少子化問題を解決する人本経営

少子化問題を解決する人本経営

2022年にわが国に生まれた子供の数は、統計を始めた1899年以降で最少となり、初めて80万人台を割り込んだと報じられています。さらに、2023年上半期(1~6月)の出生数は37万1,052人で、前年同期と比べて1万3,890人減少し過去最低になっていると厚労省人口動態統計(速報値)を2023年8月29日に発表しています。少子化が止まりません。政府は異次元の少子化対策を打ち出していますが、そんなことより効果のある方法があるのです。

人を大切にする経営が少子化を止める

現在、1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す「合計特殊出生率」は1・26に落ち込んでいますが、社員の子どもの数の総平均が1・90という結果になっているという調査報告があります。これは人を大切にする経営学会が実施したもので、書籍「ニッポン 子育てしやすい会社」(商業界)で明らかにされたものです。つまり、「人を大切にする会社は社員の子供の数が多い」という結果がもたらされるのです。

筆者も多くの人本経営実践企業をみてきて、全く同感できるところです。人本経営だとなぜ子だくさんとなるのか説明ができます。

それは、いちばん最初に重要に考えるステークホルダーが「社員とその家族」と掲げ実践していくからです。会社で働く社員は従業員である前に、家に帰れば父、母、子供である訳です。幸せ軸の人本経営では、人の幸せは家庭円満であってこそ叶うと大前提で考えます。家庭円満であるからこそお客様に喜んでいただく仕事をすることに社員たちが専念できることは明白でしょう。

仕事の都合よりも家庭の事情を優先していい

そのため上記の概念が一丁目一番地となります。もしも家族に通常ではない出来事があるときは、心置きなく家庭生活のことを最優先できるように企業文化を形成していきます。

親の介護や子供の小学校の入学式や運動会などは休暇や休業、あるいは短時間労働といった配慮が施されていきます。社員が子を授かったときももちろんです。育児休業の取得、そして復職は100%達成していることが人本経営の現場では圧倒的です。

年輪経営を志し、企業も社員も加齢とともに安定的に成長を遂げていきます。社員は生涯現役で長く働いていけることに不安がありませんから、安心して子持ちになり、子育てと仕事の両立を実現していきます。そうすると、二人目、三人目と子だくさんになっていく社員が増えていくようになるのです。

お互い様、おかげ様の風土がそれを実現させる

勤務時間、勤務日、勤務日数は本人の自由/勤務店舗は自宅、実家、保育所の場所などにより相談のうえ決定/社内に授乳コーナーの設置/残業、会議免除/親子出社OK/子守り依頼OK/お昼寝奨励/外出、早退、欠勤自由(病院、お迎え、買い物など)/子供最優先/休業中も会社の情報共有の配慮

上記は、人本経営に成功している会社が、実際に子育てパパ、ママに対して支援している施策です。ここまでするのかと驚かれたかもしれません。現実に子育てしながら仕事を両立していくことは簡単ではありません。ですから本人に寄り添った支援策として、このように打ち出されてくるのです。

子育て中の社員は、こうした配慮を誰も権利だとは思いません。ありがたく「おかげ様」で支援を受けさせてもらう気持ちで活用していきます。そして、一段落して職場に復職してきた暁には、上司が親に介護が必要となったら、仕事は私たちに任せてください、今度は上司の番ですと家庭に送り返すことでしょう。「お互い様」という風土が根付いていくのです。

家族というステークホルダーが欠落している業績軸経営

いっぽう、投資家・資本家、そして顧客を最優先に考える業績軸の経営では、社員はその人々に奉仕することが強要され、いつしかモーレツ社員、企業戦士、果てには社畜とまで称されるようになっていき、労基法はどこかに忘れ長時間労働、土日出社が横行していきます。家族が寝静まった深夜に帰宅することが常態化していけば家族団らんはおろか断絶を招きかねません。つまり、業績軸には、幸せ軸ではいの一番としていた「家族」というステークホルダーが欠落しているのです。

筆者は社労士になる25年前には、10年間人材ビジネス系の企業で社員として働いていました。文字通りバブル経済を体感し、企業は急成長の最中にありました。決して悪い会社ではありませんでしたが、業績軸であったことは疑いようがありません。毎年対前年比120%程度の成長が所属する事業部も設定され、それを達成するための計画と実行を繰り返していました。まさしく深夜に帰宅し、土日も働いていました。ちょうどその頃、小さな子供を育てていて、やはり運動会でリレー選手に選ばれたとか、学芸会でいい役をもらったといった話が家では話題になりました。その都度、わが子の活躍を観に行きたいと思いましたが、その会社で上司にそのための有給休暇の申告などできるはずもありません。しようものなら出世に響くよというムードが漂っていたからです。新卒で入社した女子社員は出産を機に退職していくのは当たり前の光景でした。

回り回って自らを苦しめる業績軸経営

家族というステークホルダーを大切にしなかった業績軸経営が、実は少子化をもたらした大きな要因になっているのではないでしょうか。前職の時には仕事オンリーの状況でしたから3人以上の子育てをしていこうという気にならなかったのは確かですし、むしろ、子だくさんになると嘲笑される感じすらありました。

バブル経済がはじけたのと、ほぼ軌を一にして、わが国は果てしない生産年齢人口(15~64歳)の激減に見舞われていきます。戦後右肩上がりで増え続け1995年にピークの8726万人に到達した生産年齢人口は、それ以降は減少を続け、2020年には7292万人になり、実に1434万人近い労働者と消費者が日本から消失しています。今後、さらに2500万人以上減り、2050年にはついに5000万人割れと予測されています。(国勢調査;国立社会保障・人口問題研究所中位推計、総務省「経済センサス基礎調査」)

企業社会の主流を業績軸においている限りこの流れは変わらないでしょう。

しかし、幸せ軸の人本経営を実践していく企業の割合が増えれば、やがて少子化の問題も解決されるのです。そう信じてやみません。

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