第851号 人本経営のルーツ探訪Ⅱ 二宮尊徳

第851号 人本経営のルーツ探訪Ⅱ 二宮尊徳

人本経営のルーツ探訪Ⅱ 二宮尊徳


人本経営のあり方に影響を与えた日本の豊かで確かな思想の源流に迫るシリーズ第2弾は二宮尊徳です。多くの人本経営実践者が尊徳翁の教えを引き合いに出されています。その代表格は何と言っても伊那食品工業の塚越寛さんでしょう。

遠きをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す。

塚越さんといえば年輪経営ですが、そこに至ったきっかけが、この尊徳の言葉であるということを回想されています。

この格言は、本当にその通りだと唸らされます。きちんと根付かないうちに、とにかく肥料を与えて急成長させてひょろひょろと伸びた樹木は、見た目はいいかもしれませんが、暴風雨の環境変化に見舞われるとたちまちに根こそぎ吹き飛ばされてしまいます。一方、時間はかかりますが種床をしっかり整え、上に伸びることよりもしっかりと大地に根を張り、少しずつ身の丈に応じ自然の恵みと調和しながら育った樹木は、台風が訪れても耐え抜き、翌年の春に花を咲かすことが出来ます。

人にしても企業にしても、このことは明白な道理です。にもかかわらず今もまた、ものすごい勢いで急成長したステーキ屋の挫折が報じられています。経営には終わりがないのだから、意志をもって急成長させない覚悟で去年よりも確実によくなっていく経営を60年続けた伊那食品工業、今まさしく大樹となって日本経済社会に輝いています。目先の利益に追われることは猛毒だと改めて心しておきましょう。

道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である。

次回の大河ドラマで取り上げられるという渋沢栄一公。『論語と算盤』を著したことで知られていますが、その思想に影響を与えたのが二宮尊徳といわれています。尊徳は独学で神道・仏教・儒教などを学びました。また、農業の実践から豊かに生きるための知恵を編み出しました。神仏儒を究極的には一つにいたる異なる道に過ぎないと位置づけ、神仏儒それぞれの概念を自由に組み合わせて生まれたのが、経済と道徳の融和を訴え、私利私欲に走るのではなく社会に貢献すれば、いずれ自らに還元されると説いた報徳の思想です。

自己犠牲に陥ることなく、世のため人のために役立つ仕事を行い、正当な利益を生み出していくことの重要性を指摘したこの格言は、まさしく永続への鍵であるといえるでしょう。尊徳の出身地である小田原で介護事業を展開するHSAの田中勉社長も、この教えを十分に踏まえて事業を展開しているとおっしゃっていました。介護という世の中に必要とされている事業を展開していても、利益が上がらず、現場スタッフに長時間労働という負荷を背負わせて経営がひっ迫している介護事業所が多い中で、高い経常利益率を出し続け、進出したすべての介護事業を成功させています。秘訣は、すべての経営情報を公開し、社員との対話を徹底的に繰り返し、全員の合意形成を図ったうえで、決定後の事業計画にはプロの経営コンサルタントを入れて成功実現可能性を高めていることにあります。まさに尊徳の教えである道徳と経済の合一を実践しているのです。

すべての商売は、売りて喜び、買いて喜ぶようにすべし。
売りて喜び買いて喜ばざるは道にあらず。
貸借の道も、また貸して喜び、借りて喜ばざるは道にあらず。

前回見た近江商人も、商人道という道理を極めて大切にして発展していきました。尊徳もまた、道については一家言をもっています。自分さえよければということへの強い戒めが込められています。そして、次の格言はさらに強く、今を生きる我々に教訓を与えてくれています。

人は、生まれたのに学ばなければ、生まれていないことと同じである。
学んで道を知ろうとしなければ、学んでいないことと同じである。
道を知っても実践することをしなければ、知っていないことと同じである。
故に、人たるもの、必ず学び続けなければならない。
学んだものは、必ず道を知ろうと努力しなければならない。
道を知ったものは、それを世の役に立つように広めていかなければならない。

改めて補足をする必要がないほど、説得力があります。知行合一ということの意味合いをこれほど見事に説くことが出来るのは、さすが尊徳翁と頭が下がるばかりです。

さあ、皆さんよろしいですか。人本経営の実践あるのみです。前へ前へ!

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