第1105回 壺中100年の会in豊岡・城崎 体験記Ⅱ
2025.10.20
~前号から続く
東海バネ視察の最後に渡辺良機顧問は、聴衆者に幸せ軸を実践してきた経営者として2つの確信があると言い残されてご講話を終了されました。
2つの確信
一つ目・・・給料上げたら会社はよくなる
会社の状況が悪く厳しく、給料を上げられないときでもあげてください。それは3000円でもいいのです。その行動が絶対に社員の心に刺さります。今の時代のように賃上げが当たり前の時にあげてもあまり響かないのです。上げられない時にあげるのですと強調されていました。
二つ目・・・人は、この世の中、使い物にならない者はいない
社員のことを、しっかり褒め、しっかり叱り、みてくれている、わかってくれているということに経営者として100%ポテンシャルを使うことです。教え育つのでなく、共に育つ人づくりが大切ですと極意をお示しいただきました。
城崎温泉 湯楽 伊藤清範社長の語り
2社目の訪問地は城崎温泉の湯楽。繁盛旅館らしく、今風の個人顧客の満足度を高める居心地の良さ、設備の快適さ、そしてスタッフの人柄に触れ参加者は滞在中まさしく大満足となりました。
伊藤社長は大学卒業後、家業へ就職し現場で修業を積みます。しかし、社員に厳しい先代(父親)の経営方針で、社内の人間関係が破綻し、客の悪口、仲間の悪口が横行する日々を過ごします。
天才肌の人本経営者
先代が還暦を迎え突然退任すると告げられ、34歳で社長に就任しました。まず、掲げたことは社員第一主義の旅館をつくるということでした。やりがい、働きがいをつくるためにはお客様第一の前に社員第一だと厳しかった現場体験を反面教師として発想したのです。そのことに気づいたのはどこかで勉強したのかと思わず質問したところ、「いえ独学でした」と答えが返ってきました。旅館業は概ねお客様第一は当然どこでも謳われている業種にもかかわらず、そのためにも社員第一主義と自力で気づき実践できるとは、伊藤社長は天才タイプの人本経営者だと感心させられました。
とにかく、バックヤードで心から笑顔でないと客の前の笑顔は嘘になると人間力を高める教育や評価の導入など熱心に取り組んでいきました。社員の皆様には、「役職が上の人が偉いのではない。人として上ではない。人として、人間として、を大事にしていこう」と語りかけ行動をしていきました。
しかし、人を大切にする経営を志向しても5年くらいは離職は止まなかったそうです。それでも、理想に向けて諦めず向き合い、女性が活躍できる職場風土をつくっていきました。いまでは女性の役職者は56% になり、料理長はなんと40代の女性が子育てをしながら定時出勤で務めているそうです。料理長は人思いで、どんなメニューを創るかも合議をして進める対話の上手な方だったので頼んで就任してもらったとお話ししてくださいました。
こうして社長に就任して13年間、人を大切にする経営が実り、今では人間関係が厭で離職していくスタッフはいなくなりました。また新卒の採用にも成功し若い働き手であふれていました。その秘訣は、入社1.2年目の社員が採用では前面に出ていることだと伊藤社長は明かしてくれました。若い彼ら、彼女らが湯楽の働く現実を示せるし、この子だと採用した新卒については、責任をもって後輩指導に当たるので、新卒たちは理想と現実のギャップを感じることなく職場定着をしているとのことでした。これは他社でもとても参考になる取り組みです。TTP(徹底的にパクる)されてはどうでしょうか。 (了)
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