼中になく、社員持ち株制を採用している事例が多いということを何度かレポートしてきましたが、佐三流に言えば、それで「資本家の搾取を取る」ということを具現化させているのだと改めて気づかされます。

■心の安定こそ真の福祉である

物心両面の幸福を実現していくことを掲げる経営者が増えています。その通りでけっこうなのですが、卵が先か鶏が先かの議論があるように、どうこれを実現していくかについて、明確に考えをもっている経営者は少ない気がしています。これについて佐三は明確です。

「今、昔に比べ文明、文化は非常に進歩して物質的に豊かになっているから、平和に仲良くやっているかというとそうではない。自分の権利、自由ばかり主張し対立、闘争が起き、人間が物に引きずり回されて物の奴隷となり、心の福祉は失われている。衣食足りて礼節を忘れているのが現状。人間がまず第一であって、物は人間の共同生活を営むうえにおいて必要であるから、それを活かして使うということ。享楽は生活の不安定を招き破滅。人間には神や仏のような立派な面とそうではない面がある。これを神性と獣性と呼ぶ。できるだけ獣性をおさえて、神性を伸ばすように努力していかなければならない。人間がこういう矛盾性をもっている以上、第一義的なものは心の福祉であって、物の福祉は第二義的である。」

その通りだといわざるを得ません。利他的な心が宿っているところにお金が回り始めることで、より世のため、人のために事業活動も展開していくことになることは明白だと感じられるからです。佐三は「清廉潔白」「責任感」を心の礎にしているといいます。どの角度から誰にみられてもやましいことがなく無私の尊い姿が清廉潔白、責任感とは人のため国のため命がけでやることだと明快です。(つづく)

「働く人の資本主義」出光佐三に学ぶシリーズは、今後、断続的に取り上げていく予定です

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