第783号 GoogleのCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)が重要視していること

第783号 GoogleのCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)が重要視していること

GoogleのCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)が重要視していること

GoogleのCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)として活躍するチャディー・メン・タン。設立当初からエンジニアとして8年間働いた後、ある仏教僧との出会いから、Googleの職場に幸福をもたらすことに指名を感じ、「Jolly Good Fellow」として、ビジネスシーンでの幸福を追求しはじめたといいます。

彼が特に重要だと主張するのは、コンパッションということです。コンパッションとは、「思いやり」と和訳されています。思いやりは幸せをもたらし、楽しく面白いことで、さらに利益になると指摘しています。なぜ利益につながるかというと、思いやりを企業文化の中心に据えることで、質のいいリーダーが生み出されるからだといいます。ボス型ではなく支援型に長けたリーダーでないと組織内に思いやりは育まれず、組織内の関係の質を向上させることはできないためだという訳です。

コンパッションに基づいた社会活動家であるハーバード大学名誉研究員ジョアン・ハリファックス博士によると、コンパッションとは「人に注意を与えて、寄り添う」能力のことで、相手と共に「いる」、相手のために「いる」ことと説明され、同時に、相手に対して心を寄せる、相手にとって自分がどう役立つかを感じる、という意味合いも含まれているということです。

つまりは、一人ひとりの可能性が引き出されることを最大限に実現できるようなリーダーが生まれ、メンバーは自発性が育まれ、現場からボトムアップされて新しい仕事がクリエイトされてきやすくなり、生産性が高められるというのです。

■CHOの役割は、組織に支援型リーダを輩出するように企業文化を育てること

こうしてみると、人本経営に必要な自利利他の精神が発揮できる支援型リーダーシップのイメージとオーバーラップしてきます。逆に言うならば、CHOの重要な役割の一つとして、支援型リーダーが生まれやすい組織風土をつくることとみることができるかもしれません。

チャディー自身が、人事や総務の専門職ではなく、エンジニアからCHOになっていますが、これには重要な示唆があるように感じます。CHOに求められてくることは、従来の管理統率をベースにしたマネジメントではないので、むしろ人事や総務出身者よりも、より柔軟で、人に興味があって、場合によっては前例にとらわれない自由な発想ができるタイプのほうが適任となる可能性がありそうです。

このことは、業績軸の会社づくりに慣れ親しんだ経営者が、幸せ軸の人本経営に転換していくときに、その真逆感覚で四苦八苦する姿と重なるものがあります。

CHOの普及とともに、欧米の企業では「顧客満足度を上げたいなら、まずは従業員の幸せから改善すべき」という思想が今後根を生やし、主流となる可能性が高くなってきていると感じます。

このような状況になってくると、人本経営の実践段階で起きやすい弊害の一つにある、「優しい」をはき違えて甘やかす「仲良しクラブ」的な組織になるのではないか、と危惧します。

これに対して、ハリファックス博士は「相手の言いなりになって自分が疲弊することを、私たちは“愚かな人のコンパッション”という言葉で呼んでいます。それは本来のコンパッションではない。」「実は最もコンパッションに溢れた対応は、はっきり「No」と言うことです。リーダーが相手に寄り添うとき、「この人を助けよう、何か役に立とう」という明快な意図を持っていれば、厳しく強く対応することもあります。責任を持って仕事をやり遂げることを相手に期待するのも、コンパッションの一つです。信頼さえあれば、厳しいことを言われたとしても「やっても無駄」「自分には力がない」という気持ちにはなりません。」と語っています。

これについては、伊那食品工業がその理念に「いい会社をつくりましょう、たくましく そして やさしく」と厳しく律していくことを添えていることとの一致性を連想しました。

CHOの研究を進めていくと、明確に人本経営で幸せ軸の「いい会社」をつくっていこうとするプロセスで、多くの経営者が大切にしている“あり方”と非常に近い概念がたくさんあると感じさせられます。

幸福を増大させていくための組織づくりということであれば、その本質面で差異がある訳もなく、法則性がみられるのは当然だと感じますが、CHOが増えていくにつれ、このことは欧米でも確認できるようになってくるものと考えられます。

そうしたケースが増えていくことは、望ましいことに違いありません。

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