第1088号 トヨタとパナソニック~現代版栄枯盛衰物語

第1088号 トヨタとパナソニック~現代版栄枯盛衰物語

遂にパナソニックでも大量リストラ。

パナHDが1万人の黒字リストラ

松下幸之助は草葉の陰で泣いていることでしょう。1万人の雇用を守れない代償が楠見雄規社長の報酬4割減だという。甘い。天下のパナソニックならば、せめて一番最初に自分をリストラすべきなのではないでしょうか。範を示してほしいものです。人本経営の経営者は、すべからくその自負をもって経営の舵取りをしていると思います。実際、コロナ禍で「誰一人リストラしない。するとすればまず自分からだ」と弊社の指導先の人本経営者は口々に語り、それを実践していました。社長は社員長だからこそ、発言し行動できる「あり方」です。リストラの理由について、この楠見氏は「人員に余裕がある状態では生産性を高める創意工夫が起きない」と説明しています。開いた口が塞がりません。こんな言葉を聞かされた社員はどんな気持ちで明日、職場に向かうのでしょうか。筆者なら、俺たちは生産性を上げるために雇用されているのかと絶望感しか持ちえません。トップにこんなこと言われたら、とてもでないがやる気になどなれません。

パナソニックとトヨタの明暗

少し前の記事になりますが、産経新聞で今日を予見するかのようなパナソニック再生。停滞30年「トヨタとこれだけ差がついた」という記事が報じられていました。

トヨタと並び称された時代もあったのに、こんなにも差がついてしまったという検証記事で大変興味深い内容です。

~ バブル経済崩壊以降「失われた30年」といわれ、低迷が続いた日本経済。歩調を合わせるようにパナソニックの成長も停滞している。その売上高は令和3年度で7兆3千億円。初めて7兆円を超えた平成3年度からほぼ同水準だ。一方でトヨタ自動車は30年で約3倍の31兆円超に伸ばした。 ~ 記事より引用

と紹介し、同社の30年にわたる成長グラフが対比されその差は一目瞭然です。

経営者の差以外の何物でもない結果

2014年に、筆者は、直接、伊那食品工業の塚越寛さんから「トヨタはたいした会社」と聞かされ、その動向を10年以上見続けてきました。豊田章男さんは、塚越寛さんの幸せ軸の経営哲学を「私の教科書」とし「塚越さん、私もしっかり後を追っていきます」と公言してはばかりませんが、まさしく有言実行の歴史でした。還暦を迎え、後任に社長の座を譲りましたが、後継者の佐藤恒治社長は、揺れるトランプ関税問題について記者に聞かれ、「我々が今一番大事だと思っているのは、とにかく軸をぶらさずに、じたばたせずに、しっかりと地に足をつけてやれることをやっていく」と回答しています。これはさすがです。後継経営者として、「軸をぶらずに」と核心をついています。すなわち豊田章男前社長が種を蒔いた「幸せ軸」の経営をいささかもぶらさないと発言しているのです。これならばトヨタは引き続き安泰でしょう。

じたばたしているリストラ大企業の経営者よ、トヨタというこれ以上ない見本が日本にあるのに何をやっているのか。黒字企業が体力あるうちにと希望退職して人件費削減に動いているのも、この先の果てしない右肩下がりを意識しているからに他ならないのでしょう。しかし、黒字ならばこそ、体力のあるうちに本気で人を大切にする幸せ軸の経営に舵を切ることこそが唯一の正解です。幸せ軸の経営は、右肩下がりであったとしても持続していける幸せな成功体験なのだから。

トップを変え、軸を変えない限りパナソニックの再生はない

しかし、それにしても2025年に突入し、日本国の業績軸の企業社会が、目に見えて萎みだしていることを実感します。何度も繰り返しますが、この流れを変えるには、業績軸から幸せ軸への経営革新しかありません。これは上場企業であろうが、大企業であろうが、同じです。それを実現しようとしないトップはとっとと引責辞任し、幸せ軸経営に挑戦できる素養と資質のある後進に道を譲ることです。それが経営者として、最後に出来る最良の経営決断なのです。

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