第751号 問題が起きないのが「いい会社」ではない

第751号 問題が起きないのが「いい会社」ではない

問題が起きないのが「いい会社」ではない

「いい会社」について折に触れて書いてきました。「いい会社」とはどんな状態をいうのでしょうか。

高収益の会社、社員が幸福な会社、お客様から愛されている会社、自社だけでなく取引先や業界全体もよくしようと努力している会社、高配当率を続けている会社・・・。

確かに「いい会社」と呼ばれている会社には、そうした状態が実現されている会社は少なくありませんから、当たっています。

しかし、それらは現象として現れている状態です。なぜ、そうした現象が現れるようになったのか、この問いの答えこそが、「いい会社」を真に理解する鍵になります。

■問題解決の方針が人本でぶれなくなるのが「いい会社」

よく誤解されるのですが、問題のない会社が「いい会社」ということではありません。「いい会社」をつくったからといって、日々、問題が起きなくなるということは決してありません。諸行無常の世の中で人生を歩んでいけば、様々な出来事が起こるように、会社も法人ですからその活動プロセスでは、いろいろなことが起きてきます。まさしく無常です。ですから、世間からどんなに「いい会社」といわれる会社をつくったとしても、その経営者から悩みは消えることはありません。

けれども、判断、決断、行動にぶれることはありません。軸というべき方針が明確に定まっているので、ぶれなくなるのです。

■伊那食品工業の決断軸

「100年先でも価値ある企業として存続していることを考え、経営の舵取り・決断をするようにしています。」と語る伊那食品工業塚越寛会長が頑なに守り続けているのが、以下の三つの経営方針です。

いずれも含蓄があります。方針1は、いわゆる年輪経営で、自分たちの身の丈にあった成長をしていこうという強い意志が込められています。特需やブームにのって業績が急成長することを戒めているのです。方針2は、奢らないということです。自分たちだけがいい状態になるだけでなく、関係各位が幸せになる方向へ行動決断が促されていきます。方針3は、現状に甘んじることなく、社会をよりよくしていくための変化をし続けていく方向へ進歩していくことになります。そして、そのためにも適正な利益を上げ続けていくことが前提条件となるという意識が芽生えます。

このような方針をぶれずに続けていくことで、問題解決の仕方に触れたステークホルダーは、「いい会社」だと感動したり、共感したり、共鳴したりするのです。平素それを実感するのは、まず社員ということになります。ぶれない経営陣、リーダー、先輩や同僚に触れて、この会社は安心して働くことが出来ると信頼を高めて、自分も周りに負けないように自己研鑽をして成長していくことでしょう。そして、その志が顧客や取引先に向かっていくだろうということは手に取るように想像できます。さらに利益は成長し幸せをつかむための手段ととらえ、儲けるためには研究開発が何より必要と方針3が効きます。新企画、新商品開発という未来投資のために、利益と人員の10%を還元、配置し続けています。

今日も、この方針にぶれずに問題に対処していけば、100年先にもわれわれは「いい会社」といわれていると自信に揺らぎがありません。

このように矛盾なく幸福が実現できるように経営の中心軸を据えることが人本経営ということになります。結局、行動の段階で不遜な経営を傾けさせるような問題発生の芽を摘んでいることを実現しているのは確かですから、「いい会社」には問題がないように映るのでしょう。

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