第1096号 人を大切にする経営でないと若者から選択されない時代が到来
2025.8.18
新卒の就職意識を探る調査で興味深いレポートが報告されています。
産業能率大学総合研究所は15日、「2025年度(第36回)新入社員の会社生活調査」結果を発表した。「年功序列」と「成果主義」のどちらを望むか尋ねたところ、「成果主義」43.6%に対し、「年功序列」は56.3%で「年功序列」を望む回答が「成果主義」を初めて上回った。また、「終身雇用」を望む割合は69.4%、「同じ会社に長く 勤めたい」51.8%といずれも増加傾向にあり、“安定志向”の強さがうかがえるとしている。~以上引用
このNHKの記事でも同傾向が報告されています。
潮目が変わった
産能大の調査は36回目ということですが、今回初めて学生たちが「成果主義」より「年功序列」を望む結果になったということです。しかもその割合は、2022年度38.9%→2024年度48.5%→2025年度56.3%と、ここ数年で劇的に上昇しています。
明らかにいわゆるZ世代を中心とする若い世代の就職観に異変が起きています。この理由として考えられることは二点です。第一は、人を大切にする経営の重要性に覚醒し、経営の軸を業績から幸せに改め、そして結果を出し始めている企業が増えてきており、その認識が若者たちに広がっているということです。本年第15回を数えるに至った「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の顕彰事業、年々受賞企業が増え続けていますが、主催団体の人を大切にする経営学会の坂本光司会長は、「就活生の志望企業選びに役立っているとの声を多く聞く」と坂本会長は話しています。記事
学生たちは気づいている
当通信で何度もその特色を紹介してきましたが、人を大切にする経営=人本経営は、人の幸せの形を考えたら、加齢と共に豊かな生活ができることが一番であるから、年功序列の終身雇用により生涯現役で歳と共に昇給していく経営を貫いています。ベストではないかもしれないがジョブ型のような成果主義より遥かにベターと、いかに政府がミスリードしようが人事コンサルが煽ろうが頑としてそのあり方を不動に実践しています。そして人本経営を形にした会社には優秀な学生たちがその経営方針に共感し集ってきます。実際、弊社のクライアントでもまさにそうです。
若者の就職観に異変を起こしている第二の理由は、パナソニックはじめ名うての大企業が何千、何万人という単位で希望退職というリストラを中高齢社員に行っているというニュースにふれ、それらの多くの企業がジョブ型雇用という成果主義を導入した挙句、雇用を崩壊させているという現実に対し、必ずしも大企業に行くことが正解ではないのだと気づいたからだと推測いたします。
この割合はこれから間違いなくもっと増える
業績軸経営から幸せ軸経営へ、変貌を遂げない限り、これからの企業経営は時と共に行き詰まることは火をみるより明らかです。このことについても当通信では繰り返し指摘してきました。記事
弊社の社員意識調査結果の累積では、現在2割の企業が幸せ軸の経営を実現できています。それはこの15年で20倍になったと推測しています。トヨタ、サントリー、日高屋、千房、良品計画といった好業績企業がその要因として人本経営を実践している、あるいは社員の幸せを第一に経営してきたからだという記事もよく目にするようになってきました。
業績軸から幸せ軸への転換はそれなりの時間がかかるので社会的に一気に進まないでしょうが、確実に増え続けていきます。そうでないと持続できないのですから。そして、人を大切にする経営をしないともう若者から就職先として選択されない時代にもなってきたのです。これが現実です。
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