第879号 2021最新人本経営概論 後半

第879号 2021最新人本経営概論 後半

2021最新人本経営概論 後半

■お客様

モチベーションが高められた社員と社外社員がつくり出す商品、サービスが次に向かうのは「お客様」です。

「おお、すごい」「そこまでしてくれるのか」「やっぱり、この会社の商品は違う」「感動した。また必ず来るから」「高くてもやっぱり買ってしまう」等々、お客様は感嘆の言葉を口にして、最高の笑顔になってくれていることでしょう。

ここで気づかされますが、顧客満足、さらに期待を超える顧客感動は、社員・社外社員が生み出しているということです。ですから、本当にお客様のことを考えるのであれば、社員第一主義が鉄則であるということに帰結するのです。

パワハラまがいの上司にこき使われ、この職場で働くのは嫌だけど生活のために言われたことだけはやろうとしている社員に、お客様が感動するような商品やサービスをつくり出せるはずがないのです。つまり、日々の関係の質が悪いと思考が劣化し、行動も消極的になり、言わずもがなな結果しか出てきません。それをまた上司が諫めたら、さらに関係の質は堕ち、最後は離職や労働トラブル、あるいは精神疾患発症という最悪な結果になってしまうかもしれません。

話を「お客様」に戻しましょう。感動感嘆してくださったお客様は、繰り返し購入活動をしてくれるヘビーユーザーやロイヤルカスタマーになっていきます。そして、ファンという状態にまで会社との関係の質が高められると、「口コミ」で新たなお客様をたくさん導いてくれるようになります。つまり、最高の営業をしてくれる訳です。これが結果としての業績につながっていきます。伊那食品工業の塚越寛さんが残された「会社経営の要諦はファンづくり」とは卓越した名言ですが、まさしくその状態の実現を人本経営は目指していきます。

■地域住民

4番目の「地域住民」についてですが、企業経営を営んでいる地域ともまた良好な関係を築くことに人本経営では心を砕きます。これは単にお金を使うということではなく、直接社員が貢献する行動がよく見られます。例えば、会社周辺の公道の清掃を買って出る、交通整理をして住民の安全に寄与する、あるいは地域の高齢者や障がい者施設の慰問や支援を積極的に行う、さらには雇用が進まない障がい者を直接雇用する、など地域とより良い関係を築くことを大切にしていきます。

このことは地域住民に伝わらない訳がなく、「あそこはいい会社だよ」と至る所で共感者や応援団が形成されていきます。これまた塚越さんがおっしゃっている「敵をつくらない経営」という状態が実現していきます。持続可能性を高めていくという結果には、地域との共生は欠かせません。人本経営ではそれが実現していきます。

■株主

そして、最後の「株主」です。ここまで見てきたような取り組みをして、結果としての業績が出ることで、株主にも益をもたらすことが実現していきます。しかし、人本経営に成功して高収益状態になっても、ほとんどの会社は株式公開をしていません。その理由は、現在の株式市場のしくみが、自分たちが目指している「関わる人の幸せ増進」という目的に沿うものではないという確信からです。では、人本経営では株主はないがしろにされるのかというと、さにあらず、です。

多くの人本経営成功企業では、収益体制が確保されてくると、内部留保と未来投資に費やした残りの利益を社員へ還元する態度がよくみられます。決算賞与という形に加えて、社員持ち株制度として還流させるのです。前述したとおり、上場を想定している訳ではありませんから、利得を目指している訳ではありません。会社に関わる5人の最初の「社員」と最後の「株主」を見事に紐づけているのです。社員イコール株主ということで、会社は誰のものであるかということがこれ以上ないほど分かりやすく明示されるということになります。

以上、考察してきましたとおり、人本経営は、関わる5人との関係の質を向上させていくので、物ごとに取り組む思考が高められ、よりいい行動が生まれ、結果としての業績がよくなるという善循環をつくり出すことが実現していきます。

今般のコロナ禍においても、この経営の優秀性が証明されました。人本経営の浸透度が進んでいればいるほど、コロナ禍による経営への打撃は深刻化せず、また立ち直りも早い傾向にあることが確認出来たからです。

これからどのような時代になろうとも、社会に残り続けていく唯一無二の経営が人本経営なのです。(了)

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