物心両面の幸福、物が先か、心が先か

物心両面の幸福、物が先か、心が先か

物心両面の幸福を実現していくことを掲げる経営者やリーダーが増えています。

その通りでけっこうなことですが、卵が先か、鶏が先かの議論があるように、どうこれを実現していくかについて、明確に考えをもっている方は少ない気がしています。企業経営でいえば「利益」が先なのか、それとも「いい会社」をつくる決心が先なのか、という問いかけといってよいでしょう。

利益(物)か幸福(心)か、どちらが優先か。どうとらえておけばよいでしょうか。

物心両面の豊かさを実現するあり方

伊那食品工業の塚越寛さんはこう語られています。

「「快適な職場づくりは、利益があるからできるのでしょう?」と言われることがありますが、それは違います。バランスを取りながらも、たえず快適な職場づくりを重ねてきた結果、収益力があとからついてきたのです。 会社が利益を求めるのは、「社員と周囲の人の幸せ」という究極の目的のために必要だからです。その利益を使ってみんなが幸せになることや、そこから納めた税金によって世の中がよくなっていくことが目的です。 利益はそこに用いられる手段であり、利益を得ることは、目的の一歩手前にある目標に過ぎない」(「末広がりのいい会社をつくる」文屋より)

過去の偉人達にも共通する認識

これについては多くの偉人たちも明快に答えを出しています。

二宮尊徳・・・道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である

渋沢栄一・・・論語と算盤

出光佐三・・・心の安定こそ真の福祉である

尊徳が、経済でなく道徳を先にもってきていることから明らかですが、根本は道徳、つまりは先に心であることが必須としています。渋沢もやはり算盤ではなく、論語が先です。

佐三は、人間が神や仏のような立派な神性とそうではない獣性という矛盾性をもっている以上、第一義的なものは心の福祉であって、物の福祉は第二義的であると喝破しています。

利他で利己を抑え込む

ある程度稼げるようになってから、体裁を人を大切にする人本経営に整えるという選択肢は人間が欲深い以上ありえないのです。利他的な心が宿っているところに、お金が回り始めることで、より世のため、人のために事業活動も展開していくことになることは明白です。

人生においても、仕事においても、関わる人がすべて幸せになることこそが目的であり、その実現のために利他の心を常に行動の中心軸におき、より幸せになる手段を充実させるため、さらに効率よく稼ぐことや利益をあげる生産活動に尽力していく、これを明確に意図し行動して物心共に豊かになっていく、これが正解です。

それでは、関わる人がすべて幸せになることを実現していくための利他の心はどうすれば養うことが出来るでしょうか。

関わる人との「関係の質」がいいか悪いか、これが決定的にその後の結果に影響を与えているという理論は核心をついています。この理論の実践こそが利他の心を備えることになるといえるでしょう。

家族との関係の質はいかにすればよくなるか

あまりに近い距離にある家族との関係は、ついないがしろにされがち。だからと言って、改めて感謝の言葉を添えたりすることを忘れないようにとかしこまっても、ぎこちなさが残ります。ここは自然体でいいので、雑な対応をしないように心がけることで、ぐっと関係の質はよくなっていきます。

たとえば、奥さんから話しかけられているのに、スマホやテレビに気を取られて相手の言っていることを受け止めようとしない態度では関係の質は劣化してしまいます。

話しかけられたら、相手が何を言おうとしているか理解しようとする行動をとることです。スマホやテレビを見るのを止めて、相手に向き合い「そんなことがあったんだ」「それは頭にきちゃうね」「へえー」とか、話している内容をふまえて共感的行動をすることで、相手はちゃんと聞いてくれていると感じて心の状態はよくなり関係の質はいい状態を保つことができるでしょう。相手を慮る、ちょっとした意識づけが家族間の関係の質では重要です。そして、言うまでもないことですが、自部勝手な都合で、非行や不倫などといった関係の質を破壊する行為はありえません。不良や犯罪者になることや不倫をすることを、本人以外の家族は誰ひとり望むはず訳はないのは明白なのですから。実際、そうしたことが発覚して家族がバラバラになり、本人の社会的地位も失われていく事例は枚挙にいとまがありません。家族関係を失った人の代償はあまりにも大きいのです。

関係の質を向上させる重要な心がけ

次に、日々、仕事で接する相手と関係の質を向上させていくために心がけていくことを考えてみましょう。

まず大事なことは、相手との関係を考える前に、自分自身の心の状態を整えておくことです。自分に起きてくる出来事をマイナスで捉えないという心構えを胸に刻んでおきましょう。世の中、諸行無常で、いろいろな出来事が降りかかってきます。それは生きている限り誰も避けようのないことです。いいことも悪いことも発生してきます。しかし、その出来事が人生にどう影響が及んでくるかということは、自分の認知と解釈、そして向き合い方で決定づけられます。事実はひとつ、しかし解釈は無限とはよく言ったもので、本当にその通りなのです。

幸せになる方法はない、幸せな生き方があるだけ

コロナ禍は、本当に忌まわしい出来事ですが、これをどう受け止めて行動するかは、まさに人それぞれです。人本経営を極めている方は、決して被害者にならずコロナ禍を乗り越えて、一段成長した未来から考えて、今何をしたらいいか仲間に問いかけ、鼓舞して、苦しい時期を皆で協力し合い乗り越え、Ⅴ字回復を成し遂げています。一方、同じ業界業種でも「なんてこった、ちきしょう」とあきらめ、事業を断念してしまい、社員を解雇していった方もいます。

何が違いを生じさせているのかは明らかです。心のもちようとしかいいようがありません。現実に起きる日々の出来事に対して、運がいいとか悪いとか、ついている、ついてないといった自分とは関係のない次元ではなく、それは自分の人生にとって必ず何らかの意味があって起きたことと自分ごとで受け止めていく姿勢が重要なのです。どんなに不本意であったとしても、腐らず逃げず、今の自分で出来る限りのことをしようと行動することで、何もせず逃げた自分より必ず成長をしていきます。

相手との関係の質をよくしていくためには、まず自分の心との関係の質をよくしていくことが出発点となるとわかります。それが幸せな生き方ということではないでしょうか。

(了)

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