第724号 またも輝いた平成世代 一つの確信
2018.2.26
またも輝いた平成世代 一つの確信
様々な感動が生まれた冬のスポーツの祭典、平昌五輪が幕を下ろしました。日本選手団は連日発奮し過去最多のメダルを獲得しました。
ここ数年来、こうした世界大会が行われるたびに、若い日本人が過去最高の記録を更新し続けているのですが、今回もまた数多、そうしたシーンが繰り広げられていました。
その原動力となっているアスリートの多くが平成世代なのです。素晴らしいパフォーマンスを成し遂げた選手たちが、決まって口にしていたのは「試合を楽しめた」という言葉でした。
プレッシャーのかかる場面で、そうした状況を「楽しむ」ということを言っていた元祖は読売巨人軍にいた長嶋茂雄氏でしたが、当時は誰もその感覚を理解出来ずにいたものでした。
時代が流れ、多くの若者が大舞台でも動じることなく、普段の自分の力を発揮できるようになってきました。これは素晴らしいことではないでしょうか。
平成世代は、バブル経済が崩壊した後に生を受け世の中に登場してきています。少子化という状況下にあって、家庭では、多くの子供たちは自分専用のマイルームがあてがわれ、エアコン完備が当たり前の環境で成長していったはずです。
モノがあふれた社会で育ってきたこの世代がモノに対する貪欲さがないのは当然で、昭和の頃の世代に比べハングリーさを感じさせません。実際、クルマを所有したいと考えていない若者が大変多いことに驚かされます。
けれども、今回の平昌五輪でも感じさせられた今どきの若者の圧倒的パフォーマンスは、ハングリーであることが目標を達成していくことへの大きな動機づけに結びついていないということを示してくれています。
日本人史上ではもちろん初で、世界でも66年ぶりという男子フィギュアで2大会連覇という大偉業を成し遂げた羽生結弦さんは、記者会見で「自分の人生史上、一番幸せな瞬間にいる」と名言を残しました。
人は欲求を充たせると「幸せ」を感じることになります。
それには段階があると主張したマズローの欲求5段階説。
最下層は「生理的欲求」で、人として生きていくうえで必要な衣食住に関する欲求のことで、美味しいものを食べると「幸せ」と人は感じます。生きていくうえでの不便がなくなると、より快適性を求め、マイホームの購入などが実現できるとやはり「幸せ」という感情が湧きます。これが2番目の「安全の欲求」で、ここまでは物質的欲求といわれています。
モノに対する欲求が充たされてくると、人は次第に「より家庭円満でありたい」「職場でいい人間関係を築きたい」と人との関わりを重視するようになり、さらにはその関係性の中で「より人の役に立ちたい」という「承認の欲求」のステージに至ります。
そして、マズローは最上位概念「自己実現の欲求」に至ると指摘しています。まさしく羽生選手は自己実現を果たしたので最高に幸せだと述べている訳ですが、これはエゴの実現という意では決してありません。なぜならこの欲求が「所属と愛の欲求」と「承認の欲求」の上位にあるからです。理想的な人間関係を得たうえで、やらされ感なく過去最高の自分自身のパフォーマンスを自律自発的に実現することがこの欲求の真意だと理解できます。ということは、他者から愛される人間力を存分に発揮したうえで、己の能力を最大限に発揮していく状態をつくっていくことでこの幸せを得ることが出来るということです。高パフォーマンスを達成した多くのアスリートが、自分ひとりでできた訳でなく周囲の協力があってこそで、周りへ感謝の気持ちしかないと述べています。
企業経営においてこの状況をつくり上げていこうとするのが、まさしく人本経営が目指していく世界です。わが社でもたくさんの「人生五輪のメダリスト」を量産していこうではありませんか。
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