第1106回 高市内閣、「新しい資本主義」を放棄
2025.10.27
日本初の女性宰相が誕生しました。高市早苗総理大臣の登場です。内閣は直前まで低い支持率に喘いでいましたが、一気に急上昇しています。そして、就任まもなく矢継ぎ早に政策を各大臣に指示し、明らかにこれまでの岸田、石破路線とは一線を画す姿勢が鮮明になっています。
企業経営に影響が及ぶ経済政策について、当方は新しい資本主義実現会議をどうしていくのか、注目し、これへの対応で高市政権の評価をしようと判断してました。
高市政権「新しい資本主義会議」廃止へ
https://news.yahoo.co.jp/articles/9640de90ba1ce05060057058d6b06eecc51e2f53
するとなんと就任3日にして、高市首相は、ズバリ、新しい資本主義を終幕させると宣言してきました。正直、これは期待できると感じます。当通信では、これまでも新しい資本主義への疑問を呈してきました。例えば 第963号「新しい資本主義」に断固反対する で 新しい資本主義実現会議では終身雇用、年功序列を否定し雇用流動化を促進するジョブ型雇用に転換促進させることが目的のため、これでは企業に成果主義が蔓延し不幸な労働者を量産させる結果になることは確実として、新しい資本主義への失望と断固反対を訴えました。
結果どうなったか。その後、名うての業績軸型大企業が横並びでジョブ型雇用を導入したものの、好転せず、大量の高齢社員のリストラを実施していて3年前に指摘したとおりの事態に陥っているのです。この流れを堰き止める政策転換は大いに評価ができます。
「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」に光を当てよ
問題は、ではこれからどうしていくかということでしょう。大きな方向は成長戦略路線への転換と示されています。これからの具体的な施策を注目していきますが、高市首相には、ぜひとも内閣総理大臣賞まで創設に至った「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」に刮目をしていただき、人を大切にする経営こそが持続的であり、結果としてわが国を永続成長させていくと具体的に指針を示していただきたいと切に願うところです。
ワークライフバランス放棄発言について
高市首相はその就任会見で「ワークライフバランスを捨てて働いて、働いて、働いていく」と宣言し話題になりました。これは何も暴論ではなく、わが国は働かなくなりすぎで国力が落ちていることは明白なので違和感はありません。これについても当通信では 第1017号アリからキリギリスになった日本、これ以上の時短はもうやめよう にて指摘したところです。この30年間で2100時間だった年間総労働時間は、労基法の改正、働き方改革の推進等によって、目標としていた1800時を遥かに上回る1600時間にまで一気に短縮しているのです。それで豊かな国民生活が実現できているのなら正解ですが、かつて一億総中流といわれた日本社会は見る影もなくなりました。低賃金で働いている日本人の前で、ベリーチープ、とても安い国だと世界中の外国人が遊びにきて満喫している姿を見せ続けられる屈辱を毎日味わい続けさせられているのです。同号で指摘したとおり、労働時間と賃金水準は明確に相関しています。結局、時短をしても生活は豊かにならず少子化も歯止めがかかっていないのです。これも指摘しましたが、何も長時間労働せよと提言している訳ではありません。未来工業や伊那食品工業のように適切な労働時間で成長し続けられる年輪経営の実践という正解があるのですから、これを選択しない理由はないのです。
とりあえず新政権の滑り出しは上々です。さらに注目をしていきましょう。(了)
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