第760号 伊那食品工業2018年視察記~マインドセット・予防接種・贈る言葉
2018.11.19
伊那食品工業2018年視察記~マインドセット・予防接種・贈る言葉
今年も人本経営の聖地、伊那食品工業へベンチマークの旅を重ねました(2018年11月13日訪問)。
今回も様々な学びがありました。シェアさせていただくことにいたします。
■朝いちばんにマインドセットをしている社員
朝、出社してきた女性社員が駐車場に車を止めています。そして、おもむろに運転席から降り、後方を確認していました。ここの会社では排気ガスで草花を傷めないように、車を前向きに止めていることは承知していましたが、その止め方にも凄いこだわりをもっているのです。すべての車が一直線に車のおしりを合わせて止めているのです。井上修社長は「ここの社員駐車場では、今、世界一の駐車の仕方に挑戦しています。」と宣言しています。きちんと止められたことを確認した女性社員は、こう語ります。「きれいに駐車できたことで、今日も仕事でミスのない一日を過ごせると感じます。」なんと朝の駐車ですべての社員がマインドセットをしているのだと感じさせられました。
駐車の後は、広大な敷地の清掃を全員で行っていきます。とくに場所は指定されておらず、自分が気になっているところや、こだわっているところを熱心に清掃していきます。全員が主体的に実施していて、とても気づきが得られるとのことです。駐車場に続いて、ここでもさらにマインドセットを重ねているのです。
■全社員が予防接種を行うことができる理由
同社では社員の健康に特段の気を遣うということは有名です。インフルエンザの予防接種も、会社が全額負担して、全員が受けているそうです。ちょうど、今回の視察に参加したメンバーの会社で同じテーマの話が持ち上がっていました。「会社負担しているのに、半分くらいしか予防接種をしてくれないんだよな。」その経営者はそう語っていました。接種することを強制はできないし、仕方がないとあきらめているということでした。そこで、今回ご講話をしてくださった丸山勝治取締役に「なぜ、伊那食品工業では全員の予防接種が実現できるのですか?」と尋ねてみました。
「それは教育の成果です。」と答えが返ってきました。入社以降、同社では社員に対して「立派な社会人」になってほしいと事あるごとに教育をしています。立派とは、「人の役に立つこと」をしていくことで、そのための最も大事な心がけは、「人に迷惑をかけないこと」だと知らしめています。
ですから、自分のわがままで予防接種をしないで、もしインフルエンザに罹ってしまったら、仲間や家族、そしてお客様にどれだけ迷惑をかけることになるかという意識が全社員にしっかりと芽生えていて、予防接種を積極的に受けることが実現しているのです。
「さすが伊那食品工業」という逸話が、またひとつ誕生したと感じました。
■新入社員への贈る言葉
前前号で、平成31年春卒業予定の大卒求人倍率は1.88倍と7年連続で上昇し、従業員数が5千人以上の大手企業の有効求人倍率が0.37倍だったのに対し、300人未満の中小企業になると9.91倍に跳ね上がっている、ということをお伝えしました。しかし、人本経営を万全に実践している会社では、採用状況は良好だとも指摘しました。伊那食品工業でも新卒採用を毎年コンスタントに実現しています。今年はエントリーが1200人あり、500人の面接者の中から10数人が採用されたようです。丸山取締役は語られていました。「本当は第一志望は優良大企業だった若者は多いと思う。そういう子がうちにもいる。そんな彼ら彼女らには『勝負は会社に入ってからだよ』と語りかけるんだ。」
これは素晴らしい声がけではないでしょうか。「自分を採用しなかった会社を、幸せになって見返してやろうよ」というメッセージです。同社に入社したことで一歩一歩幸せな人生を歩んでいくことになるであろう若者たちは、実際に日々幸福感をかみしめ、立派な社会人になっていくことでしょう。結果として28年前から「会社が嫌で辞めた社員はいない」という事実が積み重なっているのでした。本当に「いい会社」です。
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