第732号 人本経営者の資格

第732号 人本経営者の資格

人本経営者の資格

人本経営を実践して、関わる人々に幸福な人生をもたらそうと励む経営者が目に見えて増えてきました。とても喜ばしいことですが、現場では悩みも尽きないようです。

「ローマは一日にして成らず」の格言通り、人本経営も一朝一夕で出来上がることはありません。

社員のためにと、それまでの感覚からすれば考えられないくらいの転換をして経営施策を進めたにもかかわらず、それが社員の心に届かず、思ったような結果が得られずに焦燥感に苛まれる社長は少なくないようです。

現象ではなく本質に思いを馳せていきましょう。結果を性急に求めるのは、現象に振り回され続けることになります。進もうとしている方向は確実に正解なのですから、その道程で起きることは、その正解に到達するまでのステップだと捉えていきましょう。

あの伊那食品工業でも、今日も新たな問題が発生しているに違いないのです。会社は生き物ですから、毎日新たな問題が発生することは当然です。問題が生じない人生などありえないのと同じことです。日々生じる問題に人本主義で対処し続けていくことこそが、本質面のアプローチにほかなりません。

問題のない会社をつくることが人本経営の目的ではありません。問題が起きたときに人本主義的に解決できるような体質にしていくことが人本経営の目的です。

■売上と人本経営

人本経営を志していくと、社員に対して売上について語るときに引っ掛かりが出てくるケースが多いようです。多くの人本経営成功企業が実施しているように、ノルマを設定せず、売上至上主義ではない会社づくりをしていくと、いったん業績が落ち込む可能性が出てきます。

その際、経営者という立場としてはどうしても不安になることでしょう。ここで人本主義的に問題を解決していくためにはどうしたらよいでしょうか。

本質的に問いかけます。何のために「売上」が必要なのかということについて、明確に答えを出すことが出来れば、心は定まります。

関わる人が幸福になるために経営をしていくと決めたのですから、まず社員とその家族が幸福な生活を継続していくための最低限の収入が必要です。それを維持していくためには、これだけの収益の確保と、それを実現するための売上目標というのが自ら設定できるはずです。

それを実現していくためには、場合によっては適正水準に値上げをする必要があるかもしれませんし、新市場をつくり出すためのマーケティング活動が必要になるかもしれません。そのことを「みんなの幸福実現のために来期の目標にしていこう」ということであれば、社員と対話していくことは自然にできるはずです。そして、社員一人ひとりも実現に向けて貢献できることをポジティブに捉えていくことは自然にできるはずです。

しかし、売上目標について社員に言いにくい、あるいは社員が反発してくるという場合には、人本目的が明確に共有されていないことに原因があると考えられます。

社長の心に「儲けていい暮らしがしたい」という思いが残っていたら、それは邪気となって社内に伝わっていきます。「社長を儲けさせるために一生懸命働こう」と考える社員などいるはずがありません。逆の立場で考えれば即座に理解できることでしょう。

「社長の器以上の会社にはならない」とはよく言ったもので、まさしくその通りなのです。

曇りなく、社員とその家族の幸せを、良好な取引先との関係を、そして、お客様の最高の笑顔をつくり続けていきたいと心から念じられる自分になったと確信出来た後に、人本経営の実践を試みることが成功に導く秘訣といえるでしょう。

もっと言うならば、その確信をもてることが人本経営者の資格といっても差し支えないでしょう。そして、その資格をもったという意識が、経営者の本気度として現れてくることになるのです。

そうは簡単ではありません。しかし、人本経営実現への手応えを得ているとき、何物にも代えられない至福を人本経営者は感じることが出来るのです。

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