第864号 菅首相ブレーン・アトキンソン氏探求

第864号 菅首相ブレーン・アトキンソン氏探求

菅首相ブレーン・アトキンソン氏探求


菅義偉首相は16日、「成長戦略会議」の初会合を開催しました。

「持続的な成長へ改革の具体策を議論してほしい」と述べた。首相のブレーンとされる小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長ら民間から8人の有識者が出席した。首相は議題にすべきテーマに(1)新型コロナウイルスの影響を踏まえた日本企業の事業の再構築(2)生産性の向上(3)足腰の強い中小企業づくり(4)強靱(きょうじん)なサプライチェーン(供給網)――などを列挙した。(以上、抜粋)

とのことです。

■アトキンソン氏とはいかなる人物か

Wikipediaによるとアトキンソン氏の経歴は以下の通りとなります。

オックスフォード大学で日本学を学び、アンダーセン・コンサルティングやソロモン・ブラザーズに勤務し、1990年頃に渡日。1992年にゴールドマン・サックスに移ってアナリストとして活動し、バブル崩壊後の日本の銀行に眠る巨額の不良債権を指摘。ほどなく不良債権問題が顕在化し、その名を高める。2006年にパートナーに昇任した後、2007年に「マネーゲームを達観するに至って」退社した。アナリストを引退して茶道に打ち込む時期を経て、所有する別荘の隣家が日本の国宝や重要文化財などを補修している小西美術工藝社社長の家だった縁で経営に誘われて2009年に同社に入社し、2010年5月に会長就任。2011年4月に社長兼務となって、高齢・高給職人に対する賃金カットと若年職人に対する正規雇用化と体系的な教育の導入などの経営の近代化と建て直しにあたった。(以上、抜粋)

ゴールドマン・サックス退職までは、新自由主義者としての典型的なキャリアの持ち主であったということがわかります。よって非生産的な中小企業淘汰の主張も納得できるところです。ところが、日本に触れて人生が変わったことは確かであるように感じます。そして、宮大工の小西美術工藝社の経営者としてビジネスマンのキャリアを復活させ、300年以上の歴史を持つ老舗企業の経営体質を高収益体制に立て直したという実績をつくります。この体験が、現在の不採算中小企業不要論の説得力を増し、菅総理のような政治家に重用されることにつながっていったのだと思われます。小西美術工藝社では非正社員を正社員化したことなどの評価もできる一方、生産性、合理性重視の経営が綻びを見せているという反面もあるようです。

■新生小西美術工藝社の仕事ぶり

陽明門は「平成の大修理」と呼ばれた大規模な修復工事を3年前に終えたばかりで、およそ12億円の費用が投じられ、約4年の歳月を要しました。それが、今、陽明門を見上げてみると、あちこちが剥がれており、とくに唐獅子の彫刻は見るも無惨な姿になっているというのです。アトキンソン氏が「欧米式の合理主義」を徹底させることで社内の生産性を向上させたものの、建築エコノミストの森山高至氏は「6年かかる予定の修理が4年で終わったことが関係しているのかも」と語っており、アトキンソン氏が“手抜き修復”を行なったのではと疑う声が上がっているというのです。

真偽は定かではありませんが、もしも生産性を高める結果が優先され、品質が劣化したのだとしたら、本末転倒で論外といわざるを得ません。しかし、そうなりえるだろうことは容易に想像もできるところです。

アトキンソン氏は30人の会社の経営者より1000人の会社の経営者が有能だと断言していますが、人本経営の現場を見続けてきた立場からは、全く賛同できません。人を大切にする経営をしきって、あえて大きくならずに、関わる人々を幸せにし続けている会社こそが日本に増えるべきであって、ただ生産性向上だけのために規模の大きな会社を増やすことになれば、日本という国柄は歪み変質していき、生きにくい社会が待っていることだけは確実だろうと確信できます。そもそも企業を大きくするもしないも、企業経営者の自由です。目的は、万人の幸せに貢献するのかどうかで議論されるべきです。アトキンソン氏の主張からは、人を幸せにするということが感じ取れず、そこに到底受け入れがたい違和感を覚えるのです。

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