第1098号 人本経営で再生した企業ケース① 銀座英國屋

第1098号 人本経営で再生した企業ケース① 銀座英國屋

日高屋、良品計画、千房など2025年になって、この会社が好調なのは人を大切にする経営を実践しているからであるとメディアで報じられる事例が増えてきました。中高齢者をリストラしまくっている業績軸型大企業とのコントラストが鮮明になってきています。そこで、幸せ軸の人本経営型企業の事例を紹介している企業を紹介するレポートをシリーズ化していくことにしました。

「人」を大切にしたら…入社3年未満の離職率ゼロに 銀座英國屋・小林英毅社長「企業は働きがいがすべて」2025年8月24日東京新聞

オーダースーツで知られる創業85年の「銀座英國屋」(中央区)。3代目の小林英毅社長(44)は28歳で社長に就任し、倒産寸前の会社を立て直した。「企業は働きがいがすべて」と、社員のやる気を意識した経営に取り組んでいる。社長就任時、会社の現預金は枯渇し、倒産寸前の状態だった。「パワハラ体質の役員がいなければ頑張れる」という社員の声が目立ったため、全役員の退任を決定し、体制を刷新した。企業にとって大事なのは「人」。オーダースーツ市場は縮小傾向…企業規模の拡大は目指さず、売り上げ規模を維持しながら、販売促進費の抑制や店舗の統合で利益を増やし、社員の平均年収を上げてい​る。定年後の再雇用率は100%、入社3年未満の離職率はゼロ、平均勤続年数は全国平均より10年以上長い23年。

斜陽化業界でも強い人本経営

古典的なファッション業界で経営をする老舗企業の銀座英國屋が倒産寸前から人を大切にする経営で蘇ったことが紹介されています。帝国データバンクによると主要な紳士服7社の店舗数は2024年度末時点で2300店舗前後と、コロナ禍前で最も多かった2017年度末(2997店)から約700店減・8割前後まで縮小したとみられると報告されています。

銀座英國屋は主要な紳士服7社には入っていませんが、紳士服業界も斜陽化が進んでいます。そうしたなかでも、やはり人を大切にする経営で持続可能性を高めているという記事です。

抵抗勢力と向き合う

記事を読むとボスマネの幹部を切ったという決断が決め手になったということだと感じます。経営者が幸せ軸の人本経営で進むことを決断しても、業績軸に浸りきったベテラン社員が抵抗勢力になることは、これまでも指導先で沢山経験してきました。ここを乗り越えないと人本経営の実現は難しいものがあります。徹底的に対話し、協調を求めても変わる気配がなかったら、袂を分かつ決断はありです。その期間は1年間でよいでしょう。ただし解雇とかではなく、これ以上価値観が違うなかで同じ職場で働くのはお互いが不幸になると告げて相手方に理解してもらい、相応の処遇(例えば半年程度の所得補償や競業避止を迫らない など)​をして円満に去ってもらうことです。ここを乗り越えると劇的に会社の空気感がよくなります。それもこれまで何度も指導先で体験していることです。

適正規模のダウンサイジング経営の実践

銀座英國屋は社員数は83名、ここ数年の年間売上高は14億~16億円で推移しています。この記事によると人口減少、脱スーツという社会トレンドのなかで売上げ拡大路線をやめて2023年に9店舗のうち3店舗を閉店したということです。閉店したスタッフを残る店舗に移ってもらうことで、スタッフを増員でき、手厚い接客ができるようになった結果、既存顧客を離脱させることなく106.9%の売上増と倍近い利益率の改善を実現したとのことです。小林社長は28歳で社長に就任し現在44歳ということですから、この間16年です。人本経営が形成し、社員の良好な定着率やいい仕事をして顧客に選ばれ目に見えて業績につながるまではやはり相応の時間はかかると本事例でも確認できました。腰を据え幸せ軸経営に本気になること、これが肝心であると改めて学べますね。

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