第761号 「いい会社」づくりのスタートはここから
2018.11.26
「いい会社」づくりのスタートはここから
大きな時代の曲がり角となる予感に満ちています。カリスマ経営者といわれた日産自動車のカルロス・ゴーン会長の逮捕劇は、まさにボスマネジメント時代の終焉を告げているかのごとくです。
2018年は、日大アメフト部で「ボスマネの象徴」である外的コントロールが行き過ぎ、管理職の大失態を招き、大問題となりました。さらに、次から次へと同じ事象がスポーツ界で発生していきました。そして、今回の事件。後世からみると、今年は転機だったといわれることになりそうです。
■もはやボスマネジメントでは経営は成り立たない
今、多くの業界で斜陽化が進んでいます。パチンコ産業は、かつて30兆円市場であったのが、ついに20兆円を割り込みました。旅館業においては、その数は最盛期の55%に減ってしまっています。
何度となくお伝えしてきましたが、15歳から64歳の生産年齢人口の激しい減少が日本を襲い続けています。戦後、日本の生産年齢人口は増加を続け、1995年にピークの8726万人に到達しましたが、それ以降は減少を続け、2018年には7484万3915人となっています。実に1200万人以上の労働者と消費者が日本から消失しているのです。出生中位推計の結果によると日本の生産年齢人口は、2029年に7000万人、2040年に6000万人、2056年に5000万人を下回り、2065年には4529万人になると予測されています。
2分の1経済にむけてひた走っているのですから、多くの企業で成長に影響が及び、さらに採用が困難な局面を迎えているのは当然です。社長一人がカリスマを発揮して何とかなる時代ではもはやないのです。
■ここ数年で明確になってきた「いい会社」とそうでない会社の差
こうした状況下で、いろいろな会社を仕事柄みてきて、ここ数年で決定的になってきているなと感じることがあります。それは、人を大切にして「いい会社」をつくり込むことに成功した会社と、相変わらず昔ながらの「社長が一番偉い」という会社では、その状態が雲泥の差になってきているということです。
前者は斜陽産業という業界にありながら、確実に成長を続けています。後者は、五輪特需がある建設業にもかかわらず人が定着せず、やっとのことで採用しても、また辞めていかれ、社内体制が整わず業績が悪化しています。
一人ひとりの社員のポテンシャルを最大限に引き上げていく会社づくりをしない限り、これからの時代は持続可能性が一段と乏しくなっていくばかりです。ここのところ考察してきたGPTWの結論も、まさしく「全員型働きがいのある会社」を目指せという結論になりました。そして、リーダーのあり方は、支援型リーダーシップを発揮する全員型リーダーの創造であるとしました。
■確実な方法論が、人本経営の愚直な実践
それを実現できる確実な方法論のひとつが、人本経営の愚直な実践により、社風をよくして「いい会社」をつくり込んでいくことにほかなりません。
先日お伺いした長野県須坂市の岩の湯の金井辰巳社長は、「2:6:2の原則」について興味深いことを語られていました。自発的に仕事をする2割、普通に仕事をしている6割、消極的にしか仕事をしない2割という組織があったとします。この状態を金井社長は負けであると喝破されていました。もし、会社がそういう状態であるならば、6割の層に働きかけ、3分の2の社員が自発的に仕事をするように導くことだと言われていました。そうすると6:4になるので、これなら勝ちといえるということです。
なるほどと思いました。
社員意識調査を行っていますが、社員の幸福度合いの充足度が60%を超えてくると、確かに「いい会社」の雰囲気が漂ってくるのです。目標は70%としていますが、この60というラインは重要であると経験的に感じています。
いずれにしろ、現時点で社員がどの程度幸福を感じているのか分からなければ話になりません。「いい会社」づくりは、まず社員意識調査を実施することから始めましょう。
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