第713号 クレドの木に花が咲く~東邦プラン

第713号 クレドの木に花が咲く~東邦プラン

クレドの木に花が咲く~東邦プラン

2008年6月、伊那食品工業にベンチマーク視察へ行ったことを皮切りに、視察回数も620回を超えるに至りました。先週は神奈川県内の企業3社に伺いました。いずれも現在進行形で人を大切にする人本経営を実践している気鋭の会社でした。どの会社でも学ばせていただくことが多々ありましたが、中でもとても参考になった株式会社東邦プランの取り組みを、今週号ではご紹介させていただこうと思います。

同社は平成元年に設立され、集客に課題のある企業を顧客に広告業務全般の支援サービスを展開しています。広告業界では紙媒体とウェブ広告のどちらかに特化していることが多いのですが、同社はどちらにも対応できるという強みがあり、同様のサービスをしている競合企業はあまりいない、と本多修社長は語られています。曰く「ずっと激流の環境下に居続けている」とのことです。

経営理念には『私たちは豊かな感性を育み 一人ひとりに感動を伝え 幸せを広げます』と掲げられています。本多社長は、「感性は人間だけが持てるもので、これを大切にしたい」と強調されています。太陽は東から昇り西に沈むというように、世の中には決まったルールがあって、そこにどう意味をつけていくかで人生の価値が決まると捉えているのです。意味をつけるのは自分自身で、起きていることにポジティブに対応していくことが、確実に幸せを広げていくことになり、それを実現していくために豊かな感性を育もうと経営理念に謳われている訳です。

東邦プランでは、この経営理念を実現していくために行動指針が紐づけられていきます。その一つに「社員条件」が設定されていました。この言葉は、これまでの視察で他社には見られなかった極めてオリジナリティのある概念だと感じました。

社員も家庭では、一人の経営者と同じ。家族を幸せにすることが目的で、そのための心構えでもあると本多社長は説明してくださいました。「勉強」は探求心をもち続けてほしいというメッセージです。「ポジティブ」は前述のとおりの意味付けです。「素直」はとらわれない心を持とうという意だそうです。相手の言っていることをシャットアウトせず、一回は主観を外して、どんな人でも対等に聴く姿勢を持とう、ということです。「感謝」は有り難いということで、普段起きていることに当たり前になり、不感症になることを戒めようという意だそうです。

社員が自主的に自己管理できる人になってほしいと考える本多社長は、権限をかなり現場に付与されています。上手く人を育てるのではなく、育つ環境をつくることが大切で、気づく機会・場所をつくるのが経営者の役割だと認識されているのです。支援型リーダーシップ、スポンサーシップという人本経営での課題を見事に体現されているのです。

■社員たちの手で作り上げた行動指針~クレドの木

今年に入ってからは経営理念を具体化していくために、行動指針作成のためのプロジェクトチームが編成されました。入社5年目の社員からの発案で、「全社員を巻き込み、自分たちの手で行動指針完成までを導く」ことを目的にチームが編成されていきました。1チームは4~5人で、部署横断的に5グループが編成されました。自分も行動指針づくりに参加したという思いを抱き、共感を得る場にすることを目指してプロジェクトは進行していきました。日々、仕事をしていくうえで関わるステークホルダーに対して、どのような東邦プランであってほしいかという声を、社員や顧客だけではなく、協力会社・取引先からも吸い上げ、文章化していきました。

その結果、お客様について25、仲間について40、協力会社について19、あわせて84項目の行動指針が吸い上がってきました。これらの項目を、社員にとってわかりやすく示すグランドクレド、そして、その行動をすれば利害関係者から感謝されるアクションクレドとして10の価値基準にまとめられました。さらに作っただけで終わりにしないために、各グルーブのメンバーが枝になった『クレドの木』がつくられました。日々の活動の中で指針に沿った活動に気づいたり、認識したりしたら、メッセージを添えて枝に「花」をつけていく、という仕組みです。

約2週間で下の写真のように満開になりつつあるということでした。社員はもっと相手に対する感心をもとうと利他の精神が確かに育まれているようでした。本多社長は一切口出しをせずプロジェクトの活動を見守ってきました。まさしく自主的自己管理が実践できていると確認したことでしょう。確実に、いい会社が誕生しつつあると実感した視察になりました。

東邦プランの本多社長、そしてその右腕となっている社員の方は、現在、人本経営実践講座4期生として学ばれています。講座で提示した「クレド作成キット」を大いに活用したとのコメントがあり、主催者としてお役に立てたことが何よりうれしく感じました。

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